オーディオ日記 第37章 夢の旅路は続く(その7) 2016年2月22日


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スピーカー周りを中心としたシステムの下流にあたる構成の見直しをスタートさせて随分と経った。またデジチャンやマスターボリュームなど中間部分も合わせて何とか整備が出来てきた。今後は肝心かつ最重要である上流部分についてもしっかりと見直しをせねばなるまいと考えているのだが、どのような構成にしていくべきなのかやや思案していた。永らくPCを主体とした所謂PCオーディオに取り組んできているのだが、その延長で考えるべきなのか、PC環境を一旦離れて、ネットワークオーディオ的な構成に移行すべきなのか判断がつきかねているのだ。現状のPCオーディオ周りは標準的な構成だとは思うがNAS、HUB、PC本体、USB DDC/DACという複数の機器で成り立っている。今般電源ノイズに係わるいくつかの対策を行いそれなりの効果を認識しているのだが、如何せん構成機器が多く煩雑な気もする。また、PC本体に関して云えば(昨今はNASによる音質向上が随分と謳われている割には)、音質向上に係わる根源的な議論や対応の情報があまり無いことがネックだと感じている。PCオーディオに関してはUSB DDCという括りの製品が(USB DACはたくさんあるのだが)ひと頃よりずっと減少してしまったということも少し気になる事象である。

SONYのHAP-Z1ESに代表される一体型HDDプレーヤのようなシンプルな構成が本来はベストだろうと思うし、DELAやfidataのようなオーディオを意識したNASにプレーヤー機能が付加されれば、それとUSB DDC/DACで完結できる構成も捨てがたい。最近ではミュージックサーバーと銘打ったようなオールインワンの機器も(まだ海外製品が主流であるが)ぼつぼつと散見されるが、HAP-Z1ESを機能の観点から凌駕するようなものではない。いずれにしても、デジタルファイル音源の再生は音そのものが一番の優先順位であるが、音源の管理のし易さと再生コントロールのための機能も同時に問われることになる。

ネットワークオーディオの分野の先駆者であるLINNがDSにおいて、DLNA(その後OpenHomeへ発展)を採用してしまったことによる操作性の課題は、多くの後発メーカーが同様の手法を採用したこともあって、そう簡単には座布団をひっくり返せない状況になってきてしまっている。(例外的にLuminは独自の開発により秀逸なコントロールアプリを持っているのだが)この観点からのブレークスルーはネットワークオーディオ機器にて実現するだろうか。

今後の我が家におけるデジタルファイル音源再生の構成を考えた場合、選択肢としては以下の4種類の案があるのだが、どれが自分にとって一番適合するか考えてみた。

1.オールインワン型ミュージックサーバー機器への移行
2.NAS+プレーヤー機能を持つ機器への移行
3.ネットワークオーディオ機器への移行
4.(従来型)PCベースでの対応

本来的に望ましいのはやはり1.だと思うが、デジタル出力を持っていない場合はデジチャンへのデジタル入力を前提としている当方にとってはとても大きなネックとなる(HAP-Z1ESはデジタル出力が無くHDD容量が1TBしかない点がつらい)。次善の2.であれば我が家にあるUSB DDC/DACが使えるので、デジタル出力の問題は無くなる。3.のネットワークオーディオ機器への移行に関しては、先に述べたDLNAベースのコントロールアプリからの操作性の課題があって自分としては望ましい方向とは考えにくい。4.のPCベースであるが、再生アプリについては今後もいろいろと開発が行われていくであろうし、PCの汎用的な機能+音楽再生機能という兼用的な使い方もできるので今後も隆盛を続けるであろう。一方で汎用PCをベースとした「音楽再生専用PC」の考え方は将来どのように変化していくか予断を許さない。LinuxをベースにしたMPD系(その派生はたくさんある)はかってシングルボードコンピュータなどの実験的導入やそのコストの安さから持て囃されたが、残念ながらLinux周りのハードルの高さもあって、今後一般的となりさらに普及していくことなどは考え難い状況にある。永らく当方が愛用しているVoyageMPDはPCとしての汎用性を捨て去った潔さと音の良さ、タブレット端末からの操作性が秀逸であることなど自分としての評価は最高なのであるが、バージョンアップなどを含めた将来性ということについてはユーザーの広がり方との関連で少し悲観的な部分もある。

だが、1.及び2.の構成で、「よし、これにしよう!」と即断できるような機器が今のところ無い、というのもまた事実。(超高価な海外製ミュージックサーバーは当方のターゲットにはなり難い)2.の範疇のDELAのプレーヤ機能がLinn Kinskyでのコントロールという点がとても残念。fidataがどのようなプレーヤ機能とコントロールアプリを搭載してくるのか、興味津々でその登場を少し待ちたい気もしている。(DELAも独自のコントロールアプリを出す、という情報はあるようだが定かではない)

一方で、現状のデジタルファイル音源再生において、何らかのブラッシュアップを急ぎ図りたいという希望もある。特にVoyageMPD用の汎用PCは随分と前に自作した所謂HTPC(Home Theater PC)タイプで、ATX電源のファン、CPUファン、筐体ファンなどを持ちオーディオ用としては決して好ましいとは云えない構成なのだ。そこで、「これは!」と思える新しい機器が登場してくるまでは、一時凌ぎではあるがPCベースでの対応を行ってみようと考えた。

PC自体はオーディオ的にはノイズの塊だと固辞する人も居られるのは重々承知であるが、しっかりとノイズ対応を行うことにより他の機器と遜色が無いところまで行けるような気もしている。しかし、電源系のノイズフィルターなどの対策を行ってその効果が確認できた、ということは裏返せば元々そこに課題があるということに他ならない。とすれば、そのポイントに対して適切な策を考えれば良いのではなかろうか。基本としてまずは完全ファンレスの構成を指向するということがベースになる。その上で合わせて現状行ってきた各種ノイズ対策を加えてみる、というアイデアである。もちろん「PC」という観点では変わりは無いので、どこまで効果かあるかは未知数。一方でミュージックサーバーであろうと、NASであろうと内部にCPUに類するチップ(例えそれがFPGAであろうと)やHDD/SSDが搭載されていることには何ら変わりが無い。要はオーディオ的な観点から音質への考慮をどこまで行っているか、なのだと思う。

ひと頃は低速のPCの方が音が良いという話もあり、自分でもそれは体感していた。またPCには余分な動作をさせないようにする、という点も重要なポイントとして強調されていたと思う。余分な処理をさせることによるジッター発生の可能性、また供給電源の変動や電源系ノイズが増大することによる影響が大きいのかと今は考える。一方で高速なCPUによる低ジッター化と安定動作という点も見逃しがたく、これを音楽再生に絞って動作させ、またしっかりとノイズ対策を行うことにより、PCの持つ汎用機能的な部分は削ることになるが、PC故の音に対するディスアドバンテージが払拭できるのではないだろうか。これにチャレンジしてみたいのだ。

完全ファンレス化のためにはまずPC電源から考えねばならない。通常のATX電源ではなく、ファンレス電源か、DC電源入力のいずれかが必要になる。次にCPU冷却用ファンを排除せねばならない。最近のCPUは低TDP(低消費電力)に拘ったものがあるので、超高速なCPU以外であれば自然空冷が可能となる。水冷という仕様もあるが、これはどこかでファンを使っている場合が多い。またHDDを使用せず、OS起動ディスクのみをSSDにて搭載するような構成であれば振動のみならず全体の消費電力や発熱を低減(=ケースファンの排除)できる。もちろんCDドライブなど余分なものはも使わない。

そんな条件でいろいろと考えてみて、ACアダプター経由でのDC電源入力、CPUをファンレス化するため筐体全体で空冷するPCケースに換装すれば、多少なりとも改善効果を見込めるような気になってきた。そこで対応する機器やケースを探してみると、たくさんあるようであまり多くはない。静音PCというものは結構あるのだが、完全ファンレスを目指したものはPCパーツとしては限られているようだ。

いろいろな機器、パーツを検索した中で引っかかってきたのが、 Streacom というオランダのメーカーのファンレス用のPCケース。オールアルミのケースでデザインもオーディオ機器(?)と見間違うような美麗さなのだ。もちろん自然空冷用の筐体ヒートシンクがあり、CPUクーラーとしてのヒートパイプも内臓している。何よりありがたいのは、ペアで使用することが考慮された専用のファンレスPSU(電源ユニット)もある。これを仕入れて現状のHTPCからCPU、マザーボード、メモリ、OS起動用SSDを外して載せかえれば、比較的簡単に完全なVoyageMPD用のファンレスPCができそうに思える。これはやらずにはいられまい。







調達について検索してみると、日本ではOLIOSPECが販売店になっているようだが、扱いはPC完成品のみで、希望するケースの取扱もなく、またPCケースだけを調達することはできない。結局 Quietpc (英国、米国に拠点がある)というところから調達を行うこととした。現状ちょっぴり円高になっているので助かる。オーダーしたのは FC10 Alpha というケースと Nano 150 PSU という24PINのDCコネクターと外部ACアダプターのセット(+北米仕様ACプラグ)である。完全ファンレス化以外のノイズ関連の対策としては、以下の4種類を想定している。

1.AC電源アダプターへのACインレットフィルター(TDK Lambda RPE-2006)の挿入
2.ACアダプターから24PinソケットまでのDC電源線へのファインメットビーズ、フェライトコア挿入
3.CPUへの電源供給用4Pinソケット線へのファインメットビーズ、フェライトコア挿入
4.SSDへのSATA電源供給線へのファインメットビーズ、フェライトコア挿入

現時点ではオーダーしたところまでで、到着までには若干の時間がかかると思うがちょっと楽しみではある。さて将来的なデジタルファイル音源再生の主役登場までの中継ぎとして、現状のPCの音を超えて納得の音に至れるであろうか。


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