オーディオ日記 第39章 扉を叩け、開け(その3)2016年9月15日


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Dante Audio Networkのテストにおいて音楽を聴く幸せにしばし浸っているのであるが、そこに安穏として留まってはいられない。MPP,DSPのFIRによるデジチャン機能を最大限発揮させてその果ての音を聴いてみたくなってしまうのだ。当初は現状のデジチャンの設定をそのまま移植しての比較からスタートしたのであるが、デジチャンとしてのパフォーマンスの違いもあるので、現状設定に固執することではなく、この構成でのベストな音を探してみようと考えた。

現状の設定は以下通り:
Dante Test Setting

翻って、現状のデジチャン設定を鑑みると、多少の妥協の上の設定になっていることに気付かされる。それはユニットの形状の差から来ると思われる個性の違いがあって、それを吸収するためにあまりシャープな遮断特性(スロープ特性)とはせず、音をブレンドする方向で調整してきた。もちろん、急峻なスロープにおける良さというものも理解しているのであるが、当方のデジチャン(DF-55)ではIIRであるため位相の回転が大きくなってしまい、何となく居心地が悪くなってしまう。また、急峻なスロープ特性によって奏でられる音楽が「居眠りをしながらモーツアルト」という当方の指向とは異なるように感じていたのだ。一方で穏やかなスロープ特性では各ユニットの音が適度に交じり合ってくれるという良い点もあるのだが、音量を上げると時に混濁しシャープさに欠ける音にもなりかねない。

MPP,DSPではFIRによるデジチャンとしてのDSP機能なので、-48dB/octあるいは-96dB/octというスロープ特性もあまり位相回転などの影響を気にせずに設定できるということもあり、まずはこの点をチャレンジしてみようと考えてみた訳だ。

さて、これらのテストを行う環境であるが、JPLAY Dual PC構成ではなく、1台のPCでの運用を考えて、JRMCとMPP,DSP/Danteの環境とした。(この理由は後述する)

ではどのようなスロープ設定でテストしていくのか、ここがポイントであるが「-48dB/cot」に統一したスロープ特性でとにもかくにも実験開始してみることとした。DF-55でも-24dB/octの設定は相当テスト済みなので、選択肢は-48dB/octか-96dB/octとなるのであるが、まずは小手調べという意味で。各ユニットの受け持ち周波数帯域は聴感で微調整を図っていったのだが、180Hz、800Hz、4000KHzという無難なところに落ち着いた。すべて正相接続である。また、MPP,DSPの設定は各ユニットの周波数帯域は相互リンクせず、補正を使用しない、という一番シンプルなものにしている。

-48dB/oct設定:
Dante Test Setting

もうひとつ実験しなければならない項目がある。それはデジタル絞りの排除である。DF-55はデジチャン内部にアナログアッテネータを持っているので、これをオンにすることにより、(アンプ側との組み合わせにもよるが)デジタル絞りは一切使用しなくて済むのだ。MPP,DSPではこの機能はないので、出力レベルを合わせるために今までは単純にデジタル絞りを使ってきた。だが、これは従来から当方がこだわってきたやり方ではないので、これも排除してテストしてみたいのだ。幸いながら、当方のパワーアンプ(ロートルアンプ故にゲイン調整機能はないのだが)入力を絞ることができる。これを使ってMPP,DSP側はデジタル絞りによるマイナスレベルの設定はせずにパワーアンプ側で出力レベルを調整する方法である。

粗調整が一通り終わったところで、いよいよ本格試聴の開始。はっきりしているのはとても見通しが良くなること。あいまいさや混濁感は少なくとてもシャープ。音量はついつい上がる。JAZZやROCK系、ボーカルものなどはこの「-48dB/cot」設定の方がいいな~、と素直に感じる。さて、この設定で懸案と思われるクラシック系(特にモーツアルトのディベルティメントなど弦楽主体のもの)はどうだろうか。お、、、意外にいい。背景が静かというか、S/Nが上がったようにも感じる。やはりボリュームは上がる。音楽の雰囲気は悪くなくホールエコーのブレンド感や余韻も充分に合格点。心配していた中低域の充実感が削がれるような気配もあまりない(ゼロではない)。多少メリハリが効いた感じにはなるのだがこれは案外良い。いや予想以上に良いかも、、、、

MPP,DSPでも普通のデジチャンが持っている機能と同じように、複数の設定を保存しておき、簡単に呼び出すことができるので、周波数帯域の微妙な設定の差異も元々の設定との差異なども簡単に較べることができる。いろいろと聴き比べた結果としてはやはり今回の設定が当方にとって存外に好ましく、この状態でしばらくランニングでの音楽鑑賞(これが本来目的?)を継続してみようと思う。

次のステップとしては、高域側において、デジタルレベルで+5dB程度上昇させた設定(もちろんその分はパワーアンプ側で落とす)を試してみようと思う。これは現状のDF-55でも行っている方法なのだが、デジチャンではこのような使い方ができるメリットもあるのだ。もちろん、MPP,DSPというFIRのデジチャン機能をまだまだ完全には使いこなせている訳ではなく、このほかに計測、補正の機能もあるのでテストしてみたいのではあるが、今回はそこまでのトライは難しいかもしれない。

MPP,DSPの機能として、ちょっと不足と思われるのは、各チャンネル毎の左右のレベル調整が個別にできないこと。実用的には問題ないかもしれないが、最後の微調整と言う観点からは欲しい機能である。また、補正に関しては、全体での補正ではなく、各ユニット単位での補正ができるとマルチアンプユーザーにとってはとてもありがたいのだが、、、

JRMCによる単体PC構成の理由:
1.テストにおける簡便性、利便性などなどの観点。
(PC環境は本来なるべくシンプルな構成としたいという思いもあるため)
2.Danteにおいては176.4KHz/24bitへの一律変換が前提となるのであるが、これをMinim Server(ffmpeg)によるものと、JRMC(SoX)によるもので比較してみたいこと。
(SoXは優秀なサンプリングレート変換モジュールとして知られる)
3.MPP,DSP(Virtual Audio Calbe)を使用する場合はWASAPIインターフェース使用となり、JPLAY推奨のKernel Streamingはそもそも使用できないこと。

JRMCでのテスト所感:
1.サンプリングレート変換モジュール(SoX)はかなり優秀だと思う。
(不安定さ一切なし)
2.JRMCとMPP,DSPをスタートアップ登録しておけば、PCレベルでの操作介入は一切不要。
(これはとてもありがたい部分)
3.JREMOTE(リモコンアプリ)の反応のシャープさと使い勝手の良さは、JPLAY Streamer+Kinskyの比ではない。
4.Minim Serverの起動の遅さにイラつくことも無い。
(当方NASを使用しているため輪をかけて遅いのだ)
5.総論、特に使い勝手を含めるとJRMCとJPLAYとの比較ではJRMCに軍配。
(多少独善的だがあくまでもDanteを使う前提において)


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