△ 『振り向けば、タンゴ』


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作 網野友子

●登場人物

桂木夢子(39才・タンゴ喫茶『チケ』の女主人)   
桂木 真(20才・夢子の一人息子)
峰村沙織(19才・俳優峰村圭介の娘)  
志乃(50才・『チケ』の常連)
歯科医佐々木(59才・『チケ』の常連)  
蘭子(20才・真の幼なじみ)

●あらすじ

都心から少し離れた街の露地奥 夢子の営む 一軒のタンゴ喫茶「チケ」
今日も常連が タンゴを聴きに集まってくる その中で
皆が少しずつ 嘘をついた 自分を慰めるために あるいは何かを守るために
小さな嘘は長い間に 密かに密かに熟成し やがてほろ苦い棘となる そして
面白可笑しく 素敵なタイミングで人を刺す まるでタンゴの唄のように

一人の名俳優「峰村圭介」を愛した二人の女がいる
一人は昔の恋人「桂木夢子」 もう一人は娘「峰村沙織」
二人はそれぞれ 自分が峰村圭介にとってのNO.1の女でない ことを知っていた
だから二人はそれぞれに せめても自分を慰めるための嘘をついた
夢子は 息子真が圭介の子であるという嘘を 沙織は?

やがて二人は出会い 彼女らの『嘘』と『愛』は衝突する
しかしその衝突の火花の中で 『嘘』から『真実の愛』が生まれ出ることだってあるのだ
夢子の『嘘』は沙織の 沙織の『嘘』は夢子の『真実の愛のかたち』を
本人たちの意思に反して生み出していく
そして みんなが振り返った処にはいつも タンゴの唄が流れている
タンゴの唄は 愛と偽りを両輪にして走る馬車 永遠に人を轢きながら走り続ける

嘘と知りながら 嘘を真実にしようと暮らしている 嘘つき人たちのお話

♪ ♪ ♪ ♪ ♪

● 作者より一言……

拙い作品で恥ずかしいのですが、昔から「家族、って何?」と自分に問い続けてきました。未だに、その答えは出ないのですが。これもそんな作品の一つです。
昔私自身が、親元を離れて大学に行き、家族を離れて一人立ちした頃から、いつも私の周りには、芝居と、モーツァルトと、アルゼンチン・タンゴが流れていました。
私の原風景の中で 二度と帰れぬ処へ還っていきたい人々 のお話を綴ってみました。
どうぞ、ご批評・ご批判ください。


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