△ 不等辺ワークショップ第21回 (2004/02/22)


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写真  ええと。2月22日に行われました21回目ですか?のワークショップのリーダーを勤めさせていただきましたハシモトです。リーダーは昨年4月の第17回に引き続き2回目。踏襲したメニュウあり、新しいモノあり、て感じで10名の方々と一緒に遊んでみました。2月とは思えない暖かい一日でした天候にも恵まれまして。てっても室内なんですけれど。はは。
 当日、僕ちょっとカゼ気味でして頭痛とかしてたんでそれがちょっと残念でしたけれどでも楽しかったです。以下内容の説明なんかを。
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 まずお互い知らないヒトも多いので自己紹介をしてもらいました。「お名前」「(あれば)所属団体」そして「一番最初に買った音楽のアーティスト名とアルバム名」を一人一人発表。ま3番目は発作的に思いついたシャレの質問ですけれど一応目的はありまして、こう云う「普段ヒトに話さない」しかも「自分でも普段あまり意識しない」そして「ちょこっとだけ気恥ずかしい」コトを話してもらうコトで何となくこう、胸襟を開いてもらうと云うかお互いに近づけるんじゃないかな?て思ったですよ。その人のルーツて云うか、何となく根っこの部分が想像できますしね。

【準備】

写真  まぁアチコチでやられてるメニュウですけれどまず2人1組になります。体格の似た人同士がいいです。
 お互いを順番に背中に乗せあいます。乗っている方は完全に脱力して相方に身を委ねます。支えてる方は落とさないようにバランスを取りながらゆらゆら揺らしてやります。
 次に直立状態から背中側にすとーんと倒れて相方に支えてもらう。これも相方に身の安全を委ねて安心して倒れるコトが肝要。
 そして最後に片方が目をつぶり、相方がその手をとって部屋中引きまわします。慣れて来たら歩きながら自分が手を引いてる「目をつぶった相方」を他の人のそれとどんどん交換してゆきます。

 このメニュウの目的は、まぁ説明するまでもないと思いますけれど「相手を信頼すること」です。演技は1人で行うモノじゃありません。共演者との共振の上に始めて成り立つモノです(と、僕は思います)。そしてそのためには何よりもまず「一緒に舞台に立つ共演者」を「信頼」しなくてはなりません。その、一番ベースになる部分を構築・確認するためのメニュウです。
 のっけからこのメニュウ、てのはちょっと乱暴だったかも知れません。ちょっとゲームでもして「場」の空気をちゃんと作ってからの方がよかったかも。でも皆さんスンナリと出来てましたね。素晴らしいです。

【キャッチボール】

 説明は第17回を参照していただければ幸いです。

写真  最初に全員で作った「空想のボール」が大きかったのがこのチームの特徴。コレは「いい」「悪い」ではなく面白いな、と。
 そのボールを「誰か1人に預けて」て云ったトキ、ホントは無言でやり取りしつつ全体でコンセンサスを取りながらお互い了解の上で平和的に「預ける」んですけれど、この日は多くの人がさっさとボールから手を離して円陣に広がってってしまい、結果「逃げ遅れた人」に委ねられる形になっちゃいました。これは僕の説明不足です。反省。
 アト「目をつぶって声だけでキャッチボール」はカナリ戸惑いが生じました。受ける側が躊躇と云うか「構えて」しまうと逆にうまく行かなくなるのがこのテのメニュウの特徴です。声をかけられても「違うかも」「私じゃないかも」とブレーキがかかってしまう。どうしても。でもこのブレーキは、演技者には邪魔者以外の何者でもなくて「自分かな?」て思ったらとにかく行動。それが大事。なんですけれど慣れない人にはそれがなかなかうまく行かない。
 まぁでもそれ以外の部分はおおむねいい感じでしたよ。楽しむコトが何より大事。何でもね。

【目隠し挨拶】

 これもまぁ第17回を参照してください。
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 コレは「お互いの障壁を取っ払う訓練」であると同時に「印象を掴む訓練」でもあります。さっきの「目をつぶってキャッチボール」では情報を「聴覚」だけに限定して相手から伝わって来るモノを探りましたが今度は「触覚」限定です。
 この日はある程度探ったら再び歩き出しまた別の人を探る、て段階を経て最後に目を開けてもらい「誰と触れ合ったか」てお題でフリーに確認してもらったですけれど、予想以上に盛り上がってましたね。イヤいいコトです。とっても。

【背中合わせ】

写真  これも第17回参照で。
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 コレはお互いの「力のかけ方」の調整がモノを云います。体格の差は、実はあまり影響しません。「相方を感じる」能力が重要。
 ですけれど特に何も云うコトはないですね。とてもスンナリ行ったと思います。最後に「10人で円陣を組んでバランスを取る」のも一瞬でしたけれど成功しましたし。いいですね。こう云う「全員でやるコト」がうまく行くと。

【アフリカ・リズム】

写真 写真  説明しましょう。これは10数年前にウチの劇団でワークショップを運営してたトキに出たゲームです。
 トランプを配り、マークごとにリズムを振って行きます。
 振られたリズムを、自分の身体を使って打ちます。手拍子でも身体の何処かを叩くでも足踏みでも声でもオッケー。
 「同じリズムを刻んでる仲間」を探して集まり、グループ内のテンポを統一します。
 全員でテンポを合わせて「統一した音楽」にします。バリのケチャのように。あるいはアフリカのタムタムのように。なったら交じり合って交流。テンポを変えてみる。最後に極限まで早くしてって拍手になっちゃっておしまい。

写真 写真  そんなメニュウでしたんですけれどまず済みません。僕トランプを配り間違えまして「リズム1」が大人数、反対に「リズム2」はたった一人、てバランスになっちゃいました。失敗失敗。でそれはその場で振り分け直して再開。
 「言語を用いずに交流を行い、全体でひとつの空気を作り上げる」のが目的です。
予想以上に面白かったですよ。ウチの劇団で試したトキはこんな刺激的な時間にはならなかった。コツは「バカになるコト」です。大きな動き、そして口を開けた笑顔。
確かおおたか静流だったと思います、がライブで云ってました「ドラムはバカでも出来るけどパーカスはバカじゃなきゃ出来ない」。ちなみにこの場合の「バカ」は誉めコトバね。
 ホントにその通りだと思います。そして役者もそう。アタマばっか働いてる状態じゃこの「雰囲気」は絶対作り出せません。ブラボゥ。
 終わり方は元々決めてなかったんでこの場で即興で考えたですけれどよかったんでこれをスタンダードにしようかな。

【棒の交流】

写真 写真  2人1組になります。向かい合って座り、間に棒を1本置きます。
 お互いの人差し指1本をその棒の両端に当て、支えあいながら持ち上げて保持します。
 そのままいろいろ動いてみます。ケンカとかもしてみます。棒を通じて、指だけで。
 最後に円陣になり、間に棒を置き、同じように全員が棒で接続されたサークルになります。いろいろ動いてみます。

 そんなメニュウです。とあるワークショップで教えて頂いたメニュウをアレンジしました。さっきの「背中合わせ」での交流と似てますがコッチの方が遥かに難しく、また楽しいと思います。見ててもエキサイティングですよ。棒の動きが。ヒトによっては自然にそうしてましたけれど、このメニュウと全く関係ない会話を交わしながらやるとまた違った面白さが展開する気がします。ケッコウ深いメニュウでした。

【デタラメ語でプリーズ】


写真  これも方法や留意点は第17回を参照して下さい。

 このテのメニュウは得手不得手がケッコウ如実に出ますね。特に受ける方。「目をつぶったキャッチボール」と同じく「違うかも」て思って行動にブレーキをかけてしまう人が意外と多くて。
 相手から受けた印象を捉え、それを自分の行動の基点にする。日常ではごく自然に行われてるコトです。それが意識的に行おうとすると途端に上手く行かなくなる。
 「言語」の問題も大きいです。「言語を封じる」コトでコトバ以外の部分、表情とか身体の緊張具合とか、から伝わる情報に鋭敏になる。これがこのメニュウの目的です。実際やってみると僕たちが普段如何に言語に頼ってるかよく判りますよ。

【みんなで一緒に】


写真 写真  第17回「デタラメ語でプリーズ」で最後にちょこっと実験的にやってみたメニュウの完全版です。
 トランプを配り、マークごとに「自分がする行動」を振ります。お題は「真ん中に集まって座る」「窓から外を見る」「この部屋を出て行く」の3つを設定。
 エリアをぐるぐる歩きながら「自分と同じ行動を振られた仲間」を探します。ジェスチャア禁止、「音声」も禁止。していいのは「目を合わせる」だけです。
 観察者(この場合はリーダーの僕です)の合図で一斉にその行動をとってもらいます。仲間だと思ったのに違ったり、逆に意外な人間が仲間だったりしますけれど、その「当たり外れ」よりも、この瞬間のお互いの反応を楽しんでもらった方がいいです。
 ココまでが第一段階。次に、先ほどのお題3つから今度は自由意志で各自1つをセレクトしてもらいます。
 またエリアを歩きながら、今度は「何をするか」を全体で統一してもらいます。目を合わせるだけで。
 観察者の合図で、一斉にその行動を。

 コトバもジェスチャアも用いずに目を見るだけで「心を読む」。もう超能力の領域です。けれど非言語領域で伝わる情報があると云うコト、それは鋭敏であればキャッチできると云うコト、を考えると決して不可能ではありません。事実、割と判るモノなんですよ。やってみると。コツは「判らないよ」て思わない、ハナから諦めないコトでしょうか?
 仲間だと思った。それが正しかった。その瞬間の喜びがこの日のメンバーからはスゴク伝わって来て面白かったです。

【棒の交流2】

写真  さっきの「棒の交流」を、2人一組で会話しながらやってみました。会話は僕が10数年前にテキトーに書いた短いシーンを引っ張り出して来て。
写真  「2人の関係」だけを簡単に設定してもらい、順番に舞台でやってもらい、他の組はそれを鑑賞。終わったアト「観ててどんな印象を受けたか?」を皆に自由にコメントしてもらう。そんな感じにしてみました。これも半ば即興で組んでったメニュウですけれど面白いモノになったと思います。

 セリフを与えられると途端に「コトバ」に縛られてしまう。セリフを云うコトに集中してしまう。これは役者のサガです。でも「棒の交流」を導入し、棒の動きをメインに考えてもらうコトで「セリフを喋ってる自分」に集中せず、「相手」とのやり取りとして考えられたのではないか?そんな気がします。
 棒の動きがね、やっぱ各チーム各様なんですよ。妙になまめかしかったりね。で設定聞いてみると全然色気抜きだったりして。この食い違いもまた面白いです。自分の考えてる「設定」と外から見た「印象」は必ずしもイコールではありません。それを調整するのはきっと演出家の仕事。

【ラスト】

 コレも第17回を参照して下さい。〆のメニュウです。
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 ボールに始まりボールに終わる。個人的にはとてもいい感じの組み立てだと思います。しばらく定番にしようかしら?この終わり方、何だか適度に静かで適度に感動的でなかなかよいと。自画自賛。

 そのアト例によって感想の交換、MVPの発表、集合写真などを経て解散しました。
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 この日やったみたいなこのテのメニュウは「ノンヴァーバルコミュニケイション」て云うらしいです。言語によらないコミュニケイション。
 僕の個人的な考えですけれど、役者の仕事はセリフを伝えるコト、ではありません。セリフの裏にある、セリフの奥にある、そしてセリフの外側に広がる「何か」を表現するコトです。あくまで個人的な考えですけれど。だって「セリフだけを伝えたい」のなら生身の人間が舞台に立つ意味はないですから。お客様に台本を直接読んでもらえばいい。役者が立ち喋り動くコトの意味は、だから「セリフ以外のモノを表現する」ためなのです。と僕は思います。
 そう云うコトに改めて立ち帰らせてくれた「リーダー体験」でした。スゴク勉強になりました。

 参加してくださった皆様、お付き合い頂いてありがとうございました。よろしければまた一緒に遊びましょう。じゃ。


★アンケートより

・キャッチボールが意外と難しかったです。特に目をつぶって「ハイ」のみは正直、全然わからなかったです。写真
・久しぶりのワークショップで緊張していたのが、最初ボールをみんなで作るので一気になじめました。
・キャッチボールは結構時間をかけているなぁと思いましたが、単純だけど一番難しかった。コミュニケーション下手が出てしまいました。
・小学校の運動会で他のみんなのように両手をあげて応援団と一緒に声をはりあげて応援することがどうしてもできなかったのですが、あれをやれるようになりたくて芝居をやってるのかもと思いました。アフリカ・リズムをやりながら思い出した。
・背中合わせ、棒の交流。相手の呼吸、意志を感じられておもしろいです。
・棒の交流。ウソ発見機に使えそうですね。
・棒のまえに芋けんぴを食べたのは失敗でした! あ、油が…。
・棒の表わす意味というか、あの空間は何なのか…。考えてしまいました。
・あさがおの棒を使ったゲーム、とても魅かれました。色々な動きが発見できておもしろかった。でも台本が来たとたんに連動させるのが難しくなって、ついセリフに意識が集中してしまう自分を感じました。もっと分散させたいものです。写真
・林さんがリーダーの時とは一味ちがったメニューが取り揃えられていて、ワークショップ自体に久しぶりに参加させていただいたこともあり、とても新鮮でした。
・リーダー、メンバーがちがうと印象がまったくちがっておもしろい。今日はみんなが丁寧にお互いを信頼してメニューをこなした感があったと思う。
・リーダーが構えちゃってると参加者も構えてしまうのですが、リラックスしてやることができました。ありがとうございました。
・今日一番感動というか楽しかったのは、ボールの時やリズムで最後にみんなでひとつのものを作って、ひとつの動作を作ったことです。みんながひとつになる瞬間が確実にあったと思います。


写真  リーダーのハシモトケンさん、ご参加くださったみなさん。お疲れさまでした。管理部のハヤシです。今回はアシスタントとして写真を担当。したのですが…ごめんなさい! 自分もいちぶゲームに参加したのと、眺めながらいろいろ考えこんでいたりで、シャッターチャンスをずいぶん逃しました。写真を撮るのもむずかしいですね(なのでゲームの内容と写真と結構ずれちゃって います。ごめんなさい…)。考えこんだというか、純粋なアシスタントになりきれていなかったです。眺めていておもしろかったのです。

 ハシモトさんは俳優として次回の出演作品がすでに決まっています。ここでは劇団桃唄309のサイトハシモトさんの個人サイトをご紹介します。ハシモトさんの出演予定についてはぜひそちらをご参照ください。ハシモトさん、つぎの「演出作品」の予定はいつなんですか?
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 ところで。今日ひさしぶりに映画館に行きまして。「死ぬまでにしたい10のこと」という映画を見ました。いい映画でした。いちばん印象に残ったのは主人公の女性(サラ・ポーリー)の、このエピソード。彼女がダンナさんと知り合ったのは「ニルヴァーナのラスト・コンサート」。きれいな女の子が(興奮して)号泣しているのを見つけて、ダンナはハンカチもティッシュももっていなかったので「自分の着ていたTシャツを差し出した」というくだりでした。それがふたりの出会い。すごいなぁ。私はこれを見て、新しい目標をひとつ見つけました。
写真  このワークショップがきっかけでだれかが結婚したらすごいぞ。(興奮して)号泣している女子に男子がTシャツを差し出す。それがふたりの出会い。いやぁ、ぜひそういう劇的な機会を提供したいものだ。「ハヤシナルヒコのラスト・ワークショップで出会ったんだ」(ラストじゃなくてもいいんだけど)。そんな風に語られてみたいものだ。演劇って、やっている当事者以外にはあまり出会いって起こり得なさそうですもんね。よし、私がなんとかしようじゃないか。それが私の「死ぬまでにしたい10のこと」のひとつだ。
 …といっても、アレですよ。私自身が自分の奥さんをこのワークショップで物色している、ということはまったくありません。今の今まで思いつかなかった。邪心なく私は演劇に向き合っています。ぜひ安心して演劇を楽しみにご参加くださいませ。ワークショップは通算で100回やる予定でいます。あと79回あります。ハシモトさん、今後もぜひリーダーをやってくださいね。だれかいつかTシャツを差し出そうね。私はそれが楽しみだ(もし号泣している男子に女子が自分の着ているTシャツを差し出したら。私はその日に死んでもいい。そんなワークショップができたら思い残すことはないよ。たぶん)。演劇でニルヴァーナに挑みましょう。あれって和訳すると「涅槃(ねはん)」だよね。ワークショップも涅槃なのだ。涅槃で待つ(わ。20年前の流行語だ)。ハシモトさん、私もいつか「悟る」よ。ここで。演劇的に。

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