その3 1998.5 ゴールデンウィーク期間中の旅

【なんと1日目は石垣泊まりなのであった】


混雑期に遠出するなんて・・・・
この時期は家でのんびりが1番と思っていましたが、今回は大混雑期であるゴールデンウィーク期間中に西表へ行ってきました。

那覇行きの飛行機は12:30に羽田を飛び立つ。ところが空港に着いたのも12:30。電車やバスじゃないのに・・・・・。
搭乗カウンターに着くと係員の人が「何時の便ですか?」と笑顔。
「12:30の便です」
「えっ・・・???」

絶句のあと数秒の間があったのは言うまでもありません。
もちろん飛行機はゴオーと離陸したあと。ゴールデンウィーク中に空席あるのか!と不安になりつつも、すぐに空席のある便を検索してくれて、次便のチケットを購入。苦労して取った割引航空券がここで一瞬にして泡と消えた。16:00発の便を正規料金というかハイシーズンの割高料金で購入。がっくし。しかし、まあ「とりあえずビールでも飲もっか」とレストランへ直行です。

さすがゴールデンウィーク。3月の半ばに西表行きを決めたけど、大型連休の力を発揮したのか飛行機は予約がいっぱいでした。どう頑張っても29日中に西表島まで移動するのは無理な空き状況。なんとか空いてる便は石垣空港着が17:20分。走れば間に合う? のか疑問だが離島桟橋から船が出るのが17:30。「うーん どうしよう」悩んだあげくに初日はかねてから気になっていた「根原荘」に泊まることにした。

根原荘とはいったい・・・・?

石垣島の離島桟橋から船に乗る。「さあ いくぞ西表島へ」という気分でいっぱいになり「そうそう、今は何時かなあ」と安永観光のチケット売り場の上にかかる時計を見ると、その横に「民宿 根原荘」の文字が見える。いつの日か西表まで渡ることができなくなった時に泊まってみようと思っていたところ。

こんなに早くお世話になる日がくるなんて・・・。
というわけで初日の29日は根原荘に1泊なのである。

素泊まり1泊2,500也。飯はどこかで食べようと思っていたので余裕も余裕。何時に着いてもいいんだもんね。

という気分でいたら、石垣に着いたのは21:00近くになっていた。羽田で予定の飛行機に乗れず、大幅に遅れて石垣空港に到着。

本日の最終便で着いたのであった。空港を出たとたんに出入口の鍵が閉まり電気が消えた。タクシーで夜の石垣を一路離島桟橋へ。

根原荘に着き、とりあえずは近所の居酒屋でビール&沖縄のおいしい料理に舌づつみ。 ゴーヤチャンプルー・じーまみ豆腐・スクガラス・もずくなどなど、たくさん食べても1人3,000円程。たっぷり食べ満足感いっぱいで根原荘に戻る。

根原荘は襖で仕切られた和室が6部屋。僕らは1番奥の四畳半ほどの部屋に泊まった。室内にはコイン式のエアコンがあったが、この時期ならば網戸付きの窓を全開にすれば心地よい風のおかげで暑さは感じない。風呂はシャワーのみ使用でき、ここで汗を流してさっぱりいい気分。素泊まりであったが、宿のおばさんに泡盛をごちそうになる。もちろん無料。設備が整った今風の綺麗な宿ではなかったが、とても雰囲気のいいところだった。

シャワーを浴びてぼんやりしていると、宿のおばさんが「消灯してください」と一声。 時間はまだ23:00であった。 宿中の電気が消えると、薄明かりのなかで八重山の波音が静かに聞こえてくる夜であった。 いよいよ明日は西表なのだ。

【さあいよいよ西表上陸の日なのだ】


根原荘の布団のなかでぼんやりと目覚める。
しとしとと雨の降る音と、遠くではゴロゴロとかすかに雷の音が聞こえる。
起きて支度をして外に出ると、もう船が待っている。
根原荘は2階にあり、その下の1階は安栄観光の船券売場。 玄関先にタクシーが待っている?もしくは家のすぐ前がバス停?といった気分。根原荘に泊まって本当に良かったなぁと思った瞬間。だって朝は1分でも多く寝ていたいという寝ぼすけだから。

8:30発の船浦行きに乗り込むと安栄号はいつものように豪快に・・・・・進まなかった・・。 毎年恒例の、船底も割れんばかりにザバンザバン進む荒々しさはなかった。それだけ海が穏やかなのである。やや拍子抜けしつつ、そしていつものようにずぶ濡れになることもなく無事に西表へ。

9:10西表上陸。
朝の船浦港は、朝1番で待ちきれずに来島した人と、帰り支度をして島を離れなければならない人とが入り交じり大混雑。

宿へ着くと、さっそくカヌーへ出発。事前に初日はカヌーしますと宿へ連絡を入れていたので、着いたとたんに休む間もなく出発。

あわただしく準備をし、目指すは昨年も訪れたピナイサーラの滝なのであった。しかし・・・・・ここ連日の雨により水かさが増しているらしい。 ロビンソン小屋のスタッフの話しでは「水かさが増した状態の滝上は危険なのでやめたほうがいい」ということなので、素直に滝壷コースのみとした。滝に向かうまでの道は以前と変わりなく、水量は感じなかった・・・・が、しかし滝周辺はもの凄かった。

ガイドブックなどに紹介されているピナイサーラの写真の水量がコップから水をこぼした程度のチョロチョロ感あふれる滝だとすれば、この時の滝は消防車が放水したかのようなゴゴゴゴゴオオオオオというくらいの迫力があった。

滝壷周辺は小さな池になっていて水遊びには最適!なのだが、この時は近寄って池に入ろうものなら二度と出て来れないのではないかというくらい怒号の勢い。 あたり一面は水飛沫で、まともに目があけていられないほど。まるで調節の壊れたミストサウナのよう。滝の下には大きな石がいくつもあるが、水飛沫で何も見えない。
「うおーすごい!大迫力だぞお」
大喜びで2~3分眺めていただけで全身ずぶ濡れ。

滝でずぶ濡れになったがカッパ持参であったので寒い思いはしなかった。あまりにも大迫力の光景に圧倒されたが、気を取り直して一路カヌーへ戻ることに。

かなり湿度が高いようでジャングルな雰囲気がいっぱい。ジャングルなんだからもっともなのだが・・・。アカショウビンらしき鳴き声が聞こえてくるが、木々が生い茂っているのでどこで鳴いてるやらさっぱり。次に来るときは双眼鏡を持ってこようと誓ったのであった。


【突然のスコールVS洗濯物取り込み合戦】


大迫力のピナイサーラツアーも無事に終わり宿に到着。時計を見るとまだ夕食には時間がある。滝で濡れたTシャツもあることだし、とりあえず洗濯機へ直行。洗濯物を干してもまだ時間があるので「じゃあやっぱり」ということでいつもの港へ。
ここは大のお気に入りの場所で、毎年恒例というか西表に来たときには毎日のようにビールを飲みにくるところ。今回の旅行は例年のように1人旅ではなくて3人旅だけど、やはり港に来なくちゃっ!という気分の西表来島初日の午後のひとときなのであった。 宿から歩いて5分ほどのとっても近いところだけれど、東京の4月といったらまだまだ肌寒いくらいの日々が続くが南国西表は5月とはいえクワッ!と夏の陽射しいっぱい。さっきのカヌーの疲れもあってフラフラ気味に歩く3人トリオなのであった。

なにはともあれ、昨年と何も変わらないいつもの堤防に腰かけると、いつもの海や空がこんにちはしてる。「やったぞお 今年もまた来たんだぞお」とニタニタしちゃう瞬間なのだ。冷たいオリオンビールでみんなで今年の西表旅行にカンパーイ。
ぼんやり景色を眺めていると、なんだかいつもとちょっと違うかなって気がした。どうやら6月・10月と訪れた時とくらべて雲が多かった。ピナイサーラのあの大迫力の滝も連日の雨のせいだという話しを思い出した。昨日までずーと雨続きだったそうだ。 しかし、まだこの時点では、これからはじまる突然のスコールとの熱き戦いには気づくすべもなかった。もちろんさっき洗濯したての半乾きのTシャツやジーンズ達を外に干したままなのは言うまでもないというかもちろんやっぱり当然当たり前なのだった。

そして翌日。3日目は朝から土砂降り。洗濯物はもちろん・・・・ずぶ濡れ。 しかし例年のパターンでいくと、9:00くらいまでにはスコーンと晴れるので安心していた。 同行の友人は今日は1日ダイビングなので、港までお見送りすることに。太陽は出ていたがなぜか右手には傘を持ったまま港まで同行。 友人がダイビング器材のセットを終えて、いざゆかん西表の青い海待っててねカラフルなお魚さんたち!という出港の時が来た。「気を付けていってらっしゃ~い」と友人の乗った船を見送る。ポツンと1人港に取り残されるが「ひゃほー西表の朝だぁ~今日も天気が良さそうだぞお~」なんて喜んでいると、ポツポツポツ・・・・・が、やがてザーザーザーでバシャバシャバシャでドワワワワーのすごいスコールに変貌。
「うわああああ洗濯物がぁぁぁ」

こんな具合にいったい何度この「うわああぁぁ」を繰り返したことか。この「うわああぁ」を解消するために室内に洗濯物を干すという戦法を編み出すまでにかなりの時間がかかったのであった。

ずぶ濡れの洗濯物はもういいやということでお昼ごはんを食べに出発。いつも借りてる「やまねこレンタカー上原営業所」に行くと、なんとこの時期は予約で満杯。空いてる車は1台もなかった。しかも3日先まで全然空きなし。「な・な・な~んと!この西表、車がなければ移動もままならぬぞ」とお先真っ暗茫然自失。相棒の昨年の経験を頼りに「みどり荘」なる民宿に車を借りに向かった。幸運にもというか裏家業というか、とにかく車を借りることができた。しかし、今まではオフシーズンを選んで西表に来ていたので、レンタカーなんかいつでも借り放題で予約という考え自体がこれっぽっちもなかった。そういえば今はゴールデンウィークだったんだなぁとあらためて実感。お盆休みとかもこうなのかなぁと思うと、今までオフシーズン来島野郎混雑なんて無縁だもんねの思いがグラグラと音を立てて崩れそうになるのだ。う~んよくよく見ると、島の幹線道路を行き交う車が多いような気がするぞお、しかもしかも歩いてる人も多いような気がするぞ気分になり暑さも手伝いクラクラしちゃうのであった。
とにもかくにも、エンジン始動!で一路レストラン高那へと東へひた走り、念願の「八重山そばセット」をおいしくいただき満腹大満足で島内をフラフラする。

夕方になりダイビングから帰ってきた友人も含めてトリオで港でビール。 夕御飯を食べながらビール。 夕食後に「ダイビングスクール プレコ」でお祝い&友人のログ付けなどなどでビール&ワインで乾杯につぐ乾杯。 うーむ、連日連夜、飲み過ぎだ・・・・・・。

【オオチンチロフサゴカイに注意】


今日もまた何も予定のない1日。せっかくはるか遠くの西表島まで来たのにダイビング、カヌー、島内観光と何をするでも無くただぼんやり。朝ごはんの後、部屋に戻りぼんやりゴロゴロ。

10:00頃になり、よやく行動開始。といっても、さしてたいした事をするでもなく宿から歩いて数分の上原港脇の小さなビーチへ向かった。潮は干くでもなく満ちるでもなくちょうどいい加減。子供が遊びそうな腰くらいの浅瀬でパチャパチャ遊ぶ。ここのビーチは、かなりの遠浅なため、ある程度の深さになるのは数十メートル先。子供や泳ぎに自信のない人は待ってましたとばかりの安心なところだと思う。もしかすると100m以上先に行かないとある程度の深さはなくて、そこからはいきなりズゴーンと深くなっているみたい。正面にバラス島を仰ぐロケーションは最高のところ。

ものすごい浅瀬ではあるが、とりあえず持ってきた水中ゴーグルとフィンを使って遊びだした。ラッコのように仰向けになり波間にプカプカ。太陽がとってもまぶしくて人が誰もいないからすごく静かで穴場なビーチ。というか、西表で人気のないビーチ=魚がいないビーチ=サンゴ礁でないところ、という図式があるように思う。ここもサンゴは見あたらず、白砂が延々と続くキレイなビーチ。上原から車で40分ほどの南風見田ビーチもそうだが、こんな近くにもプライベートビーチ気分が味わえるところがあるのが嬉しい気分。家族連れや静かなビーチに憧れている人にはおすすめ。

のんびりフワフワ気分で波間にただよっていたが、よっこいしょと立ち上がった時に足元にヘンなグニャリ感。「うわぁなんだー」と思いフィンを見ると・・「うげげ・・ソーメンを踏んじゃったあ」。
ソーメンというのはオオチンチロフサゴカイのこと。ゴカイの一種で白いニョロニョロした生き物。毒はないので害はないけど触手から粘液を出しているので、これがもうフィンにくつっきまくり。剥がすのがもう大変。生き物なのでフィンに付いたまま歩き続けるのはかわいそうなので、頑張って剥がす剥がす。剥がすと指にくっついて、うっかりするとまたフィンにくつっく。「あーもう!」な気分で剥がすのに数十分をついやした。このビーチではぜひオオチンチロフサゴカイに注意が必要。

オオチンチロ以外には生き物はいないかというと、これがまた白砂に点在する小さなイソギンチャクにはお約束のようにクマノミがいたりする。カラフルな魚も星砂の浜ほどではないがときどきこんにちは。

好きなだけ海に浸かっていると(泳いでいるでないところが・・)、雨雲が近づいてきたのに気づく。洗濯物ピーンチ!あわてて帰り支度をして走って宿まで帰る。間一髪で洗濯物セーフ、濡れずに済む。
遅い昼飯のためにレストラン白浜へ向かう。ここはとろけるようなソーキがのっている八重山そばが自慢。地元の人もおすすめで、ちょっとこのソーキにかなうのは無いんじゃないかなぁというくらい旨い。帰りの道すがらアマサギやシオマネキに出会う。シオマネキよくよく見ていると数匹のリズムがぴったり。大きなハサミを潮をまねくように動かすが、近くにいるカニたちは同じ間隔で動かしているようであった。

夕方のお昼寝や楽しい食事後は、またまた酒盛り。夜はもちろんダイビングスクール プレコでわいわい大騒ぎ。やはりというか恒例でもあるので、港で星空を見ながらビールをゴクゴク飲む。ああ、今夜もまた飲み過ぎだぁ。

おわり