△ 『縁側でこぶ茶』


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作 田中つまつま

●登場人物

聡子(25歳・看護婦)
徹(29歳・聡子の兄)
マリ(26歳・徹の婚約者)

●あらすじ

 聡子(25歳)は、地元静岡で看護婦として働いている。今日、東京でひとり暮らしをしている兄・徹(29歳)のアパートにやってきた。そこへマリ(26歳)が突然どなり込んで来る。マリは徹の婚約者で、最近徹に避けられているので様子を見に来たのだ。マリは、初対面の聡子が妹だとわかってあやまる。聡子は、徹がマリを避けているのは、三人兄弟の真ん中・幹生が下着泥棒で逮捕されたからだとしゃべってしまう。
 そこへ徹が帰ってくる。結婚を控え弟の下着ドロの件をどうするか。徹はマリの両親に対して隠し通すと主張する。そのためには結婚式もやらない。マリは結婚式も披露宴も絶対にやりたい。徹はすぐに結婚式をすると発言を翻す。聡子は永遠に隠し通すのは無理だと主張する。
 徹は「弟はいないことにする」と言い出す。聡子は怒る。兄思いのやさしい幹生に対してひどすぎる。
 マリは、一人になって考えたいと言って出ていってしまう。
 徹は気づく。自分がなかったことにしたいのは、弟の存在ではなく、母に溺愛された弟に嫉妬している醜い自分だったのだと。
 聡子は徹に言う。マリが望んでいたのは、トラブルを隠し通すことではなくトラブルにも負けない一途な愛情だったのではないか。今からマリを追いかければ……。
 徹はアパートを飛び出して行った。  

●作者からひとこと

 私は漫才が好きです。小さい頃は中田カフスボタンのファンでした。といういい年なので最近の若手はよくわからないのですが、やすきよは不世出のコンビだとリスペクトしてますし、ダウンタウンや爆笑問題も好きです(要はただのミーハーだ)。
 小林信彦著『日本の喜劇人』は何度読み返したか。(この本を読むと、喜劇人には歌や踊りといった音楽的センスが必要であるということがよくわかります。最近ではナイナイの岡村くんのダンスが出色です。『メチャイケ』で踊ったモー娘。の『恋愛レボリューシュン21』の振りの完璧さを私は一生忘れないでしょう……おおげさ)
 しかし、「笑い」が好きと「笑い」が書けるというのは全く次元が違います。私は「笑い」が書けない、という苦い自覚があります。だから戯曲セミナーもコントを書く夜クラスではなく戯曲を書くという昼クラスを選びました。
 とはいえ、私はあきらめが悪いので、戯曲の中で「笑い」を書いてみたいというさもしいスケベ根性を出してしまう悪癖があります。今回の『縁側でこぶ茶』を書いているとき、私の頭の中にはネズミ顔の太田さんと元コンビニ店長の田中さんの顔がちらついていたことを告白しておきます。
 私は新聞も好きです。眠れない夜は4時半まで起きていることにして、その頃に届く朝刊を読んで心安らかに眠ります。(そんなとき谷川俊太郎の『しんぶん』という詩の一節「ああ あすのあさもしんぶんをよもう あたらしいインクのにおいをかぎながら しんぶんにかいてあることなら どんなことでもかれはだいすき」が思い浮かびます)。専業主婦なので、夕方4時近くになると今度は夕刊がいつくるかそわそわします。投稿欄(『朝日新聞』では『声』)も好きです。時には泣いたり怒ったりしながら読みます。でも『声』に掲載された文章を集めた本のタイトル『たくさんの愛をありがとう』のダサダサ加減には腰がくだけました。
 我が家はずっと『朝日新聞』です。以前一度『東京新聞』に浮気して、この新聞の独自さがそれなりに好きだったのですが、あまりのチラシの少なさにさみしくなってやめました。何十年同じ新聞を熱心に読んでいるせいでしょうか、私には戯曲の中に朝日新聞的優等生的サヨク的説教臭いメッセージを書きたがる悪癖があります。『縁側でこぶ茶』では、な、なんと「日本人の戦争責任」に対するメッセージをしのびこませてます。
 演劇という大海をバタ足で前に進み始めたばかりの若輩者です。率直な意見、感想など、よろしくお願いします。


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