音楽再生用ファンレスPC


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7.音楽再生用ファンレスPCの製作(2016年2月26日)

デジタルファイル音源の再生方法について 迷いつつ もVoyageMPDベースのPCオーディオで最上の音を 目指す べく、完全ファンレス化と電源ノイズ対策を合わせて実施したので、その作業過程を実際のステップに沿って取りまとめてみた。

姿、形に惚れこんで採用したファンレスPC用シャーシ:


ファンレスPCに使用するこの専用シャーシ( FC10 Alpha WS )とACアダプタ( Nano 150 PSU )は Streacom 製のもので英国 Quietpc から調達した。

(2017年6月30日追記)
当方が購入した段階では、国内でこのシャーシを調達することは出来なかった( OLIPSPEC がSreacomの代理店にはなっていたが、当時は完成品PCの取扱だけ)が、現在では シャーシのみの購入も可能となっている。実に感慨深い、、、

なお、電源ノイズフィルタとしてはファインメットビーズと5穴フェライトコアをすべてのDC電源ラインに挿入するというもので、マザーボード用24Pin電源フィルターならびにCPU用4Pinフィルタは ケンさん に製作いただいた。SSD用のDC電源フィルタは自作品。また、AC電源用のフィルターはTDK Lambda製の汎用品(RPE-2006)を使用する。

上からSSD用、CPU用、マザーボード用:


現状は以下のようなATX電源、CPUファン、ケースファンを持つ標準的なHTPCタイプのパソコンである。これを完全ファンレス化するために、新たに調達した専用シャーシとACアダプタによる外部DC電源を使用する構成へ変更するもの。実施作業としては、基本的にマザーボードの移植レベルである。なお、CPUやメモリ、OS起動用SSDは現状のものをそのまま流用する。

今までの音楽再生専用PC外観:


電源やDVDドライブが大きなスペースを占めごちゃごちゃしている:


(1)現状のPCのAC電源による動作確認

ACアダプターで動かした経験が全く無いので、電源容量(150W)に不足がないか、ちゃんと起動するか、安定しているかなどの事前確認をまず実施した。ATX電源からの24Pinソケット、CPU用の4Pinソケット、SSDドライブ用SATA電源をすべてNANO 150からの電源に変更しての稼動チェックである。問題なくクリアーできてほっとする。NANO 150 24Pinソケットは下記の画像の中央部分にあるのだが、非常にコンパクト。外部のACアダプターからの12V電源線一本で繋がっている。

ATX電源はそのままにNANO 150を24Pinソケットに挿して稼動確認:


(2)マザーボードの取り付け

事前作業として、以下内容を行っておく。
・CPUファンをはずした後、古いCPUグリスを丁寧に除去
・CPUファン用台座をマザーボードから取り外す
・マザーボードの裏側にCPUヒートシンクの取り付け用受け口をセット
・マザーボード用シールドパネルをセット

スペースも充分(当方はマイクロATXだがATXも可能):


(3)CPU冷却用ヒートシンクとヒートパイプを取り付ける
まず仮組みを行って全体位置や接合状態を確認する。次に各部にCPUグリスを塗布してから固定する。面倒くさそうであるが意外と簡単に取り付け完了、接合不具合も全く無くよく出来ていると思う。

取り付けが完了した状態:


(4)起動用SSD設置ならびに結線
VoyageMPD起動用SSDはドライブトレイ上部の右側端にネジ留めする。
以下の3種類のノイズフィルターをDC電源線に挿入した上で、それぞれを結線する。
・SSD用SATA電源フィルター(自作)
・CPU用4Pin電源フィルター(ケンさん製作)
・24Pinマザーボード電源フィルター(ケンさん製作)

ノイズフィルターはドライブトレイ下部に背面状態で取り付ける:


結線終了後の状態(ATX電源がない分スペースは余裕たっぷり):


ドライブトレイを閉めるとこんな感じに(結構すっきりしている):


(5)起動テスト、動作確認
組みあがったところで一度起動して以下のチェックを実施。室温が20度前後の状態にて音楽再生を一時間以上を行ったがCPU周り、ヒートシンクなどほんのり暖かくなる程度。VoyageMPDのCPU負荷は元々それほど高くないので、夏場も問題にならないと思う。安定性も現状全く問題なし。
・温度チェック
・稼動安定度
・停止の確実度(電源ボタンによるACPI動作とiPadからのSSH経由シャットダウン要求による停止)

仮組み状態で稼動テスト:


ファンレスPC完成形(パワーアンプかと思わせる姿):

作業後の設置が終わった状態(放熱を意識してラック上段に):


参考1:PCケースの感想
(1)各部の加工精度が高く、接合等で苦労することは全く無かった。
(2)必要となる以下のすべてのパーツが同梱されている。(別途購入品なし)
・ネジ類(ドライブマウント用のネジなども豊富に入っている)
・ケーブル(内部USB3.0コネクタケーブル、LEDケーブル、SWケーブル)
・CPUグリス(2個)
・特殊ネジ用のレンチ
(3)天板はサイドのヒートシンクからネジ留めされる構造なので、天板自体にはネジ穴が全く無くデザイン的に秀逸。天板は2.5mmのアルミ板であるが一枚板のためこのままでは若干の鳴きがある。この点は少し工夫して鳴きを止める予定。
(4)付属の インストレーションガイド が懇切丁寧で非常に判りやすい。



参考2.ACアダプター電源
英国から調達したものなので「英国仕様」のACプラグが標準添付されており、このままでは日本のACコンセントには不適合。「北米仕様」(普通の3Pin)のACプラグがついたケーブルを合わせて購入しておく必要がある。電源容量は120W、150W、240Wのものが選択可能。当方は150W仕様のものであるがサイズは少し大きめかなという感じ。数時間の使用でもほんのり暖かくなる程度で発熱の心配は無さそう。

2016年8月28日追記:
ACアダプター電源(Nano PSU)に新たに 160Wタイプ が加わり、このモデルではACプラグがC13-IEC(標準的な3Pinインレットタイプ)となっているので、こちらを選択すれば上記記載のような北米仕様のケーブルを別途調達する必要はない。

参考3:ちょっとつまづいてしまったところ
CPUファン、シャーシファンを一切使わないので、マザーボードによっては起動時のチェックで「ファンが動いていない」と怒られて、起動がストップしてしまうことがあるかもしれない。当方のマザーボードではエラーになってそのままでは起動しなかった。これはBIOS設定で「起動時のPOST処理でエラーが起こっても無視する」という類の設定を行っておけば良い。またファンの回転制御に関する設定も手動設定あるいは無効などの設定が望ましいと思う。

参考4:ちょっと変更したところ
電源ボタンの上部にLEDがあるのだが、標準ではこれがHDDアクセスLEDになっており電源オン状態を示すLEDはない。このため、パワーオンやシャットダウン完了の判別ができない。HDDアクセスのLEDはこのような音楽再生専用のPCでは不要なので、このLEDケーブルを電源状態端子の方に接続した。これにて「パワーオンLED」となるので起動開始とシャットダウン完了が把握できるようになる。このように変更した方が運用上はベターかと思う。




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