俺とスーパージョー



第1章 ヒットラーの復活

 『ヒットラーの復活』は、捕らわれた英雄スーパージョーを救出するため、主人公(プレイヤー)のラッド・スペンサーが帝国に飛ぶところから始まる。

 このゲームの心憎いところは、マニュアルにも、ゲーム中にも、これが『戦場の狼』に登場したスーパージョーだとは書かれていない。だが当時のゲーマーであれば、その名前を聞いただけで、ジョーの過去の活躍を思い描かずにはいられないはずだ。

 「俺たちゃ戦場の狼だ〜♪」の音楽に乗って、たった一人で無数の敵をなぎ倒していくジョー。
 敵陣を突破し、岩に足をかけ余裕で一服するジョー。
 強い強いスーパージョー。

 あまつさえファミコン版の取説マンガでは、自分で「ボクは強いんダーイ!」と言っているし、敵司令官にも「うっ、強い 強すぎる」と言われている。

 そんな強すぎるスーパージョーが捕らわれてしまった。それだけで、いやが上にも敵の強大さが感じ取れる。

 ゲーム終盤、ラッドはやっとのことでジョーを救出する。
 「MR.ジョー 助けに来ました」
 「ああ すまない大尉 大変なことが起ころうとしている」
 帝国の恐るべき計画について語るジョー。そして捕らわれの身であったにもかかわらず、自らもすぐ戦線に復帰する。

 ジョーはラッドに、自分の愛用マシンガンを託す。これはきっと、『戦場の狼』でジョーが使っていたマシンガンだ! すごい。愛銃を託すなんて、ジョーはラッドを心から信頼しているのだ。

 そして、二人はついに帝国の基地に潜入する。二手に分かれ、ラッドは総統ワイズマンを、ジョーは基地の動力源を目指す。
 戦闘中、敵の通信を盗聴するラッド。
 「ジョーだ! スーパージョーが攻めてきた……」
 「第5中隊 応答せよ!」(ザザザザー)
 プレイヤーにジョーの姿は見えない。だが『戦場の狼』のように、たった一人で突き進むジョーの勇姿、そして大混乱に陥る敵軍の様子が目に浮かぶ。やっぱりスーパージョーは強いんだ!

 そして最終決戦を前に、ジョーから最後の通信。
 「君は総統を倒してすぐに脱出しろ 私もすぐ行く
 しかし 私にもしものことがあったらその時は……行け」
 己の命よりも任務、そして仲間の命を優先するジョー。

 ボスを倒したラッド。基地の崩壊が始まる。脱出地点にたどり着くが、ジョーの姿がない。
 「その時は……行け」
 ラッドは基地内に引き返す。

 「大尉はどうした! もう待てない……脱出するぞ!」
 「待ってください もう少しだけ あっ あれは!」

 天をも焦がす大爆発。その中から脱出する一機のヘリ。そしてワイヤーでヘリにつかまるラッドとジョーの姿……。

 「戦いは終わり 新しい英雄が誕生した
 仲間たちの祝福を受けながら
 私は時代の移り変わりを 感じていた……」

 このゲーム自体が、年老いたジョーの回想であった、というところで物語は終わる。彼が今、どのような境遇にいるのかは語られない。だがきっと、平和を取り戻した世界で一線を退き、自分の後を継ぐラッドや次世代の戦士たちを見守っているのだろう。

 『ヒットラーの復活』は、「ワイヤーアクションの傑作」であると同時に、かつての英雄スーパージョーと、新しい英雄ラッド・スペンサー、二人の男の「絆」を描いた物語であった。

第2章 マスターD復活計画 に続く



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