△ 「背中のイジン」シーン16


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潤のアパート。

花音 「ここよ。」

チャイムを鳴らす。

花音 「潤?潤、いるんでしょ?花音よ。開けて!」舞台写真

潤、ドアを開ける。

「花音ちゃん、久しぶり。あがんなよ。」
花音 「ちょっと、大丈夫?」
「何が?」
花音 「何がって、そんな具合悪そうな顔して。」
レイ 「潤君、誰この女?」
「幼なじみの花音ちゃん。」
花音 「え?私が何?」
周作 「そうか、花音さんは見えないんですね。」
花音 「え、じゃあやっぱりいるの?」
「いるって?」
花音 「いい、よく聞いて。今あなたのそばに女性がいるわよね?」
「(レイを見てデレっとして)いますとも。」
花音 「落ち着いて聞いてね。その女性はね…霊なの。」
「知ってるよ。ねぇ、レイちゃん。」
レイ 「ねぇ。」
花音 「名前じゃなくって、幽霊ってことなの!」
「はぁ?花音ちゃんこそ大丈夫?」
周作 「本当なんです。」
「あの、あなたは?」
周作 「はじめまして。周人の祖々々父の周作と申します。」
「あ、どうも。いつもお世話になっております。」
周作 「いえいえ、こちらこそ。」
「え?…周作って…本物の?」
周作 「はい。」
「本物ってじゃあ…幽霊?!!」
レイ 「きゃ〜〜っ!!」
周作 「いや、あなたが驚くのはどうかなぁ。」

潤、突然倒れる。

レイ 「潤君!」
花音 「潤!」
周作 「まずいですよ。病院に連れていかないと。」

周作、潤を抱えようとするがレイが邪魔をする。

レイ 「触らないで。」
周作 「でも…」
レイ 「潤君に触らないでって言ってるの!」
周作 「いったいどうして彼を?」
レイ 「私達は前世で結ばれなかった恋人同士なの。やっと見つけだしたのよ。絶対離さない!」
周作 「しかしこのままじゃ、潤君は…」
花音 「ねぇ、何だって?全然見えないんだけど。」
周作 「つまりその…牡丹灯籠ですよ。」
花音 「え?」
周作 「知りませんか?怪談話です。死んだ恋人が夜な夜な男の家に通って…」
花音 「あぁ、…え、じゃあやっぱりこのままじゃ潤は…」
周作 「レイさん、あなたの気持ちは分かります。ですがいけません。彼の命を奪っては。」
レイ 「大丈夫よ!美香子様に頼めばきっと何とかしてくれる。」
周作 「美香子様?」
レイ 「潤くん、天星会に行って助けてもらいましょう。」
「そうだね、レイちゃん。」
周作 「天星会?」舞台写真

潤、レイ、ふらふらと立ち上がって出かけようとする。

花音 「ちょっと待って、どこに行く気?」
周作 「天星会って言ってますが。」
花音 「なんですって?!」
周作 「何なんです、天星会って?」
花音 「最近売れだした霊感商法よ。」
周作 「霊感商法?」
花音 「そんなのに関わってるからこんな事に。」

潤、レイ、いつの間にか二人の前から消えている。

花音 「あれ?もういない。止めなきゃ!」
周作 「そうですね。」

周作の後ろから満が出てくる。

「周作さん…」
周作 「え?あ、満くん。」
花音 「え?どこ?」
「良かった、見えるんですね…」
周作 「見えるって…」
花音 「どこ?どこにみっちゃんさんが?」
周作 「まさかきみ…」
「いや、生きてます。僕は一時的に意識だけ飛ばす事が出来るんです…」
花音 「周作さん?」
「まずい事になりました。今私は天星会に捕らえられて悪霊に洗脳されかけています…」
周作 「何だって!?」
花音 「何なの?」
「みんなに知らせて下さい…警察にも…」
周作 「わ、分かりました。すぐに。」
「お願いします…」

満、消える。

花音 「周作さん、どうしたのよ?」
周作 「今、満くんの意識と話しました。」
花音 「え、意識?」
周作 「大変です。満さんも天星会に囚われて、洗脳されかけてます。」
花音 「何ですって!?」
周作 「警察に連絡して、私達も向かいましょう!」
花音 「みんなにも連絡しなくっちゃ!」

二人、ハケる。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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