トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン16|再演版 【公演データ】
潤のアパート。
花音 「ここよ。」
チャイムを鳴らす。
花音 「潤?潤、いるんでしょ?花音よ。開けて!」
潤、ドアを開ける。
潤 「花音ちゃん、久しぶり。あがんなよ。」
花音 「ちょっと、大丈夫?」
潤 「何が?」
花音 「何がって、そんな具合悪そうな顔して。」
レイ 「潤君、誰この女?」
潤 「幼なじみの花音ちゃん。」
花音 「え?私が何?」
周作 「そうか、花音さんは見えないんですね。」
花音 「え、じゃあやっぱりいるの?」
潤 「いるって?」
花音 「いい、よく聞いて。今あなたのそばに女性がいるわよね?」
潤 「(レイを見てデレっとして)いますとも。」
花音 「落ち着いて聞いてね。その女性はね…霊なの。」
潤 「知ってるよ。ねぇ、レイちゃん。」
レイ 「ねぇ。」
花音 「名前じゃなくって、幽霊ってことなの!」
潤 「はぁ?花音ちゃんこそ大丈夫?」
周作 「本当なんです。」
潤 「あの、あなたは?」
周作 「はじめまして。周人の祖々々父の周作と申します。」
潤 「あ、どうも。いつもお世話になっております。」
周作 「いえいえ、こちらこそ。」
潤 「え?…周作って…本物の?」
周作 「はい。」
潤 「本物ってじゃあ…幽霊?!!」
レイ 「きゃ〜〜っ!!」
周作 「いや、あなたが驚くのはどうかなぁ。」
潤、突然倒れる。
レイ 「潤君!」
花音 「潤!」
周作 「まずいですよ。病院に連れていかないと。」
周作、潤を抱えようとするがレイが邪魔をする。
レイ 「触らないで。」
周作 「でも…」
レイ 「潤君に触らないでって言ってるの!」
周作 「いったいどうして彼を?」
レイ 「私達は前世で結ばれなかった恋人同士なの。やっと見つけだしたのよ。絶対離さない!」
周作 「しかしこのままじゃ、潤君は…」
花音 「ねぇ、何だって?全然見えないんだけど。」
周作 「つまりその…牡丹灯籠ですよ。」
花音 「え?」
周作 「知りませんか?怪談話です。死んだ恋人が夜な夜な男の家に通って…」
花音 「あぁ、…え、じゃあやっぱりこのままじゃ潤は…」
周作 「レイさん、あなたの気持ちは分かります。ですがいけません。彼の命を奪っては。」
レイ 「大丈夫よ!美香子様に頼めばきっと何とかしてくれる。」
周作 「美香子様?」
レイ 「潤くん、天星会に行って助けてもらいましょう。」
潤 「そうだね、レイちゃん。」
周作 「天星会?」
潤、レイ、ふらふらと立ち上がって出かけようとする。
花音 「ちょっと待って、どこに行く気?」
周作 「天星会って言ってますが。」
花音 「なんですって?!」
周作 「何なんです、天星会って?」
花音 「最近売れだした霊感商法よ。」
周作 「霊感商法?」
花音 「そんなのに関わってるからこんな事に。」
潤、レイ、いつの間にか二人の前から消えている。
花音 「あれ?もういない。止めなきゃ!」
周作 「そうですね。」
周作の後ろから満が出てくる。
満 「周作さん…」
周作 「え?あ、満くん。」
花音 「え?どこ?」
満 「良かった、見えるんですね…」
周作 「見えるって…」
花音 「どこ?どこにみっちゃんさんが?」
周作 「まさかきみ…」
満 「いや、生きてます。僕は一時的に意識だけ飛ばす事が出来るんです…」
花音 「周作さん?」
満 「まずい事になりました。今私は天星会に捕らえられて悪霊に洗脳されかけています…」
周作 「何だって!?」
花音 「何なの?」
満 「みんなに知らせて下さい…警察にも…」
周作 「わ、分かりました。すぐに。」
満 「お願いします…」
満、消える。
花音 「周作さん、どうしたのよ?」
周作 「今、満くんの意識と話しました。」
花音 「え、意識?」
周作 「大変です。満さんも天星会に囚われて、洗脳されかけてます。」
花音 「何ですって!?」
周作 「警察に連絡して、私達も向かいましょう!」
花音 「みんなにも連絡しなくっちゃ!」
二人、ハケる。
(作:松本仁也/写真:広安正敬)