△ 不等辺ワークショップ第20回 (2003/12/21)


トップページ > ワークショップ > 第20回

<前一覧次>

写真写真  クリスマスも目前の日曜日。朝からすっきりと晴れています。気分よく稽古場に着いたのが午前11時。机をならべたりのれんをかけたりと会場の設営をして、床にモップをかけます。この時間を、私は「上等な時間だなぁ」といつも感じます。

 このワークショップには講師はいません。リーダーは私が務めますが、いわゆる「先生」ではありません。ここはすでにメソッドとして完成したなにかをお伝えする場ではありませんし、またなんらかのオーディションでもありません。
 トビラの「店主敬白」にも書いたとおり、ここでは演劇の自由研究をしているにすぎません。リーダーがアイデアをメニューの形で提示する。そこに参加者のアイデアが上乗せされる。そしてこの稽古場に愉快な表現時間が訪れて、愉快な表現空間になる。そんなことを私は期待しています。
 写真
写真 今日はどんなことが起こるのかしら。プランを考え尽くしたつもりでも、始まってしまえば勢いですね。「世界遺産の旅」とおなじです。どしゃぁあああっと勢いで流れる。だから旅もワークショップも気づいたら終わっている。始まってしまえばもう終わったようなものなんですね。それだから、始まるまでのこの時間を上等だなぁと私は感じるのかもしれません。

 やがてアシスタントの森宮なつめとスタッフの池田景が稽古場に現われます。参加者のみなさんも続々と来てくださいます。いまや覚悟を決めて、あとはやるだけ。ワークショップの旅がスタートするのは午後1時。それでは。行ってきます!
(アンケートの回答を「☆」で、私のコメントを「★」でご紹介しています)。

「ジャグリング」

写真写真
☆ ウォームアップ、コミュニケーションには最適かも。アタマの体操にもなりました。

 今回はボールを4種類。時節柄サンタクロースのぬいぐるみを用意して、これを第4のボールとしました。サンタクロースをパスするときは、相手に向かって「自分がほしいと思っているもの」を告白(?)します。
 みなさん。私はサンタさんではないので、残念ですがそのもの自体をプレゼントすることはできません。けれどお祈りしますよ。みなさんの望みがかないますように。パソコン、コート、ポータブルMD、バラの花束、健康、バイト、スタジオ、自信、給料、新しい携帯、ビデオカメラ、お金、自転車が、いつかみなさんの枕元に。赤いソックスの中に置かれていますことを。(健康と自信はソックスには入らないかも)。

「夜空ノムコウ」

写真写真
 夜空の向こうの星たちの営み。ひとりひとりが星になったと考えて、全員で星座を作りましょうというゲームです。前半は数字、アルファベット、漢字などの「星座」を作りました。「数字の1」座だとか「割り算の÷」座だとか、そんな架空の星座。
 参加者のみなさんに感想を聞くと、「数字の5」座と「アルファベットのS」座がむずかしかったそうです。どちらも基準となる1点を作りにくいのだそうですね。1点といえば、数字の星座でひとり小数点になってしまった人がいたのはおもしろかったです(自然数なのに…)。

☆ ことばや指による指図、ジェスチュアを禁止した方がいいかもしれませんね。各自の空間能力やアイコンタクトだけでやった方が緊迫感があっておもしろい場になると。直観ですが。
★ ええ、じつは迷いました。つぎは無音でやってみようかな。宇宙空間ですしね。ジェスチュアも、禁止するよりむしろ「浮遊している感じで」とか。だめかしら。
写真写真
 夜空の後半です。こんどは各自に自分にとっての「太陽」と「月」をひとりずつ決めてもらいます。そしてすべての星で同時に日蝕が起こったという設定で、天体を運行させます。自分と太陽のあいだにかならず月が位置する、ということですね。
 決めごと自体はシンプルです。しかし全員が自分の決めごとにしたがって動くので、全体としてひじょうに複雑な動きになりました。全員がハレー彗星のよう、というかお星様ってたいへんね。という感じがしました。
 日蝕のつぎは月蝕です。太陽と月のあいだに自分が位置します。こちらはお星様が凝縮して、星雲のよう、というかプラックホールのような状態になりました。お星様ってやっぱりたいへんね。あれから僕たちはなにかを信じてこれたかなぁ…。夜空の向こうには明日がもう待っている(?)。

「神様」

写真
☆ グレッグ・ベアの「ブラッドミュージック」てSFを彷彿とさせました。「個」が「全」に取りこまれていく感覚が。
☆ 視覚以外の感覚の集中によってカラダに感じるさまざまな発見や、心の動き(ある意味とてつもない不安からこの上ない幸せまでも!)を味わえるメニューになるのではと思いました。
写真
 これは以前にもおこなっているゲームです。そのときはまず「神様」を、つぎに「ラスカル」をさがしましたね。今回はラスカルではなく、マルコ少年がお母さんをさがします。イタリアのジェノバからアルゼンチンのトゥクマンまで、母をたずねて三千里。

写真 ただ「ラスカル」と「お母さん」とでは、ゲームのインパクトは大きく変わるはずです。安易に目先を変えるだけの目的でそれをやってしまうのは危険ですね。母をさがし求めるうち、感情移入の度合いが強まって、感情をコントロールできない状態に陥るおそれは無視できません。
 1回目で「神様」をさがし、2回目では「お母さん」をさがす。そのちがいによる、なんらかの感情の変化は、しかしぜひ意識してほしいことではあります。たとえば参加者のみなさんの感想には、「お母さん」をさがすときは自然に両手がすこし高くなっていた気がする(子供はカラダが小さいから)、というものがありました。危険水域には入らず、しかしゆたかな体験をする。むずかしいのはそのさじ加減ですね。

 思えばゲーム中にボケたり、ツッコミを入れたり、ボヤいたり、私は笑わせようと必死だった気もします。あまり感情が入れこまないようにですね。とここまで書いて、私は中島みゆきの「泣かないで、アマテラス」を思い出しました。アメノウズメノミコト? だっけ? 天岩戸のまえで踊った女性ですよね。前のゲームで「太陽」が出てきたのと、この「神様」というタイトルからの連想かしら。あと「母」もそうか。
 私は中島みゆきの手を握ったことがあるという話はさておき。笑うことですべてがOK、ではないですね。「砂糖をまぜて毒を飲ませている」ことにならないように。肝に銘じて、リーダーは細心の注意を払います。安全がなによりです。

「ペットバトル」

写真
 元気に体育! 今回は宮城県、神奈川県、岡山県、福岡県の代表チームが、県民の大きな期待を背に(?)チャンピオン・シップを争いました。いつになく作戦タイムに時間をかけ、すべての試合が1点差の接戦になるなど、大会として内容が充実していたかなと思います。優勝は宮城県代表チームでした。
写真
☆ ペットバトル優勝はかなりうれしかったです。
★ おめでとうございます。宮城県代表はなんだかサッカーのブラジル代表のようなチームでした。
☆ やはり途中、長いなと思った時間帯がありました。ペットバトルかなぁ。
★ じつは全体的に長かったのです。冬なので序盤はカラダを温めるゲームに重点を置いたのですが…。

 見ていて「相手のカラダにはさわってはいけない」というルールが、徹底しきれないかなと感じもしました。今年4月のワークショップでハシモトケンさんがなさった「バトル・ロワイアル」のように、利き腕をホールドしてプレイするというルールをこんど試してみようと思います。どうでしょう。

「ペンキ屋」

写真写真
☆ ペンキ屋はやるたびにおもしろいなぁと思います。
☆ ペンキ屋は奥が深い!! いろいろと応用がきくね!
☆ ペンキぬりがいろいろとためになると感じました。
☆ ペンキ屋はアタマを使っておもしろかったです。
☆ 五感をフルに使って相手(仲間たち)の息や間、全体の空気を感じながらできるベストなメニューなのではと思いました。
☆ いちばんコミュニケーションをとれたのがペンキ屋だったように思えます。相手を受け入れるばかりでなく、拒否することでより親密な関係ができることもあるんだなぁと思いました。
★ ええ、それはかなり充実した関係ですね。見ていてびっくりしました。

 おなじみの「ペンキ屋」。今回は4部屋を塗りました。会話にまとまりがあり、芝居になっていた感が強いです。突飛なセリフや、苦し紛れのようなセリフもなく、各人のキャラクターが透けて見えて、じつに良かったです。たとえば4部屋目がいきなり「…愛ってなんなんでしょうね」というセリフから始まったのです。この導入が浮いていなかった! それがすばらしい。それまでの3部屋を受けて、全体としてオムニバス芝居のようでした。

「世界遺産の旅」

写真写真
☆ 世界遺産はもっともっと表現を身につけねばと考えさせられました。
☆ 世界遺産は一方通行というのか…、うまく輪に入れなかったですね。
☆ 世界遺産の旅のまえにもうすこし時間がほしい。
☆ みんなと旅をしていくうちになんとなく世界に入りこんでいったって感じです。

 ハッピーニュウイヤァー!!の掛け声とともに、古い駅舎、夢工場、歌絵を立体に、青木ヶ原樹海自然公園、富士山頂、池袋西武百貨店物流用通路、小っちゃいおっさんの作る増殖していく家、昭和という時代のアパート、サンタ・クルス島の海辺、の9ヶ所を一気にツアーしました。またそれ以外にもニューヨークの階段、きよみずの舞台がレポートされています。
 これで通算して77ヶ所を旅したことになるんですね。浜崎あゆみの「年越しカウント・ダウン」を77回も聴いたことになるんだなぁ。よし、100まであと23ヶ所だ。あと23年だ。

 私にとってはこれが紛れもないメイン・ゲーム。ですが最近は「ペンキ屋」の印象ばかりが強いようで、世界遺産は影がうすいのです…。「ペンキ屋」で体験したコミュニケーションの感覚が、うまく世界遺産にももちこまれるような工夫がきっともっと必要なんですね。考えます。

「アフタートーク」

写真写真
☆ 初めての参加ですこし不安を感じていましたが、楽しく参加できました。
☆ プログラムがもうちょっと柔軟だといいな。むずかしいとは思いますが。
☆ いろいろな年代の方がいて、交流ができてよかったです。
☆ 心地よい疲労度です。ありがとうございました。
★ こちらこそ、ご参加くださってありがとうございます。お疲れさまでした。
☆ やや写真、撮りすぎでは?
★ おおお、ごめんなさい。私の指示です。営業的には写真たくさん載せたいのです…。

 最後まで読んでくださってありがとうございます。いつになく反省的なレポートになりました。
 今回なにより私がうれしかったのは、うちあげの席で参加者のみなさんからたくさんたくさん、ワークショップについての意見や感想、質問、提案をいただいたことです。ありがとうございます。それこそ素敵なクリスマス・プレゼントです。

 今回は劇団桃唄309の森宮なつめさんにアシスタントをお願いしました。お忙しいなかお時間を作っていただいて感謝しています。森宮さんの出演なさる公演が来年4月に予定されています。よろしければ劇場に足をお運びください。詳細はこちらをご覧ください。
写真
 集合写真、一応これクリスマス・ツリーのつもりなんですが。見えますか?

 みなさん、ぜひハッピーなニュウイヤーをお迎えください。来年以降もいっそう愉快なワークショップの旅を企画します。ご期待ください。ありがとうございました。はやしなるひこ
写真

 早いもので今年も後わずか…ワークショップもたくさんの人に参加して頂き通算20回にもなりました。
 最近では参加者が多いので私はスタッフ参加になる事が続いているのでワークショップ的には「嬉しい悲鳴」で役者個人としては「悔しい思い」をしています(笑)。外部リーダーやアシスタントも充実し、参加者同士のコミュニケーションもワークショップの内外でも広がりつつあるし、「新しい出会い」や「演劇についての発見」などに毎回新鮮な経験をさせてもらえるのでとても嬉しいです。
今年もワークショップに関わっていただいた皆様に「感謝」です。ありがとうございました。来年も私たちスタッフ側もイロイロ勉強して「更なる飛躍?!」を出来るように努力してまいりますので今後ともよろしくお願いします。
 ワークショップ管理部 池田景

<前一覧次>


トップページ > ワークショップ > 第20回