△ 不等辺ワークショップ第17回 (2003/04/20)


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 写真 4月20日(日)に行われました第17回ワークショップは僕ハシモトがリーダーを勤めさせていただきました。4月下旬とも思えぬ寒々しいお天気でしたけれども12名もの方にお集まりいただいてありがとうでした。で、レポートです。てか「解説」みたいなモンですけれど。
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 「遊びながら基礎訓練」て題目でですね、「導火線ゲーム」「キャッチボール」「サーティ」「目隠し挨拶」「背中合わせ」「バトルロワイアル」「デタラメ語でプリーズ」「丸木橋バトル」て云う8つのメニュー、てかゲームを用意しまして。

 ええと。まずですね。全員を知ってる方は1人もいらっしゃらない、てコトでしたのでこりゃ「自己紹介」をしなきゃでしょう。てってメニューの前に。云っていただくコトは「お名前」「(あれば)所属してる団体名」「(コレもあればですけれど)役者として一番大切だと思ってるコト」の3つ(3つ目は単純に僕が聞いてみたかっただけですけれど)。
 円陣を組んで全員が立った状態からスタート。云い終わったらまだ自己紹介してない「誰か」しかも「出来るだけ自分の知らない人」を指名するシステム。で指名したら座る。このシステムはこの場での思いつきでしたけれど面白かったと思います。て自画自賛。「指名したら座る」てのを止めて、「そのまま立ってる」つまり「誰が自己紹介済みで誰がそうでないか記憶に頼らないと判らない」て形にしたらもっと混乱して良かったかもしれませんがこの日は止めときました。はは。
 3つ目の質問はホントに10人役者が居れば10個の答えが返って来ます。面白いですよ。演技の正解はひとつではないんです。多分。きっと。

 で。ゲームへ。
 

「導火線ゲーム」

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はい。説明します。床にスズランテープとビニルテープでジグザグなラインが1本引いてあります。2チームに分かれてラインの両端に並びます。用意ドンで各チーム1人づつ同時にスタート。ラインを踏み外さないように進んでゆくと当然途中でかち合います。そこで「アッチ向いてホイ」。勝ったらそのまま進軍。負けたらラインから降りて次のチームメンバーがスタート。双方の端から2mくらいまでが各チームの「陣地」でそこまで踏み込まれたら負け。
 陣地を交代して2回戦を行いまして1勝づつでドロー。最初負けたチームが2回戦で「背の小さい順に並んで段々威圧感を高めてゆく」てパースペクティヴな作戦を導入してまして興味深かったですね。そのせいで勝てたのかどうかは不明ですが。

 このゲームが終わったアト、全員で床のラインをはがして四角い「エリア」を作りました。
 

「キャッチボール」

写真 僕が企画するワークショップでは必ずと云っていいくらい実施する定番メニューです。
 空想のボールでキャッチボールをする。それだけのモノです。でもマイムではありませんので投げたり受け止めたりする動作が「どう見えるか」は問題じゃありません。それよりは「投げる」「受け止める」を丁寧に。誰に投げるのかをしっかりと決めて、相手もそれを了解したのを確認してから投げる。ちゃんと相手に届くように投げる。それをしっかりと受け止める。このやり取りが重要なのです。
写真  まず全員中央に集まってもらって、全員でひとつのボールを持ってもらいました。そのボールについての「印象」を全員で統一してもらいます。大きさは?重さは?硬さは?表面の感じは?コトバは使いません。統一できたら誰か1人にそれを預けて大きな円陣に広がり、キャッチボール開始です。
 最初は「はい」などのコトバに乗せて、慣れて来たらボールのみで。
 それから「投げる人がボールを自由に変えていい」コトにします。「ピンポン玉」でも「大玉送りの玉」でも「卵」でも「スライム」でも「ダーツ」でも「生きたニワトリ」でも何でも可です。これも「何を投げたか?」が正確に伝わる必要はありません。自分が投げたモノと違うモノを相手が受け取った場合、お互いに「あれ?」て感覚が多分あります。それを感じてくださればオッケ。です。
 今度はボールを投げる動作を止めてコトバのみで。ただ「投げる」「受け止める」は今まで以上に意識を。ココまで来るともぉコレは「フツウの会話」です。ただ「やり取り」にかける意識は日常より高いレベルになってるハズです。この状態を作るのがこのメニューの一応の目標。
 そして、これは始めてやる人は必ず戸惑うですけれど、目をつぶってコトバだけでトライ。投げる間だけ対象を捉えるために目を開けて。ムチャに聞こえるかもしれないですけれど「自分に投げられてる」てのは意外と判るんですよ。日常でもありますよね。後ろから呼びかけられても「自分に呼びかけてる」てのが判ったりとか。同じです。コツは受ける方。「自分かな?」て思ったら躊躇しない。ガマンしない。とにかく動くコト。
 円陣を崩して全員ランダムに歩き回りながらやってもらったりもしました。ボールを2つに増やしてみました。ココまで来るともうちゃんとした「シーン」になってましたよ。「セリフ」が「ボール」になってるだけでちゃんとした「会話」になっているのです。そのまま舞台に乗せてもいいくらい。
 そして最後にボールをひとつに戻して真ん中に集まって、みんなで作ったボールを空中に投げ上げてこの空間に還してあげて終了。
 

「サーティ」

 写真 椅子を持って来て円陣に座ります。「1」から「30」まで順番にカウントしてゆく。それだけのゲームです。どの数字を誰が云っても構いません。同じヒトが2つ「5、6」とか続けて云ってもいいです。ルールは1つだけ。「同じ数字を2人以上が云ったらアウト。1からやり直し」。
 コレが意外と難しくてですね、でも面白い。続けて行くとまず「お互いの呼吸の探り合い」みたいになります。これはまぁアタリマエなんですけれど徐々にそれが掴めて来て最初10くらいでつっかっかってたのが20突破するようになる辺りからですね、空気が変わってくるんですよ。こう、円陣の中の空気が熱を持って来ると云うか、何て云うか「ひとつ」になって来るんですよ。空気が。きゅううう、って。数字を順番に云ってるだけなのにすごい「会話」ぽくなって来る、て云うか。
 アトまぁ今回は、僕としては30到達した瞬間の「歓喜の爆発」がよかったです。子供みたいに喜んでましたね皆さん。見てる僕まで嬉しかったです。
 

「目隠し挨拶」

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これもよくやるメニューです。エリア内にバラバラに立ってもらって全員目をつぶってもらいます。コトバは一切発しては行けません。そのまま手探りでエリア内を歩きます。「観察者」である僕は(このゲームは必ず観察者が必要です。何故なら危ないからです)エリアから出ていきそうなヒトが居たらエリア内に戻しつつ、1対1のペアを組んで行きます。 各自、対面した相手の首から上だけを手で探ります。制限時間1分。男か女か?髪の長さは?背の高さは?などなどの情報から、それが誰だか「推測」します。そのアト離れてまた歩き出します。ホントはこれを何回も繰り返すんですがこの日は時間もなかったんで一回こっきりにしまして立ち位置も方向もみんなバラバラになってから目を開けて、いっせいのせ!で「今の相方」を指で差します。全員一斉に。当たり外れは重要ではありません。「どうしてそう思ったか?」が大切。そんなゲームです。
 この日はふと思いついて2回目、探る場所を「首から上」ではなく「手」にしてみました。お互い握手をした状況で掌からのデータのみを判断材料にする。これも面白かったですよ。そのままではまず当たらないんですけれど目を開けてから「全員の手を並べて目で観察する」時間を設けると割と当たるんですよ。手だけでも。
 

「背中合わせ」

写真  ペアを組んで背中合わせで立ちます。これもコトバは禁止です。お互い寄り掛かったまま座ったり立ったりします。次に背中で「ケンカ」をしてもらいます。そしたら次は背中で仲直り。そしたら歩き回ります。どちらか一方がリードするコトなく、相手の動きを背中で感じて動く。「自分がどう動きたいか?」ではなく「相手がどう動きたがってるのか?」を考えるとうまく行きます。現実世界と同じく。
  他のペアと接触したら背中を滑り合わせてペアを交換します。何か、ずっとやってるとこう云うイキモノの集団に見えてきます。2人で1個の生物に。生殖活動の代わりに半身を交換するそんな生物。
 写真 面白かったんで予定にはありませんでしたが更に発展させて見ました。3人で背中を突き合わせた三角形の生物になってもらいました。今度は反転して3人づつで「内側を向いた円陣」になってもらい、組体操の要領で手を繋いだままお互い体重を支えあって「花」みたいに広がってもらいました。それからそれを6人で。最後に全員、12人で。これは出来ないだろうな、て思ってたら出来ましたね。一瞬だけ。ブラボゥでした。

  10分間の休憩。用意してくださった菓子を遠慮なく。一口サイズのゼリーなんてホント久し振りに食べましたよ。大人になったら食べなくなるモノってたくさんありますよね。そして後半へ。
 

「バトルロワイアル」

 写真 全員エリア内に。各自自分の利き手を背中に廻して「封印」します。で今日はみんなに「殺し合い」をしてもらいます。バトルロワイアル!武器は封印されてない方の手だけ。殺しの手段は「背中に触る」。触られた人は死んでエリア外に出ます。最後の一人になるまで続けます。て云うあるイミ非常に殺伐としたゲーム。
 攻防のバランスが大事です。攻めるだけ、守るだけ、に注意が偏ってるヒトはあっさり死んでしまいます。予想外に善戦したヒトにですね「ホントは利き手、逆なんじゃないか?」疑惑が浮上してましたけれどまぁ多分利き手はあまり関係ないですそれよりもバランス。
 この日のゲームは人数多かったせいもあって最初にガーッと大量に死んでしまい、あっと云う間に5人くらいになっちゃったのが予想外でした。のでもう少し、てってこっからは考えながら予定になかったコトをガンガンやってみたんですけれど、2回目は6人づつに分かれてもらいまして、でその6人が2人になるまで殺しあってもらい、生き残り4人で決勝、てカタチにしたですけれど「じゃあその6人で闘って」て云った途端にスゴイ動揺が起きたのが興味深かったです。どうやら「6人チーム同士のチームバトル」だと思ってたらしく。つまり「命を預けあう同志」が瞬時にして「倒すべき敵」に変わった状況。このゲームが一番緊迫感が高かったです。
 じゃあチーム戦もやってみようか、てって3人づつのチームを4つ作ってチームバトル。それから最後に全員戦に戻って、ただし事前に「誰をまずつぶそう」とか「取りあえず人数が減るまでは共闘しよう」とか云う根回しタイムを設けて。当然「裏切り」ありで。あっさり裏切ってイキナリ味方の背中を刺してたヒトとか、居ましたね。はは。
 

「デタラメ語でプリーズ」

 写真 二人のペアになります。「座る」「コッチに来る」「後ろを向く」の中からひとつだけ「相手にして欲しい動作」をこっそり選びます。向かい合って送り手と受け手を決め、送り手はそれを受け手に伝えるんですが既存の言語は使ってはいけません。動作もなし。使えるのは「デタラメ語」だけ。「あがらがあ」とか「へめれむ」とか。チャンスは5回だけ。終わったら送り手と受けてを交代して。
 これはですね。意外と「伝わる」つまり「判る」モノなんですよ。この日も殆どのペアが3回以内で伝えられてました。コツは「衝動」をちゃんと作ること。それには「何故それをして欲しいのか」を決めるといい。「座る」だったら「後ろからボールが飛んで来る!よけて!」とか。アト受け手は、これは「キャッチボール」のトキにも云いましたけれど例えば「後ろを向いて欲しいのかな?」て思ったら躊躇しない。とにかく動く。
 で、これが意外とすんなり行ったんで発作的にもっと高級なメニューを試してみました。6人づつのチームに分かれます。行動のお題を今度は「真ん中に座る」「窓から外を見る」「この部屋を出て行く」の3つにし、1チームづつエリアを歩きながら「何をするか」をチーム内で統一するんですが、ジェスチャア禁止はそのままで、今度は「音声」も禁止。使えるのは「目を合わせる」て動作だけ。て来るとこれはもう「超能力」みたいに思えるんですけれど呆れたコトにこれでも「伝わる」んですよ。全員の統一はサスガに難しいですけれどある程度は揃うんです。
 僕たちは普段コミュニケイションを言語に頼ってます。その言語を封印することで「コトバ以外の部分で伝わるコト」が浮き出てくる。これを体感できた瞬間は感動しますよ。少なくとも僕は感動しました。ええ。
 

「丸木橋バトル」

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 これは知ってた人が多かったですね。有名なゲームなのでしょう。多分。そして知ってる人は「うわあ」て顔してましたね。はは。苦手なヒトが多いようです。
場所は川の両岸です。切り立った断崖です。遥か下に川が流れてるのが見えます。モチロン落ちたら命がありません。丸木橋が1本だけ掛かってます。さて、皆さんには川の両岸に分かれてもらい、各自「対岸に渡らなきゃいけない理由」を作ります。両岸から一人づつスタートします。真ん中でかち合いますよね。相手を押し切って橋を渡り切った方の勝ちです。てバトル。
 写真コツはですね「渡る理由が具体的で切実な方が勝つ傾向がある」てコトですね。この日は「即興」を普段やってらっしゃる方がメンバーに入ってまして、彼らはサスガに強かったですね。てか相手を受けて吸収して、その上で「自分の流れ」にするのに長けている、て云うか。
 個人的には「殺人鬼が追って来る」て設定を「相手が自分の肉親で、しかも気が違ってて妄想を抱いて騒いでる」て設定で被せてしまった、てのに軍配を挙げたいと思います。アレはその場でぱっと持ち出してきたように見えたんですけれど事前に考えてたんでしょうかね?

 予定ではココで終わりだったですけれど見てるウチに何となく「バトルで終わるのは何だか、アレだな」て思って来ちゃったんで即興で「シメのメニュー」を作ってみました。「キャッチボール」の変形。
写真 空想のボールを、投げるのではなく手渡しで廻してゆきます。ルールやコツは「キャッチボール」と一緒。相手を決めて、お互い確認が取れてから渡す。「渡す」「受け取る」を丁寧に。
 そしたらその「ボール」を2つに分けます。で、それぞれを廻してゆきます。更に分裂させます。4つ。更に分裂して8つ。そしたら今度は「持ってるヒト同士はボールを交換、持ってないヒトにぶつかったら2つに分けて自分は持ったまま相手にもあげる」て過程を経て「全員がボールを持ってる状況」を作ります。このまましばし「交換会」を続け。
 そろそろ終わりましょう。全員がボールを持ったまま真ん中に集まります。全員のボールをひとつにまとめます。それをしばらく愛しんでから、コトバを込めてこの空間に還してあげましょう。「おつかれさまでした」。
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 てって全メニューをつつがなく終了。アフタートークとか恒例のMVP発表とか集合写真撮影とかして、終了しました。お疲れ様でした。一緒に遊んで頂いてありがとうございました。個人的にはとても楽しかったしとてもパワーを頂きましたよ。皆さんから。いい集団だったと思います。クリエイティブで。

 ちなみにBGMは「自己紹介」が準備時間からずっと掛かってたラブサイケデリコ。「導火線ゲーム」がトレインスポッティングのサントラから「LUST FOR LIFE(IGGY POP)」。「バトルロワイアル」が「SING SING SING(ベニー・グッドマンオーケストラ)」。アトはザバダックのCD「遠い音楽」をかけっぱなし。ま、音があるとマズいメニュー(「目隠し挨拶」とか)では切ってましたけれど。

★ハシモトWSアンケートより。


写真  ワークショップ管理部のです。今回は特別企画の第2弾として、劇団桃唄309のハシモトケンさん(漢字でもいいですか、橋本さん?)をリーダーとしてお招きしました。
 写真 橋本さんの普段のご活動については、ここでは劇団の公式サイト橋本さんの個人サイトをご紹介させていただくことで良しとさせて(いただいていいかしら、橋本さん?)いただきます。
 この日を私は前から楽しみにしていて、当日はただただ楽しくて、終わった後も余韻が残りました。そんなドップラー効果のような(???)ワークショップが実施できたことを、橋本さんとご参加くださったみなさんに感謝します。ありがとうございました。

 いや。もう。ね。書くことがないですね。あまりにもいい一日で。

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