オーディオ日記 第47章 巡礼(その13)2019年12月17日


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PCオーディオの実力を考える:

先般からのlightMPDへの取り組みによって、JPLAY FEMTO、Symphonic-MPD、lightMPDという三種類の再生環境が整ったのだが、今後これをどのように使っていくか、を含めて改めて音の比較を行ってみた。最早このレベルになると単純にどちらが良い、というような比較は率直に云って難しいものがあるのだが、、、

これに先立ち、 先にSingle PC化 したJPLAY FEMTOを最終環境としておく必要があると考え、まずはDAC Link1000での連続運転をDSD音源(DSDtoPCMを実施しているもの)やハイレゾ音源を中心に実施した。ベースとなるPCはAMD製3GHz Dual CoreのCPU、4GBメモリと一般的に考えるとかなりスペックの低いものである(ただし各種の 音質向上策 は考えられる限り適用している)。このため、Single PC化した時に再生の安定性を考えてDAC Link 700の設定としてきたのだが、どうやら1000でも全く問題が無い様である。更に念をいれるためWindows Server 2012R2のCore Modeへの移行も実施した。(考えてみると、実はSingle PC構成でCore Mode化するのは初めてである)

このSingle PC構成のJPLAY FEMTOをサーバーPC上にて稼動しているJRiver/JRemoteをコントロールポイントとしてPUSH再生させる。メディアサーバーはMinim Server(DSDtoPCMはここでSoXを呼び出して実行)である。操作性に関しては、JRemoteによって多少は救済されているとは思うが、UPnP/DLNAの呪縛からは逃れられず(比較すればなのかもしれないが)もどかしさが残る。

一方で、音はやはり第一級である。全ての音源を過不足なく的確に鳴らす。DAC Linkを700から1000にしたこと、Core Mode化したことも僅かであるが貢献しているようにも感じる。JPLAY FEMTOの最近の趨勢はあまり把握できていないのだが、インターネット上では最早新しい記事はほとんど無く、新規ユーザーも(国内では)あまり増えてはいないのだろうかと悲観的な推測もしてみる。だが、その素晴らしい音に変わりはない。今後も逆境に耐えて生き残って欲しいと切に思わざるを得ない、、、

さて、Symphonic-MPDである。操作環境はWEB UI(ympd)ではなく、MPDクライアントであるyaMPCを使用している。環境面で云えば、電源オフをするためにはWEB UIは使わざるを得ない、というちょっと面倒なところも、、、またDSD音源に関しては常用しているラズパイ3B構成ではDSDtoPCMをさせていないので、環境面として再生不可である。(これは単に当方の環境依存、Hifiberry Digi+ProからS/PDIFにてデジチャンに送り出す必要があるため)実はこれは正直案外と痛い点でもあるのだ。従って、Symphonic-MPDの音の良さ、yaMPCでの操作性という観点は二重丸ではあるのだが、若干のマイナス点もある。なお、ラズパイ3Bは電源環境について音質向上の観点から カスタマイズ されたものを使用している(専用安定化電源をHifiberry Digi+Pro基盤経由で供給するスタイル)

lightMPDに関しては、当方はまだ初心者のレベルであるのだが、いろいろと研究をしてみるほどに、なるほど「よく出来ている」と思わせられる。稼働環境はラズパイ3B+で、こちらは電源系の対策は未実施。通常の操作はこちらもyaMPCにて行っているので、この面での課題は全く無い。DSD音源もlightMPD環境ではDSDtoPCMの考慮が為されており、DSFのみを176.4KHz/24bit化してデジチャンに送り出せる、という当方にとってはとても有難い仕様である。また電源オフもブチ切りで構わない(マイクロSDカードがアンマウントされているため)。

率直に云えば、Symphonic-MPDとlightMPDをブラインドで聴き分けられるか? と自問すれば違いは皆無ではないのだが甚だ心許ない。それほど両者は拮抗した音を聴かせてくれるし、yaMPCというMPDクライアントからの操作は真に超極楽である。しかしながら、両者は成り立ちや経緯も含めて少ながらず違いがある。Symphonic-MPDはRaspbian Lite Strechを母体としており、OS環境、MPD(V0.19.0)はそれに準じている。このため、一般的なラズパイ環境とほぼ同様な操作が可能(raspi-configや各種コマンド、sshなど)であるが、lightMPDは既存のディストリビューンに依存せず独自に設えられている。それが理由かどうかは定かではないが、一般的な所謂ラズパイ系の操作(raspi-config、vcgencmd、sshなどなど)は全くできない。テキスト編集のためのnanoすらもない。仕方がないのでtelnet(注記)で入り、当方の嫌いなviで設定等を変更しなければならないのだ。

(注記)設定を弄るためには「mount /dev/mmcblk0p1 /mnt」を叩いてマイクロSDをマウントし直さねばならない。

このような仕掛けのお陰かもしれないが、MPDのバージョンはかなり新しいもの(V0.20.23)となっているし、各種プラットフォームへの対応ならびにラズパイ4でのいち早い稼働など環境変動にも強い構成となっているようにも思える。出力はALSAベースでUSB接続でもHifiberry Digi+Pro経由でも可能。片やSymphonic-MPDは環境への依存度が高いとも推定され、開発と音作りの基本ともなっているxenomai環境が整わないとラズパイ4への対応などが難しい由。

この辺りはソフトウエア開発の考え方やこれまでの開発の経緯とも絡んで来るので、一概に両者を比較することは難しい面もある。「依って立つ哲学」の差異と考えれば良いのかもしれないのだが、、、

一般論的に考えた場合、オーディオ愛好家にとっては「音が全て」であろうことに異存はない。だが、当方がPCオーディオにとって重要と考える点は従来より「音、操作性、安定度」である。この三点が極めて高いレベルでバランスしていなければ納得できないのだ。操作性や安定度を犠牲にした再生環境というものは我慢できず、容認もしない。従って音を追及するために、あまりにも複雑な構成環境としてしまうことは望むところではない。これらは大概安定性を犠牲にしてしまうものなのだ。また操作性に関して云えば、フォルダー階層に基づく選曲操作など論外で、UPnP/DLNAによる音楽再生の開始・停止のもっさり感ですら、本音としては許容し難く感じている。

なるほど、JPLAY FEMTOは確かに十全な音を聴かせてくれる。だが、UPnP/DLNAによるメディアコントローラでの操作が前提である以上、操作性については落第ではないものの評価できるとは云えない。JRiver/JRemoteでは作成したプレイリストのランダム再生を行わせるためには、一旦プレイリストをロードし、リシャッフルという指示を行わなければならないのも困りもの。Symphonic-MPDももしもWEB-UIしかなければ、これほど入れ込むことはできなかったであろうけれど、幸いにも現状は yaMPC V1.3 が登場してくれたお陰で大いに救われている。lightMPDも然り。

安定性という観点からは現状の自分なりの評価ではSymphonic-MPD、lightMPDとも及第点にある。JPLAY FEMTOはおそらくJRiver/JRemoteとの連携による課題もあるのかもしれないが、稀にスタックすることがあり、この点での評価は一段下げざるを得ない。

つまるところ、、、、現状ではどれか一つをチョイスせよ、となると頭を抱えてしまう状態にある。選択肢が増えること自体は喜ばしいことだと思う。願わくばそれぞれが進化し、更に素晴らしい音と操作性、安定性を身に纏ってくれれば、それこそ極楽PCオーディオの世界(我儘であることは充分認識してはいるが)になると思う。


4way構成の設定備忘録(2019年12月4日更新)設定値

項目 帯域 備考
Low Mid Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
Sony
SUP-T11
Accuton
C51-286
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+4) 110 (+17) 93 (+0) 93 (+0)
定格値
DF-65の
出力設定
dB +1.2 -10.0* +1.7 +3.8
*DF-65 Att ON
マスターボリューム
アッテネーション
dB -3.0 -3.0 -6.0 -3.0
各チャネル毎の設定
パワーアンプでの
GAIN調整
dB -6.0 -12.0 -6.0 -12.0
 
スピーカーの
想定出力レベル
dB 89.2 85.0 82.7 81.8
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

500
500

1400
1400

2500
4000

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-48 48-24 24-18 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm -7.0 -37.0 +30.0 +30.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Norm Norm Norm Norm MPD
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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