バイオニックコマンドーの歴史



戦場の狼
1985/05(AC)

 海外名『Commando』。1985年5月に発売された『戦場の狼』は、同年9月に発売された『魔界村』とともに、カプコンの伝説的クリエイター、藤原得郎の代表作といえる。また、主人公として最強の兵士「スーパージョー」が初めて登場した作品でもある。
 タイトー『フロントライン』の流れをくむ、縦スクロールのアクションシューティング。シンプルな内容だが、当時としてはリアルなグラフィックと爽快なゲーム性で、大ヒット作品となった。SNKの『怒』、データイーストの『ヘビーバレル』などをはじめ、同タイプのゲームの基本を作ったといえる。



トップシークレット
1987/03(AC)

 海外名『Bionic Commando』。『戦場の狼』同様、藤原得郎が開発を担当した作品である。見た目はオーソドックスな横スクロールアクションだが、何と主人公はジャンプが一切できない。その代わりに、ワイヤーを地形に引っかけて進んでいくのである。この発想は、藤原がコナミ時代に開発した『ロックンロープ』の発展形だ。
 「ワイヤーアクション」という画期的なシステムを初めて紹介した作品であり、『海腹川背』など、後の他社作品にも大きな影響を与えている。だが、その独特な操作も相まって、難度は非常に高かった。そのため大ヒットしたとは言い難いが、その練り込まれたゲーム性を理解する一部のゲーマーからは高く評価された。海外では、アミガ、アタリST、コモドール64、アムストラッドCPC、ZXスペクトラムと、さまざまなコンピュータに移植されている。
 海外版は、1984年の同名映画『Top Secret!(トップ・シークレット)』に配慮してか、タイトルが変更されている。70年代の人気ドラマ『The Six Million Dollar Man(600万ドルの男)』や『Bionic Woman(地上最強の美女バイオニック・ジェミー)』に登場する「Bionic」と、『戦場の狼』の海外名『Commando』をミックスしたようなタイトルだ。さらに日本版では、本作の主人公は「特殊部隊の隊員」としか説明されていないが、海外版では「スーパージョー」と明記されており、『戦場の狼』の続編として見ることもできる。



ヒットラーの復活 トップシークレット
1988/07/20(FC)

 海外名『Bionic Commando』。前年に発売されたアーケード版の移植ではあるが、内容はまったくのオリジナルである。主人公のラッド・スペンサーがワイヤーアクションを駆使して、敵に捕らわれた英雄スーパージョーを救出するという展開になっている。前述した「『戦場の狼』の続編」という設定を裏づけるようで面白い。
 『ヒットラーの復活』は、『トップシークレット』のワイヤーアクションを大幅に改良している。『トップシークレット』では、空中でワイヤーを切ると、着地するまで銃もワイヤーも発射できなかった。しかし『ヒットラーの復活』では、このどちらも可能になり、空中でワイヤーを連続で引っかけて、華麗に飛び回ることができるようになったのである。そのほかにも、最初こそ『トップシークレット』の一発死を踏襲しているが、アイテムを集めることでライフを増やすことができたり、ゲームを遊びやすくするアレンジが随所に加えられていた。また、一部に『戦場の狼』をほうふつとさせるトップビューのステージも挿入されている。
 しかし最も大きな変更点は、ストーリー性の強化だ。『ヒットラーの復活』の最終ステージからエンディングにかけての展開は、あらゆるアクションゲームの中でも最高といえるだろう。さらに「ヒットラーが現代に復活する」という展開も衝撃的で、あまりにも危険な設定だったため、海外版では「マスターD」という名前に変更されている。しかし、顔のグラフィックは日本版のヒットラーそのままであったため、その正体は誰の目にも明らかだった。
 オリジナルのアーケード版『トップシークレット』は、あまりよく知られた作品ではなかった。しかし『ヒットラーの復活』は、完成されたワイヤーアクションと、感動的なストーリーによって、ファミコン史上最もカルトな名作のひとつとなったのである。



戦場の狼II
1990/04(AC)

 海外名『MERCS』。CPシステム第9弾として発売され、進歩したグラフィックと、専用筐体による3人同時プレイが売りであった。全体的な完成度は高かったものの、1990年のゲームとしては目新しさに欠け、また極めて容易にカンストできてしまうため稼ぎも盛り上がらず、前作ほどのヒットにはならなかった。
 『戦場の狼』の続編ではあるが、ストーリー上のつながりは感じられない。主人公3人は、「ウルフ・フォース」に所属するMERCS(mercenaries、傭兵部隊の略)となっている。ただし、1Pキャラクターの名前が「ジョセフ・ギブソン」となっており、前作の主人公「スーパージョー」の名前を連想させる。その後、3D版『バイオニック コマンドー』において、正式にスーパージョーの本名がジョセフ・ギブソンであり、元MERCS所属であると設定された。
 2008年6月、PlayStation 3およびXbox 360で、シリーズ第3弾『Wolf of the Battlefield: Commando 3』が発売されたが、海外のみの配信タイトルとなっている。



バイオニックコマンドー
1992/07/24(GB)

 海外名『Bionic Commando』。この作品で、日本版と海外版のタイトルが『バイオニックコマンドー』に統一された。基本的には『ヒットラーの復活』の移植だが、設定やストーリーは一新され、ナチス・ドイツを想起させる要素は一切なくなった。また、世界観は未来的になり、キャラクターデザインもアニメ調に変更されている。
 ワイヤーの発射レスポンスは『ヒットラーの復活』よりさらに早くなり、かつプレイヤーの落下速度は遅くなった。これにより、ワイヤーを切って飛び降りた直後、すぐ元の足場にワイヤーを引っかけるなど、より高度な空中ワイヤーアクションが可能となった。それに伴い、ステージのマップも大部分が再設計されている。最終ステージは『ヒットラーの復活』と大きく異なり、巨大な空中要塞「アルバトロス」全体が舞台となる。この新しい展開は、後の『Bionic Commando: Elite Forces』および『バイオニック コマンドー マスターD復活計画』にも引き継がれている。
 『ロックマンワールド』シリーズ(『2』以外)を開発した水口エンジニアリングが参加した本作は、全体的に見て、携帯ゲーム機用であることを感じさせない秀作だ。特にワイヤーアクションに関しては、『ヒットラーの復活』以上にアクロバティックなプレイが楽しめる。ただ白黒画面ということも相まって、『ヒットラーの復活』ほど心に残るステージがない点と、ストーリーが若干幼稚な内容になってしまったのは残念なところだ。



Bionic Commando: Elite Forces
1999/12/31(GBC)

 海外でのみ発売された作品で、開発はNST(Nintendo Software Technology Corporation、任天堂の100%開発子会社でアメリカを拠点としている)。またもやストーリーは一新されたが、「敵に捕らわれたコマンダー・ジョーを救出する」という目的は共通している。また、主人公は男性と女性の2人から選ぶことができるようになった。
 未来的な世界観、ワイヤーアクションの操作性などは、ゲームボーイ版『バイオニックコマンドー』を手本にしている。キャラクターの動きは非常に滑らかで、ステージやボスの種類もシリーズ中最も多い。ただストーリー性は弱く、特に最終ステージは『ヒットラーの復活』のような盛り上がりがまったくないまま、あっさり終わってしまうのが拍子抜けだ。



バイオニック コマンドー マスターD復活計画
2008/08/13(PS3/360)

 海外名『Bionic Commando Rearmed』。『ヒットラーの復活』の3Dリメイクで、3D版『バイオニック コマンドー』と同時に発表された。開発は2作とも、スウェーデンの制作スタジオGRIN。
 ステージ構成などは『ヒットラーの復活』にかなり忠実だが、アレンジされた部分もある。例えば、『ヒットラーの復活』はボス戦がないに等しかったが、『マスターD復活計画』では新たにボスが追加されている。しかもボスを倒すには、銃だけでなくワイヤーも駆使しなければならない。ワイヤーには「ドラム缶や敵をつかんで投げつける」というアクションが新たに追加され、3D版『バイオニック コマンドー』にも引き継がれている。また、『ヒットラーの復活』は1つの武器(ロケット砲)が強すぎたため、本作では各武器の性能を再調整し、さらにいつでも切り替え可能になっている。
 ストーリーは海外版『ヒットラーの復活』をもとにしているが、新しい設定も付け加えられた。『ヒットラーの復活』で脇役だった「ハル」は、女性パイロットの「ヘイリー」として、重要な役柄を演じている。また、ボスの一人だったロボット兵士は「グローダー」という名前を与えられ、スペンサーの最大のライバルとなった。さらに、エミリー・スペンサーやアームストロング将軍、ブラーク・ヘリコプターといった新しいキャラクターは、続く3D版『バイオニック コマンドー』にも引き続き登場する。
 2011年2月、PlayStation 3およびXbox 360で、続編の『Bionic Commando Rearmed 2』が発売されたが、海外のみの配信タイトルとなっている。



バイオニック コマンドー
2009/06/25(PS3/360/PC)

 海外名『Bionic Commando』。『ヒットラーの復活』から20年を経て発表された、直接の続編である。三人称視点のアクションゲーム(TPS)で、広大な3D空間をワイヤーで縦横無尽に飛び回ることができる。
 『マスターD復活計画』とともにこれまでの設定が整理され、ラッドの本名はネイサン・スペンサー、スーパージョーの本名はジョセフ・ギブソンとなった。世界観は従来の作品よりも重厚で、前作で英雄となったスペンサーが本作の冒頭では、政府に裏切られ投獄されている。また、スペンサーのワイヤーは「バイオニック・アーム」と呼ばれる人工腕に設定変更され、この「バイオニック技術」がストーリーの鍵となっている。
 フル3D化にともない、シリーズで初めてジャンプが可能になった。しかしワイヤーアクションの緊張感や爽快感は、見事に受け継がれている。皮肉なことに、コアゲーマーには評価されるものの、一般受けはしにくいという点も、『トップシークレット』や『ヒットラーの復活』とまったく同じだったが、シリーズの新たな可能性を開いた傑作といえる。



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