いつかはダイヤモンド:
正確に覚えておらず1980年代半ば頃だったと思うけれど、「いつかはクラウン」という車のコマーシャルフレーズが存在していた。車を持つことが自体がステータスだった時代を少し過ぎて、多少なりとも庶民を高級路線?に向かわせようと意図したものだったと思う。似たようなフレーズに「隣の車が小さく見えま~す」なんていうのもあった。時代がもう少し下って、日本がバブルを迎えた頃には「シーマ現象」なんてことが起きていたことも懐かしい。こんなフレーズやその時代の流行を覚えている方(当方に近い世代?)は沢山おられるのではないだろうか。
モノを所有するということは、やはりそれが多少の優越感をくすぐるところがあって、より高級、高価なものへの憧憬を生む。その対象は時代の変遷とともに変化するし、何も車だけとは限らない。それはまたオーディであっても同じ範疇と云える。当方の若かりし頃はJBLやALTEC、Electrovoiceなどのやや大振りのスピーカーが一世を風靡していたこともあって、オーディオの道に足を踏み入れた時分には高嶺の華であったがやはり我が手で鳴らしたいものと思ってきた。
この道を歩む途中で多少盲目的でもあったけれど、分不相応なALTECやJBL、Electrovoiceのユニット達を愛でた日々があったことは、十全に鳴らすための技量や経験値が不足していたものと認識しているが、今ではその悔恨と共に懐かしい思い出でもある。なお、クラウンは自分には縁遠い車種とずっと思ってきたのだが、そのちょっと斬新なスタイリングに魅せられて昨年「いつかは、、、」が現実のもの(陥落とも云う)となってしまった。
年齢的にも最後の車なので安全性重視、と自分にも(家族にも)言い訳した:
1970年~80年代の国内でのオーディオ最盛期とは一変して、現在ではこの領域を趣味とする(特に若い方)方はかなり減少していると推察するけれど、かたちを変え多少独特の世界となっているにしてもひとつの分野として間違いなく存在している。
ここにも、ステータスや高級路線というものは厳然として存在しており、必ずしも音の優劣が明確とは云えないにも係わらず良い音には多額の投資が必要となると思い込まされてしまう。もちろん、高価だけれどとても音の良い機器は実際に間違いなく存在している。けれど、結果として反面教師となってしまうような価格と音が見合わない製品(特にアクセサリーと呼ばれる領域)もとても多いと感じる。
これを見極め、自分にとって最適なパフォーマンスとなってくれる機器、製品を導入していくことはなかなかに難しい。「もうちょっと高いものの方がもしかしたら音が良いかも」あるいは「高いものなのできっと音が良いだろう」という観念に捉われてしまう。また世にある広告宣伝と紙一重のレビュー記事、そしてネットに散乱するアフィリエイトを稼ぐために「激変?」をうたう導入情報。
もちろんこれらを全て否定する訳ではないけれど、人それぞれの評価基準が同じ土俵に乗っている訳では無いので鵜呑みにできるものでもない。最終的には自分の耳と感性で機器の吟味していくしかないとある意味では開き直っている。当然ながら比較検証の結果として我が家で淘汰されていく機器もある。
それでも尚、高価だけれど良い音はある。そしてお持ちの方のところに伺い、
拝聴
させていただいて自分の耳でも確かめてきた。結論としてはやはりその性能は比類が無いものとも感じている。ダイヤモンド振動板を持つツィータである。ただし、市販されているユニットは決して多くはない。代表的なメーカーは
Accuton
やBliesmaであるが、
Seas
にもある。Accutonは複数個所でかなりの回数を聴かせていただいているが、その他は未経験。
一方で、ダイヤモンド振動板を持つからといって、その周波数特性はユニットによって(当然ながら)異なるし、逆に云えば分割振動をしない硬い振動板であるが故に比較的顕著なブレークアップポイントを持っている。これが聴き分けられているのか、という自問もあるのだが、(極めて僅かだが)キャラクターを感じる部分が皆無とは云えない。
それでも、ひとつの憧憬と成り得る強い音の魅力を持っていることは確かなのだ。もちろん、こちらの「いつかはダイヤモンド」という夢が実現するのかどうかわからない。たが、密かに願望を持つことくらいは許されるだろう。このターゲットの中で選択肢として考えているのは
Bliesma T34D
というユニットである。このユニットの際立っているところは、超高域にブレークアップポイントが「無い」こと。何故これが実現できているのか正確には判らないのだが、単にメーカーが提示している周波数レスポンスだけではなく、
HiFi-Compass
における実測でもそのフラットネスが証明されている。
Bliesma T34Dの周波数特性:(メーカーのグラフではあるが見事)
ミッドハイユニットとして同社のM74Bを
使っている
こともあって、何となくルックス的にも相性が良さそうだな~(多少無骨なのだが)と感じている。もちろん聴いたことは無い。にも係わらず、その存在が「どうよ、どうよ!?」と心の中で迫ってくるのだ。多少なりとも我が家の音が纏まってきたと思うこともあって、全く使いこなせない、ということにはならないだろう。
(2025年4月24日追記)
何と!
Bliesma M74D
という74㎜口径(ミッドハイ用)のダイヤモンドユニットもBliesmaの製品ラインアップに登場している。ただし検索をかけてもまだ全く情報はないのだが、これは「夢」が広がる。(追記終わり)
けれど、現行の
ベリリウムツィータ
に何ら音の不満がある訳でもないし、若かりし頃に家内に贈った指輪の金額に比して考えればどうしても躊躇せざるを得ない。オーディオ沼に踏み入れたのであれば、もう一歩深みに嵌ること、それはやぶさかではないのだが、この心の声に今はまだ抗っていたいと「強く」思っているのだけれど、、、
|