北海道エアシステム創立5周年を迎えて
2002年9月30日、株式会社北海道エアシステムが創立5周年を迎えた。 運航開始は平成9年3月28日だから実営業期間はほぼ4年半である。 この間の輸送旅客数は約70万人と推定する。 人身事故もなく無事創立5周年を迎えたことに祝意を表したい。
北海道エアシステムによって、北海道では離島路線と一時の飛行機性能の不足で東京〜釧路線が帯広経由、東京〜女満別線が旭川経由で飛んだために出来てしまった道内都市間路線を除くと、始めて意図的に札幌以外の地域を直接結ぶ航空路線が開設された。
旭川〜函館、旭川〜釧路、函館〜釧路及び函館〜女満別などの路線は、JR北海道の特急を補完する高速交通機関として役立っている。また、札幌〜釧路線においては日本エアシステム便の一部に代わって運航しているが、小型機による多便化は同区間の利便を向上させており、小型機による短距離航空路線のサービスのあり方の好例を示していると言える。
昨年冬に運航された函館〜仙台線は、エアーニッポンの季節運休の穴を埋めるものであり、大手が需要過少を理由に冬期に運休する路線が多い北海道において、需要減退期における航空路線野維持の方法の一つとしてもっと注目されても良い。
このところ同社は黒字経営で、すでに開業費用等による累積赤字も解消されていると聞く。ただ、私が見逃しただけかもしれないが、北海道内の報道に北海道エアシステムの5年間の業績評価の報道が表われて来ないのは、少し淋しい。熊本県の天草エアラインズと並んで業績の良い地域航空会社の代表例と言っても良いと思うので、北海道エアシステムはもっと評価されても良いと思うし、同社も積極的にアッピールすべきである。
それには、北海道エアシステムの役職員の努力もあるが、その根底にあるのは開業投資に北海道の手厚い援助があつたことを見逃す訳には行かない。 最近の新規参入航空会社がいずれも経営難に陥っているのは、もともと開業投資資金が不足の上、有利子で資金調達しなければならなかったのも、大きく影響しているものと推定する。その点、実に40億円近い投資資金が無償で供与されていることは、北海道エアシステムの経営を非常に楽なものにしたと考えられる。 それが、北海道エアシステムが北海道内の年間2-3万人程度の路線を運航してすら、黒字となった大きな理由であろう。 日本エアシステムと新千歳〜釧路線のような需要の安定している路線をダブル・トラック運航できるようになつたことも、収入の安定に大きく寄与していることも挙げられる。
ここまで順調に来た北海道エアシステムだが、将来にも明るい展望が開けているとは言い難い。 それは、JAL/JAS統合以後の日本航空システム・グループの地域航空に対する事業戦略がまだ明らかにされていないことにある。 北海道エアシステムのように大手航空会社の子会社である地域航空は、経営的には大手の傘のもとで比較的安楽な環境にあるが、最大の弱みは自社の将来が殆ど100%、親会社の裁量にかかっていることにある。
故に、現在のように親会社が自身の改革・合理化に専念している状況下にあっては、子会社は現状維持以外やりようがなくなる。 このような停滞の期間がどのくらい続くのか分からないが、変化の速度が早い現今にあってはそれが半年であろうと数年であろうと、それは将来の成長に禍根をのこすことはまちがいない。
これをどうするのか。 それが現在北海道エアシステムが抱えている最大の課題と考える。
しかし、北海道エアシステムは日本エアシステムが51%の株主であるから、会社としての北海道エアシステムの積極的な課題取り組みを期待するも、その立場には限界があることも事実であろう。 そこで、いまこの課題に積極的に発言しなければならないのは、私は49%の株主である北海道とその基盤をなす北海道民であると考える。 前述のように北海道は同社に北海道内の航空路線網の充実を計るため、多額の税金を同社につぎ込んでいる。 その金額は、注目を浴びているエアドゥ-北海道国際航空に、一部融資含むとは言え、つぎ込んだ額に匹敵する。 エアドゥの処理に関して広く道民の関しんを集めているが、殆ど同額の税金をつぎ込んだ北海道エアシステムに対しても、もっと関しんを持つべきである。 多分、いままで北海道エアシステムがあまりにも順調に推移してきたことにも理由があると思うが、北海道がつぎ込んだ金額に対して完全に還元された訳ではないと思う。
いままで話題にならないくらいに北海道エアシステムが順調であったことは評価してよいが、北海道が同社に行った投資がどう生きるかはむしろ今後にかかっている。
北海道には全日空グループのエアー北海道とエアーニッポンネットワークの二社の地域航空会社が存在する。 もし、仮に日本航空システム・グループがこれからの2強体制のなかで、北海道エアシステムを北海道関連の航空路線の充実よりも、全日空グループとの対決に力を注ぐようにしたらどうなるのであろうか。 それは、北海道が北海道エアシステムの創立に参加した趣旨ではないと思う。 しかし、いま見えている範囲では、日本航空システム・グループと全日空グループの地域航空が真っ向から対決するのは北海道しかない。 私は、来るべき2強競合時代において、北海道エアシステムの北海道側から見た創立の趣旨が埋没して行く危険を感じている。 これは単なる危惧ではない。
一例をあげれば、同じ日本エアシステム傘下の地域航空会社-日本エアコミューターは所有するYS-11型機の後継機としてDHC 8-400型機を導入することを決定している。 しかし、同社設立の第一の目的は奄美群島関係路線の維持であり、そのために奄美14市町村も40%の株主として参加しているにも拘わらず、DHC 8-400型機は、奄美群島の喜界島、沖永良部島及び与論島の1200m空港に就航することは難しい航空機である。結局、この機種選定は奄美14市町村の意向を無視したものと、私は見ている。
JJ統合以後、北海道エアシステムが日本航空システム・グループの傘下にとどまっているとしても、北海道が同社に参加した意義をどのように実現・発展させてもらいたいのか、発言しなければならない時は、まさに今である。 日本航空システム・グループの地域航空戦略が固まってからでは遅い。
北海道内ではエアーニッポンネットワークが順次拡大されて行くであろう。 近い将来にはエアァシェンベクスも開業するのであろう。 そのような環境変化にも対応して、第三セクターである北海道エアシステムはどうあるべきか、どうなって貰いたいのか、それが問われなければならない。 多額の税金を注ぎ込んだあげく、全日空グループの一員としてしか存続できないエアドゥの轍を、北海道エアシステムに踏ませてはならない。
HAPSのホームページにおいて、活発な議論が行われることを期待したい。
以上