バイオニック コマンドー
機種 PlayStation 3/Xbox 360/PC ステージ数
発売元 カプコン ライフ制 あり
開発元 GRIN 残機制 なし
発売日 2009年6月25日 コンティニュー 無限
定価 7,340円(税込) パスワード なし
プレイ人数 1人(マルチプレイヤー2〜8人) 難易度選択 あり
バイオニックコマンドーの歴史
バイオニックコマンドー マニアックス
Chain of Command
ストーリー考察(ネタバレ)
俺とスーパージョー
Tips
ヒットラーの復活 トップシークレット



 『バイオニック コマンドー』は奇跡的な作品だ。『ヒットラーの復活』が持っていた、ワイヤーアクションの緻密かつ直感的な操作感。それを3Dで再現するという、不可能とも思えるコンセプトを、見事に実現している。まず、『ヒットラーの復活』のワイヤーアクションは、次の3つの要素で成り立っていた。
●ワイヤーをフックする場所(=ワイヤーの届く距離)の見極め
●ワイヤーを発射するタイミング
●ワイヤーをリリースするタイミング
 操作はシンプルだが、このうちどれかひとつでもミスすると、完璧なスウィングはできない。華麗に飛び回るか、落下死するかは、自分のテクニック次第。その「紙一重さ」に、麻薬的な快感があった。
 『バイオニック コマンドー』のワイヤーアクションは、この3つの要素をすべて継承している。遠近感がつかめずに落ちまくることもなければ、行き当たりばったりでスウィングするだけの散漫なゲームにもなっていない。その上で、広大な3D空間を飛び回る臨場感、そして高所から落下するときの、アソコがキューッとなるような感覚を加えてみせたのだ。

 ただし3Dになったことで、やや分かりにくいルールも存在する。そのひとつが「放射能」だ。ステージの各所には「放射能エリア」があり、プレイヤーはそこに入ると死んでしまう。放射能エリアは青い霧で示されているのだが、見た目にやや分かりにくい。そのため、ワイヤーでビュンビュン飛び回っていると、いきなり放射能エリアに飛び込んで死んでしまうこともある。
 ちょっと納得のいかない死に方だが、これはゲームシステム上、仕方ないとも感じる。本作はワイヤーを使えば、本当にどこにでも行けてしまう。そのため、放射能という表現を使って、「行き止まり」を作っているのだ。ファミコン(2D)ゲームでいう「画面の端」や、レースゲームの「コースアウト」に当たると考えれば分かりやすい。
 本作の意図は、広大な箱庭を勝手気ままに飛び回るゲームではない。行動範囲が広すぎると、プレイヤーはどこに行けばいいのか迷ってしまう。そうではなく、スタートからゴールまでに用意されたひとつひとつの障害を、どう越えていくかに集中させる。まさに『ヒットラーの復活』の精神を受け継ぐ、昔ながらのステージクリア型アクションなのである。『マリオ』が横方向の一本道(リニア)だからといって、『ゼルダ』や『メトロイド』より劣るといえるだろうか?

 また、本作はよくあるFPSやTPSのように、派手な銃撃戦を楽しむゲームではない。むしろ正反対で、本作の売りであるワイヤーを使わせるために、銃器の威力や弾数は意図的に制限されている。正確なエイミングも求められない。そこを理解して、積極的にワイヤーを使っていかないと、「出来の悪いシューター」で終わってしまう。

 本作のワイヤーアクションは文句なく素晴らしいが、ただゲーム全体で見ると、残念な部分もちらほらある。ひとつはボス戦だ。そもそもボスの数が少ないことに加え、スウィングを楽しめるのが最初のボス戦しかない。ゲーム終盤の見せ場も、シチュエーションは魅力的なのに、実際のゲームは決められた手順を順番にこなすだけになってしまっている(ただ、そもそもオリジナルの『ヒットラーの復活』、さらには『トップシークレット』も、ボス戦には重点を置いていなかったが)。
 そして、ストーリーも大きな議論の対象だ。それなりに力は入っているのだが、物語の内容は賛否両論というか、正直いって失望する人の方が多いだろう。これについては、ネタバレもあるので別のページで詳しく述べたい。

 音楽は、この作品の最も素晴らしい部分のひとつだ。ほとんどの曲が『ヒットラーの復活』の名曲をオーケストラ風アレンジしたもので、ゲームに荘厳な迫力を加えると同時に、長年のファンにとっては懐かしさを与えてくれる。意外な場面で懐かしいフレーズが流れてきて、思わず胸が熱くなるだろう。

 『バイオニック コマンドー』は残念ながら、今日の市場において「売れるゲーム」ではないだろう。明らかな欠点や、「こうすればもっと素晴らしくなったのに」と惜しまれる部分もある。だが本作のスウィングアクションは、ほかのゲームでは体験できない、代わりの利かない魅力だ。数あるシューターとも違うし、『スパイダーマン』のワイヤーアクションとも違う。それでありながら、そのプレイ感覚は、紛れもなく『ヒットラーの復活』の続編なのだ。
 これからも新しい、素晴らしいアクションゲームはどんどん出てくるだろうが、それでも「スウィングアクション」を楽しみたくなったときは、また『バイオニック コマンドー』のディスクを取り出すだろう。そんな作品を作り上げた制作陣の「チャレンジ精神」に敬意を表したい。そして、難しいかもしれないが、続編の発売にも期待したい。このスウィングアクションは、たった一作で終わらせてしまうには、あまりに惜しい。



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