仕事の部屋 私の仕事:免疫
やよいわ〜るどTOPへ
私の仕事・免疫
私の仕事:教育
いろんな病気Q&A
えみちゃんの思い出
免疫・教育BBS
音楽の部屋
エレクトーン
ピアノ・ビッグバンド
ドラム・ギター・バンド
SALT大好き!
STARDUST★TRAIN
音楽BBS
インコの部屋
インコ写真
インコ日記
インコBBS
メール
骨髄移植について

いまや骨髄移植は珍しいものではなくなった。子供の白血病、再生不良性貧血などの多くの血液疾患で骨髄移植は行われている。実際の臨床の場でも出会うことが多くなってきた。しかし、まだまだドナーが少ないという現状はある。
骨髄移植がどんなものか、それを知っていればもっとドナーは増えるかもしれない、私は常々そう思っている。腎移植などの臓器移植の場合は腎臓が一つ無くなってしまう、しかし、骨髄移植は ちょっと骨のところに傷は付くけど、でも臓器よりは移植しやすい。
なぜ移植しないといけないのか、それはヒトの白血球にも”血液型”の様なものがあるからである。MHCといわれるもので、これはABOよりももっと型が合いにくい。数が非常に多いのだ、これを合わせるには苦労することが多い、なので、多くの人がドナー登録する必要があるのである。

区切り

移植の病気に対する様々なことは”Q&A”で述べるとして、ここでは学ぶ、ということを述べていきたい。
移植を勉強するに当たって、我々はマウスを使って学んでいく。マウスには”近交系”というマウスがいる。これは双子と同じく、遺伝型が同じマウスである。遺伝型が同じなので当然、様々な実験に使いやすいのである。この遺伝型が同じもののうち、色の白い”BALB/C"というマウスと色の黒い”C57BL/6”というマウスを例にあげてみる。
移植はマウスのしっぽの静脈から行うが、注射しやすい事を考えると、白いマウスのしっぽの方が静脈が見やすい。そこで、黒いマウスの細胞を白に移植してみたい。
この場合、黒と白は遺伝系が違うので違うのを入れても受け入れてくれない。少しでも受け入れてくれるように、まずは受け入れるほう〔レシピエント〕のマウスに放射線を当てておく。ヒトの場合でも放射線を思いっきり当てて無菌室に入って感染を防ぎながら移植の準備をするのだ。
この状態のレシピエントマウスに、 ドナーマウスの骨髄を移植する。ヒトの移植の場合に問題になるのが、成熟した細胞によるGVHDというものである。これについてはQ&Aの方で書いたと思うが、一般に拒絶というのはドナーの細胞をレシピエントが受け入れない状態を言う。しかし、ドナーの成熟細胞がレシピエントの中に入って自分自身だと思い込んで周りを見ると、周りに自分と違う細胞がいるではないか!!と慌てて組織を攻撃してしまうことがあり、これをGVHDというのである。これが厄介で、これが起こるとレシピエントの組織は破壊され、死に至る。これを勉強するため、成熟細胞である脾臓の細胞も移植してみる。これでいろいろと様子を見ていく。体重とか毛並みとか動きとか、様々な変化を見ていく。そしてある程度たって移植が成立しているものがいるだろう、と思われる時期になったらマウスの脾臓から細胞を取りだしてそのMHCを調べる。
調べる方法に、フローサイトメトリーというものを使う。これは細胞を蛍光色素で標識して、それが細胞に くっついているものをカウントする装置である。くっついている細胞はあるか??あるとすればどのくらいの割合でくっついているかがわかるものである。
マウスの場合、黒はMHCがIaのbで白はdである。なのでIabで染色してみると、白いマウスの中に黒いマウスの細胞がどれくらいいるかがわかるのだ。
実際に染めてみるに当たって、きちんと抗体で染まっているのかを確かめるために、絶対に染まらない抗体でも染色してみる。これは染まるはずはなく、これをコントロールとする。それに対して、目的のものがどれくらい染まっているかを考える。フローサイトメトリーの場合、染まるとグラフが右にずれていく。なのでどれくらい右にずれているかを検討する。大きく右にずれている場合、そして右にずれた山が一つの場合は、白いマウスの身体の中に黒いマウスの細胞が生着して順調に増えていることになる。しかし、全くずれていない場合、これは移植したときに注射がうまくいっていないか、はたまた、移植したにも関わらず、元々の細胞が強くて移植したほうが死んだか、ということになる。そして二つの山、要するにIaのbとdが両方見られた場合、これは体内で白いマウスが元々持っていたdの細胞が徐々にbの細胞に変わっている途中であることになる。二山の中の左側は染まっていない、要するにb以外の細胞(dの細胞〕であって右はbの細胞・黒いマウスの細胞・ということになる。
移植というのはこうやって成立するのである。成熟した細胞を移植すると死んでしまうマウスが多いのは、移植した細胞がされたほうのマウスの組織を破壊してしまったからである。GVHDとは非常に怖いものだと学んで戴ければそれで良いと思う。
マウスに感謝し、動物慰霊祭には手を合わせる気持ちも持ちながら仕事ができると良い。動物に学ぶことが多い、そして動物に感謝することも多い、そんな研究ができることに感謝!!である。

私の仕事・免疫 INDEXに戻る ←BACK NEXT→