オーディオ日記 第39章 扉を叩け、開け(その18)2017年2月14日


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下流のスピーカー周りから始まって上流のデジタルトランスポートとなるPC周りへと遡りながらあれこれと手を入れ、そしてまた上流から下流へとさてもオーディオは行ったり来たりである。上流であるJPLAY周りに関しては種々のPC環境、構成を試し、自分なりに何とか落ち着いた。本気モードとしては(当方としては一番望ましくない)Triple PC構成がベストであろうということにはなったのだが、率直に云えばこれは厄介この上ない構成でもある。従い現在のところ、三通りの構成を使い分けることにしている。

1.JPLAY Triple PC構成:
DSD音源を176.4KHz/24bitにダウンコンバートして聴く場合を中心とする本気モード(?)。CDリッピング音源、ハイレゾ音源も一律に176.4KHz/24bitとして聴く。この構成のメリットは3rd PCで楽曲の読み取りやフォーマット変換、サンプルレート変換をさせていることに起因するのか、音のみならず再生の安定感も申し分ない。また一律のサンプリングレートにしてあるため、デジチャンでのサンプリングレート切替に伴うリレー音が一切発生しないというアドバンテージがある。(が、聴き始めるまでに3台ものPCをパワーオンしなければならないのも面倒)

2.JPLAY Dual PC構成:
予め作成してあるプレイリストの再生、ランダム再生、選曲しながらの再生など普通に(?)聴く場合。まぁこれで聴いている分には充分だと思う音なのだが、、、Control PCの負荷を考慮して(DSD音源以外は)オリジナルのサンプリングレートとしているため、曲によってサンプルレートが変わるたびにデジチャンのリレー音がかっちん、かっちんと鳴るのはご愛嬌か。

3.Single PC構成(VoyageMPD):
各ジャンルの楽曲のランダム再生をさせて、本など読みながらBGM的に聴く場合。気が付けば寝ている、、、(これも全然悪くない)

PCオーディオはいろいろな意味で流れや動きが早いので、構成や各種ノイズ対策などがこれで決まり、ということにはならないかと思うのだが、しばらくはこの状態でのんびりと聴いてみようと考えている。しかし、デジタルトランスポートとして随分と変化、成長したもんだと改めて感慨が深い。さて、こうなると、またまた手を入れたくなるのが下流のスピーカー周りである。達人の音を聴かせていただくたびに、我がシステムの音はまだまだだと痛感することも多いのだが、実のところ自分としても4wayマルチアンプ構成には振り回されっぱなしで御しているとは云い難いとも感じている。やはりスピーカは大きく音を支配するデバイスなので、これを自分なりに「アンダーコントロール状態」とし、自分の音へと昇華していかなければならないのだ。

少し前にDante Audio Networkを試した関連で、 MPP,DSP というFIRのデジチャンソフトウエアを試したのだが、その時に感じたいくつかの点のひとつ。高次のスロープ特性をうまく使うこと。一方で当方のデジチャン(DF-55)はIIRであり、高次のスロープ特性にしようとするとタイムアライメントを含むいろいろな設定が思い通りにならず、インパルスレスポンスや周波数特性が乱れたりするのだ。ここはFIRとIIRの差ということで、元々の機能の違いもあって遺憾ともし難いところではある。

4wayマルチアンプ構成の設定をスクラップ&ビルドすることは追い込むのに時間も掛かりしんどいことであるのだが、これも視野に入れて、まずはひとつひとつのユニットを高次のスロープ特性とクロスオーバー周波数を変えつつ測定してその挙動を改めて確認してみることから手探りを始めてみようと考えた。

下図はミッドハイ帯域に使用しているSONY SUP-T11というホーンドライバーの特性である。スロープ特性は両端とも-48dB/oct、クロスオーバー周波数は900Hz~9,000Hzである。(軸上1.5m、スムージングなし)何気ない周波数レスポンスではあるが、4インチ(アルミ)ダイアフラムを持つホーンドライバーとしては相当秀逸なもので、大きな山谷も高域に向かっての落ち込みも無く、歪率も非常に低い。このユニットが当方のスピーカーシステムの「核」となることは当然の帰結なのかもしれない。なお、この周波数帯域では-48dB/octという高次のスロープ特性でも特段の問題はない。

Mid High帯域の単体計測(測定距離は1.5m、スムージング無し、VoyageMPD再生): MH Frequency Response

次に、高域のベリリゥムツィータ( Scanspeak D2908 )であるが、これは我が家の全システムの中では唯一の海外製品(PCオーディオのパーツを除き)であり、その清楚かつ凛とした音と浸透力は自分としては高く評価している。だが、このユニットを-48dB/octのスロープ特性、ローカット7,100Hzと9,000Hz で単体測定してみると、これは案外好ましくない測定結果になる。7,100Hzの場合はインパルスレスポンスが乱れクロスオーバーのすぐ上の周波数辺りにちょっとしたピークが出現してしまう。9,000Hzの場合も同様にインパルスレスポンスが乱れ付帯音の発生にも繋がっているような危惧も感じられる。これらは元々のユニットの諸元、特性と比較してもちょっと考えにくい挙動なのだが、ローカット周波数を5,600Hzあたりまで下げると周波数のピークとなる山は小さくなる。また7,100Hzや9,000Hzの場合におけるインパルスレスポンスの乱れについても-24dB/octのスロープ特性にすると多少改善される。

High帯域の単体計測、7100Hz、-48dB/oct(測定距離は1.5m、スムージング無し): High Frequency Response

High帯域の単体計測、9000Hz、-48dB/oct(測定距離は1.5m、スムージング無し): High Frequency Response

High帯域の単体計測、9000Hz、-24dB/oct(測定距離は1.5m、スムージング無し): High Frequency Response

これはどういうことなのか、単なる計測上の誤差かもしれないのだが、 今ひとつ因果関係が判らない。素の状態のユニットの特性とは異なるレスポンスとなってしまう理由は何だろうか。スロープ特性とクロスオーバー周波数設定に依存しているので、IIRのデジチャンの特に高域における機能的限界がこの辺りにあるのではないか、とも考えてみる。(想像の域を出ないが、、、)また、それらの挙動不審の起こる設定においては何だか変だなという音に聴こえる感じがしなくもない。

元々IIRのチャネルデバイダーでは理想通りの特性が得られないということはあって、マルチウェイ構成のトータルなインパルスレスポンスを追い込もうと思ってそう簡単にはいかないということはある。だがしかし、上記の測定結果を信じれば、このような好ましくない特性を示す高次のスロープ特性やクロスオーバー周波数の設定はその理由に係わらず「避けたほうがいいだろう」と思える。

アマチュアユーズとしては数少ない選択肢のひとつで、云わば希少なデジチャンなのであるが、やはり汎用的なDSPチップの処理能力をベースとしたIIRのチャネルデバイダーの機能及び能力的限界なのかもしれない。もちろん、Omni Mic V2による測定そのものが完璧かどうか、となるとこれも完璧とは云えず心許無いところはある。だが、測定も自分の耳も信じるところからスタートしなければ、よりベターな設定には辿り着けない。スピーカーシステムは元来ヒアリングと測定によってその設定を詰めていくしかないものなのだが、測定そのものも微妙なマイク位置等によって都度測定結果が変化する。そのため、これは決して単純作業によって一日二日で煮詰められるような易しいものではないのだと思う。

だが、惚れこんだユニット達を「最適解」で鳴らしてあげる為にはこれを詰めていくしかない。完成したスピーカーシステムではないし、設計者によって「音決め」された既製品でもない自分流の音を紡ぎだすための避けて通れない「調教」作業なのだと思う。だが「御した」と云えるような状態になるのは一体いつの日になるのであろうか。

(参考)下記はミッドロー帯域の FPS を測定したもの。200~900Hz、-48dB/octの設定である。1KHz以下の周波数なので見やすくするために6dBでスムージングしてあるが、このユニットもなかなか素直な周波数レスポンスを持っている。

Mid Low帯域の単体計測、200Hz~900Hz、-48dB/oct(測定距離は1.5m、スムージング6dB): ML Frequency Response


4way構成の設定備忘録(2017年2月13日現在)

項目 帯域 備考
Low Mid-Low Mid-High High
使用スピーカー
ユニット
- Sony
SUP-L11
FPS
2030M3P1R
Sony
SUP-T11
Scan Speak
D2908
-
スピーカーの
能率(相対差)
dB 97 (+7) 90 (0) 110 (+20) 93 (+3)
定格値
パワーアンプでの
入力絞り
dB -6.0 0.0 -8.0 -7.0
設定値
SP側での
アッテネーション
dB 0.0 0.0 -12.0 0.0
L-PAD抵抗
DF-55の
出力設定
dB 0.0 0.0 0.0 +5.0
Analog Att
OFF
スピーカーの
出力(想定)
dB 91.0 90.0 90.0 91.0
合成での
出力概算値
クロスオーバー
周波数
Hz pass

224
224

900
900

6300
6300

pass
Low Pass

High Pass
スロープ特性
設定
dB/oct flat-24 48-48 48-48 24-flat Low Pass
High Pass
DF-55 DELAY
設定
cm 25.0 37.0 0 36.0 相対位置と
測定ベース
極性 - Normal Normal Rev Rev JPLAY
環境下
DF-55 DELAY COMP
(Delay自動補正)
- ON 自動補正する
DF-55デジタル出力
(Full Level保護)
- OFF 保護しない

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