2001年10月

お〜い雲よ 2001.10.6.   ほっかりと

秋の空はずっとずっと天に向かって果てしなく、
そんな深い空の中にのんびりゆったり雲が行く。
幼い頃何度でも乗りたかった、
あのゆったり回るメリーゴーランドのような、
足の短い馬がゆく。
駿足とは程遠い、ゆっくりしたリズムで、少しずつ空を巡る。
いつしか私もその背に乗っかり、ゆっくりと空を巡る。
ずーっと行方を追ってたら、首が痛くなっちゃった。
いっときの昼の夢。
花手毬 2001.10.18.   鮮やかな

ハウスとハウスを繋ぐ通路ハウスがある。
その片隅に、いつしか根付いた花手毬。
外がもう秋の色でも、暖かいハウスでいつまでも咲き続け、
トマトの赤にも負けない鮮やかな真っ赤な花を、
何ヶ月も咲かせ続ける。
わたしはここにいつでもいるの。
そんな風にささやきながら、美しさに似合わないたくましさで、
いつまでも花をつける。
ハマギク 2001.10.20.  もう少し咲かせて

いつしか冷たい風が来て、
あんなにも咲き誇っていた純白のこの花も、
あちらこちらに最後の姿をとどめるだけ。
広い海岸の芝生も色あせてきて、
花たちも息をひそめる秋。
一面に咲き乱れている頃ももちろん美しいが、
わずかに残った花たちの、このいじらしさは何だろう。
どうか、少しでも長く生きられますように。
来年も変わらずにまた魅せてくれることを知っていても、
願わずにいられない――ハマギク。
犬と釣り人 2001.10.24.  たのもしきボディガード

秋の色した海に向かい、釣り人が糸を垂れる。
ひと気も途絶えた寂しい岩場で、
でも彼をしっかり見守る友がいる。
彼のそばを片時はなれず、
後ろを見、波を見、風を聞き、空を見る。
いっぱしの警護役。
そうして、彼はいつまでも安心して糸を垂れる。

砂の紋様 2001.10.27.  風の紋

夏にはここが小さな川で分けられていた。
いつのまにか川は消え、一面の砂の原。
波打ち際にはウミネコたちが静かに羽根を休め、
時折小さな魚を得意げにかざしている。
砂の上にはイヌかネコの小さな足跡。
わずかなサーファーの足跡。
ウミネコの白い羽。
小さな貝殻。
そして、風が作った限りない流線模様。
 
どこも手を抜くことなく、みっしりと続く、この不思議絵。


music by Sora Aonami