オーディオ日記 第34章 ブレークスルー(その6) 2014年5月26日


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ELAC BS403 をサブスピーカーとして購入したことに端を発した4wayへのチャレンジも半年以上の時間が過ぎた。その間にFlat Panel Speakerという稀有なユニットや永らく希求していたAccutonのユニットを4wayマルチアンプシステムのミッドローユニットとして試すことができた。いろいろと経験したことを総括しつつ、3wayマルチアンプ構成でのリベンジを果たそうと思う。

ELAC BS403の150mmウーファーを使用した4wayであるが、実は周波数特性的には一番フラットになる。これはもともとこのスピーカーが持っている素直な周波数特性がそのまま現れるのであろうと思う。ただし、それが音楽全体の表現や音色という観点から見た時にベストなのか、というと必ずしもそうではない。BS403はあれこれと付け足すよりも単体ですっきりと音場感とJET-Vツィータの魅力的な音を楽しむ方が良い。

Flat Panel Speaker はクラッシク音楽をそのホールに居るような臨場感で聴くことができる。音色的にも一番素直で他のユニットとの音の溶け合いも申し分ない。おそらくこのユニットがモーツアルトを居眠りしながら天上気分で聴きたい、という当方の願いを一番叶えてくれると思う。なお、テストにおいてはエンクロージャー無しの裸ユニット状態であったので、僅かに低域方向、ウーファーとの繋がりに多少の課題があったが、これはきちんとしたエンクロージャを用意すればほぼ理想となるであろう。

Accuton のユニットは我が家でじっくりと試してみたいとかねがね思っていたユニットであるが、やはり予想通りのパフォーマンスを示してくれた。特に女性ボーカルにおける清楚かつチャーミングな声の再現には陶然とした夢見心地となってしまう。Flat Panel Speakerが自分にとっての目指す方向ではあると思うが、このユニットも「女性ボーカル専用」でもいいので持っていたいと思う。

総合的に4wayを判断するに、やはり一番のポイントは声を始めとする音楽の中心の帯域をミッドローユニットに受け持たせることになるので、音楽全体に対する影響力は必然的に大きくなるものと思う。さて、そのような試行を経て、そもそも3way構成での限界が見えたのか?ということとなると実はそうではなく、なかなか健闘している、と思われるのだ。特にしっとりとしたボーカルの表現力は捨てがたく、SONYのユニットの評価も決して変わることがない。このような経験の中から、3way構成のリベンジを果たすことができないか、改めて考えてみた。

そもそも3way構成での課題となっている事項は、クロスオーバー周波数の設定である。560Hzを従来より基本としてきたのであるが、これが声の帯域の重要なポイントとなってしまい、ここにクロスオーバーを持ってこざるを得ないウーファーの高域側再生能力とホーンの低域側再生能力のせめぎあいなのである。なお、スロープ特性は -24dB/OCTを使用して、各ユニットは正相接続としている。

そんな中で、audio funさん邸におけるオールエールユニット4wayマルチのDEQXによる 調整に立ち会う という大変貴重な機会を得た。その調整過程においてスロープ特性は基本-96dB/OCTである、ということをクリズラボ栗原さんよりお聞きして、これは試さねばなるまい、と考えていた。15インチウーファーの900~1KHzを越えるような帯域はどうしても分割振動となり音を汚す原因となるため、クロスオーバー周波数を800Hz辺りに持ってくるのは実はかなりしんどいのである。逆にホーンおよびホーンドライバーはこの辺りのクロスオーバーにした方が、ホーンのカットオフ周波数の関係もあって音の乱れが少なくなる。我が家の従来の設定では630Hzがこのウーファーとドライバーのクロスオーバーの上限と考えていたし、実際それ以上のクロスオーバー周波数にすると音のリアリティは増すのだが、ある種の汚れが感じられるようになりクリアーさが劣ってしまうのだ。これは-24dB/OCTのスロープ特性を使用していることと関係があるかもしれないと思い当たったのである。とにかくモノは試し、である。 -48dB/OCT、-96dB/OCTと順に試してみた。クロスオーバーも630Hz、710Hz、800Hzといろいろと動かしながら。今までは、あまり高次のスロープ特性とするとユニット間の音の溶け合いに問題が出ると思い、せいぜい -24dB/OCTまでしか使用してこなかったのだ。だが、ここはデジタルチャンデバのこの機能を活かしてみたい。710Hz、-96dB/OCTの設定において、音のバランス、鮮度感、クリアーさ、充実感というものが及第点となった。3way全体の周波数測定を行ってみたが、かなり素直である。ウーファー単体、ドライバー単体の周波数測定も行ってみたが、-96dB/OCTという設定はかなり効いているようだ。ウーファーからの分割振動と思えるようなレスポンスは全く計測されない。ホーンも40cmの円形ホーン+バッフルなので、もう少し低い周波数でも使えると思うが、低い方の周波数の音圧の乱れがない。

大変気を良くして、ついでに高域(ドライバーとリボン)側のクロスオーバー周波数とスロープ特性の見直しも行ってみた。PT-R9というリボンツィータは15KHzを越えるような領域はとても得意で音楽のエーテルのような雰囲気やエコー感の再現にはとても優れているのだが、我が家でのホーンとの組み合わせにおいては、PT-R9は5KHzから受け持たせることが可能なのだが、5K~8KHzという辺りはリボンの存在感が大きくなるような気がして使えなかった。このため、11.2~14KHz辺りが常用のクロスオーバー周波数となっていたのだが、この点も同様な観点から設定を見直してみた。6.3KHz、7.1KHz、8KHz、9KHz、10KHzにおいて-48dB/OCT、-96dB/OCTをそれぞれ試す。SONYのドライバーは公称24KHzまでカバーしているというのだが、やはりホーンの特性の影響を受け高域側は減衰するので、どこかで高域を足す必要があるのだ。さて、9KHz、-96dB/OCTという設定で相当良い感触を得た。8KHzか9KHzは微妙な点もあり優劣がつけ難いのだが、高次のスロープ特性を使用しているせいか、このクロスオーバー周波数でも「リボンの存在感」はほとんど感じなくて済む。ドライバーも4インチダイアフラムなので、この辺りにすると分割振動が抑えられるのであろうか、高域全体の見通しが良くなり、ホール感、エコー感がより明確に感じられるようになる。低域側の新しい設定との相乗効果かヌケが良く、とても気持ちの良いボーカルが聴けるのだ。

高次のスロープ特性については功罪があるはずなので、現時点ではこれがファイナルな3way構成の「新設定」とはならないかもしれないが、新しい可能性を大いに感じることが出来た。ユニットの持つ能力、美味しい周波数領域を高次のスロープ特性で「切り取る」ことが出来たようにも思う。音楽は周波数特性や歪率では表せないので改めて従来の設定と比較して聴きながら煮詰めて行きたいと思うが、この新設定の音は「3way構成でのリベンジ」には充分なったものと思う。3way構成であれば、我が家では現行の6chマスターボリュームで音量調整が可能なので、デジタルボリュームも不要というメリットもある。ただし、この先のプランが確定しない、という悩みもあるのだが、、、、


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