オーディオ日記 第39章 扉を叩け、開け(その19)2017年2月17日


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もう手に入れることは叶わないであろうと思っていたSONY SA-S1という稀代のスピーカーを、偶然にも入手することができた。SONYのユニットを長らく愛用していることもあって、SONYが元気だった時代(バブル終焉の頃)のこのスピーカーをサブスピーカーとしていつかは手元に置いておきたいと考えてきたのだ。SA-S1は一般的なスピーカーとは随分と異なっており、静電型(エレクトロスタティック)ツィータとMFB(Motion Feed Back)制御のウーファーを搭載しているアクティブ型(アンプ内臓)スピーカーである。静電型ツィータは稀有なプレゼンスと音の輝きを聴かせてくれるユニットであり、その音を評価し愛でている方も多い。一方で、その構造上故障率が相当高いとも云われており、またかろうじて音が鳴ったとしても本来の音圧を維持できている状態にあるものは少ない、という情報が多い。

このため、今回手に入れたスピーカーも我が家でその再生音を聴くまでは実のところ不安で一杯でもあったのだが、結果杞憂に終わってほっと一安心している。もちろん、20年前後の月日が流れているものなので初期状態の音と遜色ないのかどうかは分からない。また、静電型ツィータということもあって高電圧をユニットにかけねばならないので若干目覚めは悪いようではあるが、次第に本調子になってくるとこのクラスのスピーカーとしては考えられないような高域の再現力、広がりや透明感の表現に脱帽せざるを得ない。もちろん低域の解像度や質感という観点まで含めると満点という訳には行かないが、サブスピーカーとして気楽に聴くことを考えれば充分だと思う。何より気取らずにまた小癪に音楽を聴かせてくれることが嬉しくもなる。

SONY SA-S1:
SONY SA-S1

これは日本のオーディオ市場が活況であった時代を代表するような製品のひとつなのかもしれない。元よりこのスピーカーはオーディオアスリートのための製品ではなく、当時ミニコンポと呼ばれていた類の一般向けの製品カテゴリのもので、製品スペックはやや特殊であるがそれを含めて今では考えられないような低価格のものであった。当方の愛用しているウーファ、ドライバーもまたこの時代にSONYの威信を賭けて開発されたものであるが、バブルの終焉とともに撤退してしまった。特段の懐古も悲嘆もある訳ではないが、今日では日本製のスピーカーはオーディファイルにはあまり見向きされなくなっている現実もあって、やはり賑わいがあってこそ、その中から相応の製品が生まれてくるのだと思う。

さて、試聴の環境はJPLAY Dual PC構成でUSB DDC/DACからのアナログ出力をプリアンプ(C-290V)にて音量調節しての送り出し。このプリアンプは現状我が家ではあまり活躍の機会がないのが残念なのであるが、この構成であればSA-S1にとって充分な駆動力のあるものになっていると思う。

なお、下記の写真ではMid-Low用に使用しているFPSのスタンドを流用してその位置に設置してあるが、明らかにこれはベストなポジションではない。これより1m程度手前に出してフリースタンディング状態にしてあげることが必須である。静電型ツィータはダイポール(双方向)の指向性を持った後面開放のユニットなので、左右ならびに後ろに大きなスペースを空けてあげることが肝要なのだ。(バスレフポートも背面についている)

Mid-Low用のFPSのスタンドを現状は流用:
SONY SA-A1

さてそうなると、このSA-S1専用のスタンドがどうしても欲しくなる。特に静電型ツィータを耳の高さに合わせたスタンドを調達すればもっと高域の臨場感が楽しめそうである。


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