△ 不等辺ワークショップ第8回 (2002/04/14)


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写真第8回ワークショップは、晴天のもと4月14日に開催されました。
リーダーは中澤、アシスタントは小野。
ともに初めての経験です。

今ワークショップのテーマは、「初読戯曲のワンシーンを短時間で立ち上げる」ことにありました。
その場で初めて出会う戯曲。いきなり結成されるチーム。1時間後の試演。
参加する役者にとってはかなりプレッシャーのかかる作業だと思います。
また、今回はテキストとなる戯曲を、中澤が参加した「戯曲講座」の友人に提供していただき、さらに新人作家である彼女たちにも、自作を上演するチームに入り、戯曲が立体化されていく作業に参加してもらいました。
興味深い反面、きっと戸惑いや不安も大きかったことと思います。
けれどもそういった現場作業のなかで、作家には机上では得られない経験を、そして役者には自分の可能性の広がりを感じてもらえたら、と願ったのでした。

★参加者

越後かずえ・池田景・井手優生・えいきち・大村国博・松本仁也・谷口誠・さとうゆき・長谷川いづみ・林成彦・はらでぃ・山羽真実子(以上役者)
網野友子・嶽本あゆ美・田中つまつま(以上作家)

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「みんなで?を作る…はず」
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「相手の体を使って彫刻その1」
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「彫刻その2」

最初の1時間ほど簡単な演劇的ゲームでアタマと体をほぐしたあと、役者を3チームに分け、さっそく稽古に入りました。

ちなみにテキストとして用意した作品は

の3作品です。
(作品名をクリックすると、当日配られた「あらすじ&作者からの一言」を読むことが出来ます。)
短いものでは20分、長いものでは2時間と、作品の長さに違いはありましたが、当日は作者の了解を得て10分前後のシーンを切り取り、その部分のみを配布しました。

チームの顔ぶれは

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タンゴチーム
大村・えいきち・井手・
池田・山羽・網野
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国境チーム
越後・谷口・林・はらでぃ・嶽本
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こぶ茶チーム
さとう・松本・長谷川・田中

この組み合わせで、1時間の稽古が開始されました。

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タンゴチーム
稽古風景
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国境チーム
稽古風景
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こぶ茶チーム
稽古風景

以下は中澤の、稽古および本番を見ての感想です。
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●「国境」。舞台は中東の砂漠、イスラム教を下敷きに、しかも使用したシーンはロバが出てくる夢の中、というある意味一番難解な作品だったと思います。このチームはあえて「解釈すること」をやめ、いかに与えられた戯曲を芝居に昇華させるか、にこだわったように思えました。話者と演者を分ける、掃除用のバケツでリズムを刻む、など新鮮な工夫が随所に見られ、演劇の可能性を感じさせる試演となりました。

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●「タンゴ」は、緻密な台詞劇でしかも登場人物も多く伏線や設定も複雑、という言ってみれば短時間では消化しきれない作品でした。それもあってかこのチームは「立つ」ことが中途半端になってしまった気がします。いっそのこと「読む」という作業に徹したほうが、より深く作品を観客に伝えられかもしれない、と思いました。

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●「こぶ茶」は比較的わかりやすい、しかもギャグ満載のコント風な作品だったため、役者もすぐに馴染んだようです。一通り配役を変えて読み、そのあとはホンを持ちながら実際に立って芝居を作っていきました。
作者の意図を役者が敏感に捉え、再現しようという気持ちが強かったと思います。試演でも笑いが起き、なにより演じている役者が楽しそうだったのが印象に残っています。

以上、勝手なことを書いてきましたが、とにかく終わっての感想は「面白かった!」の一言につきます。
役者中心のワークショップが多い中、このような試みをまた実現できたら…と思います。

最後に、作者の皆さんの感想を…


●嶽本あゆ美

先日、お招き頂いたワークショップは私にとって精神療法に近いものがありました。まあ、日頃の鬱憤が溜まっていたせいも有りますが、演劇という事と劇団を続けるという事に関してネガティブな考えばかりが私を埋め尽くしていたからです。
それはさて置き、あの短い時間の中で初体験いやいや、初対面の人達と自分の内面の恥ずかしい部分である戯曲を俎上にあげて意見交換し合うのは、かなりの勇気が必要でした。私がバケツを叩いていたからと言って、それがリラックスしていたり、普段通りだった訳では無いのです。
まず、林さんの提案で、みんなして黙りこくって脚本を読んで頂きました。その時間の果てしなさといったら……そしてみんなが重い口を開き出すや否や、作者の私がお呼びもしない、イリュージョンの世界が始まってしまったのです。まず、ダブルボディー??ですか?語り手と演じてが別れて表現する方法を取ろうという意見。確かにそれはおもしろい。そして夢のなかのくだりでは二人に別れていた表現者が独りで演じる。これは登場人物アリ(弟)の統合された自我が、疑念の幻影あるところのロバとの自問自答するのであーる。そして次に、私はロバを箒でも持って踊ろうかなあ…と甘い考えを一喝され、私の前にたちはだかったのは椅子でした。この椅子を積み上げるというアイデアがすごかったです。私は物事を抽象化し、さらにそれをある具体的な事物に転換するといった作業が、はっきり言って出来ません。国境組の皆さんは、椅子を積み上げました。そしてそれはいつのまにかアリを演じる林さんを覆い禁忌の壁となったのです。そしてその壁は時として妹ファティマにさえなりました。「私観たの!!」
はっきり言って、練習する暇が有りませんでした。あまりにもアイデアがたくさんあって段取りだけ決めたけど、忘れちゃいました。
本番は……無責任にお客さんになっていました。バケツだけはこれでもかこれでもかと、叩きまくりました。これがジャンべであったなら……いやしかし、きっと砂漠の民は何だって叩くだろう。初対面の人達とここまでカンだけをたよりに物を作れるとは思わなかったし、まるで初対面の人とマッシュルーム無しでどこまでもアッパーな集団トリップした感じでした。きっとイスラエルの人とパレスチナの人もこうやってワークショップしたら仲良くなれるかな……(蛇足)
また仲間に入れて下さい。(他力本願)病めるロバより


●網野友子

戯曲の1シーンをグループごとに立ち上げる企画は、とても興味深く有意義な体験でした。今回の自分のホンは、上演予定なしで書いたため、実際に動いたものを観られて感謝の気持ちで一杯です。同時に、役者・演出の力の大きさを改めて思い知らされました。やはり、芝居は板の上に乗って初めて意味を成すものですよね。戯曲が戯曲で終わってはいけないな、脚本に進化しなくては、と痛感。
さて、自作については、全て役者さんに頼って、何とか形になりましたが……どうぞ目一杯ご批評下さい。ここで見せた設定は、実はみんな「嘘」で「嘘の設定を観客に信じ込ませること」がねらいのシーンなのですが、皆さん騙されてくれたでしょうか?


●田中つまつま

「なぜ、演劇なのだろう?」
 映画でもテレビドラマでもなく、小説でも詩でもなく、なぜ演劇に向かっているのか?
演劇って地味だしローテクだし儲からないし。
だのになぜ、この21世紀に、君は行くのか、
そんなにしてまで。
 その答えを、今回のワークショップで少しもらったような気がしました。井上ひさしや平田オリザが言うまでもなく、演劇ってすごいっすよ。
 『こぶ茶』を演じてくれた佐藤さん、松本さん、長谷川さん。そして劇団のみなさん(特にキュートな女の子たち。元気もらいました)
どうもありがとうございました。またどこかで会えると、うれしいです。

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