トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン31|初演版 【公演データ】
照明、上手のみに。パトカー内。運転席に浜崎。助手席に満。リアシートに周作、花音、あきほ。
満 「どうして実験室に?」
周作 「僕は事故の後、心肺停止状態でにウチの病院に運ばれたました。あの実験室は昔、うちの外科病棟でした。私はそこで一度息を吹き返しましたが、再び心肺停止に…ううっ…」
あきほ 「義兄さんどこか救急病院へ!」
周作 「駄目だ!うちに戻ってくれ!」
花音 「駄目よ!死んじゃう!」
浜崎 「家に戻す。」
花音 「どうして?殺す気なの?!」
浜崎 「俺はそいつに借りがあるんだ。だからそいつの言う通りにする。」
花音 「借り?」
浜崎 「…百年前。瀬名周作が事故った時、命がけで助けた子ども、その子は…おれの祖父だ。」
あきほ 「えっ?!」
浜崎 「つまりアンタがいなかったら今の俺は存在しない。だから瀬名周作の名を語る偽者だったら許せねぇ。だが、アンタは…」
満 「なぜホンモノと?」
浜崎 「信じ切ってる訳じゃない。だが、絶対にホンモノだと言い切る人がいてな。」
花音 「誰が?」
浜崎 「うちの…祖父だ。」
花音 「え?!って事は…」
浜崎 「御年百八歳。まだ健在だ。」
周作 「そうでしたか…あの子がまだ…」
あきほ 「でもどうして周作さんをホンモノって…」
浜崎 「あきほさんが撮った写真にその人が映っていた。」
あきほ 「写真?…あ、こないだお姉ちゃんに送ったやつ…」
浜崎 「その写真を見ていきなり騒ぎ出した。瀬名周作だ!命の恩人だ!ってな。」
周作 「百八歳…長生きしてくれたんですね…助けた甲斐があります…ううっ…」
花音 「周作さん!」
浜崎 「もうすぐ着く!あとひと踏ん張りだ!」
(作:松本じんや/写真:はらでぃ)