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T、B細胞,PFCについて

学生実習でT細胞とB細胞を見分ける、というものをやっている。T細胞もB細胞も共にリンパ球であって、見た目でわかるものではない。最近ではT細胞とB細胞のそれぞれに特徴的なマーカー(CDといわれるもの)があって、TとかBとか以上に細かく分けることが出来るのだが、これをやるには実習では苦しい。フローサイトメトリーで測定するのであるが、どうしても班で一つになってしまって、みんながやっているという実感が湧かないのだ。そこで、もっと一人ずつ出来るものが無いか、ということで、昔ながらのロゼット法というのを取り上げている。また、PFCというのは”プラーク フォーミング セル”の略で、抗体産生細胞を見る古典的な方法である。この両方で、基本的なことを学んで欲しいのである。

区切り

ではまず、TとB細胞について。
T細胞はもともと羊の赤血球とロゼットを組むという性質がある。この性質を利用すると、比較的簡単にT細胞を見分けることが出来る。
ヒトのリンパ球は比重遠心法という方法で分離が出来る。これに使う液は特定の比重の液体で細胞を浮かせることが出来るすぐれ物の分離液があり、これにのっけるとリンパ球と単球〔単核球)が浮いてくるのだ。この方法で分離した単核球には単球とリンパ球が混ざっているわけだが、これは見た目ではわからない。いや、単球は核が違うのでわかるが、リンパ球の中のTとかBは見分けがつかないのだ。それに、リンパにはTやBのほかにNKとかさまざまな細胞もいるのだ。これを見分けてみよう。
T細胞は羊の赤血球と簡単に反応する。では、B細胞はどうか。B細胞に特徴的なものは表面にイムノグロブリンがあるということである。そこでこれを利用しようと考えた。同じ羊の赤血球では形に違いがなくてわかりにくいので 他に何か無いかと考えると・・
ニワトリの赤血球は楕円形をしていて、しかも核があるということに気付いた〔昔の人がね〕。これに抗ニワトリ赤血球抗体をくっつけてみた。これがB細胞とくっつくことになる。これがEAといわれるものである。核があるものがくっつくか、核のないものがくっつくか、それによって見分けることが出来るのだ。
こうして両方を反応させるとTとBの割合は簡単に出せる。
一般にT細胞は70から80%位あるものである。B細胞は15%くらい、残りがnullといわれるもので、NK細胞などが入っているのだ。T細胞は60%を切ると生きて行くには難しくなってくる。かなり具合が悪い状態である。
実際に実験をしていてnullが多くなってしまう原因に、実験手技で細胞の塊を崩す際に、壁を伝わらせてゆっくりと崩さないといけないものを試験管を振ってしまって激しく混ぜてしまい、T細胞やB細胞であるはずのロゼット形成細胞がロゼットでなくなってしまう、つまり、赤血球が外れてしまう、ということがある。検査機構に入ったばかりの初心者の場合、多くはこれで苦労する。機械的にくっつけているのではなく、自然にくっついている赤血球であるから、当然外れやすいのである。実際にそんなにnullが多いということはほとんど無い。ほとんどの場合が手技上の問題である。細胞は優しく扱わないといけないのだ。

そしてPFCについて。これは抗体産生細胞を見ようというもの。
これを見るに当たって、マウスのお腹に羊の赤血球を免役しておく。こうするとマウスは異物である羊の赤血球に対する抗体を一生懸命に作る。 このマウスの脾臓を取って脾臓中の抗体産生細胞を見るのだ。脾臓にはB細胞が多いので見やすいはず。リンパ球が抗体産生細胞であった場合、試験管内で羊赤血球と補体と反応させれば周りの赤血球を溶血させるはずである。これらを混ぜて37℃で〔身体と同じ条件〕反応させると、うっすらと向こうが好けて見えるプラークがいっぱい見えるはずである。プラークは、真ん中にリンパ球〔抗体産生細胞〕が一つか二つあって、この周りにあるはずの赤血球が溶けてしまって空洞になっている状態である。このとき、向こうが透けているけれど中に何もないものが見えることがある。これは37℃に温めているとき出来る空気の空砲である。液体が温まると、ある程度はどうしても空砲が出来る。しかも、混ぜるときに勢い良く混ぜると、これだけで空気が入る。この状態で反応させると空砲がいっぱいになってしまうのだ。空砲は、向こうが透けると同時にその丸い形がはっきりと見えるはずである。しかし、プラークは向こうがうっすらと透けていて、形がはっきりとした○ではないのだ。この違いが見分けられるには時間を要するかもしれない。
実験というものは細心の注意を払わないといけない、実際に患者さんと接するときにも細心の注意を払わないといけない、こういうことを実習でいっぱい学んでいって欲しい。実習は失敗から学ぶことが多いのである。

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