トップページ > ページシアター > 背中のイジン > シーン18|初演版 【公演データ】
照明が変わると潤のアパート。花音、典子、周作が入口の前にやって来る。
花音 「ここよ。」
チャイムを鳴らす。
花音 「潤?潤、いるんでしょ?花音よ、開けて。」
潤がフラフラと出て来てドアを開ける。後ろにはレイもいる。
潤 「やあ、花音ちゃん久しぶり。あれ?典子さんも?どうかしたの?」
花音 「潤が心配で来たんだよ。」
潤 「心配って?」
レイ 「潤君、誰この人たち?」
潤 「幼馴染の花音ちゃんと、友達のお姉さんの典子さん。」
典子 「え?何?」
周作 「そうか、お二人は見えないんですね?」
花音 「え?じゃやっぱりいるの?」
潤 「いるって?」
花音 「潤、今あなたのそばに女性がいるわよね?」
潤 「(レイを見てデレっとして)いますとも。」
花音 「いい?落ち着いて聞いてね。その女性はね…霊なの。」
潤 「うん、そうだよ。ねぇ、レイちゃん。」
レイ 「ねぇ〜。」
典子 「名前じゃなくて、幽霊だってこと!」
潤 「はぁ?幽霊?なに言っちゃってんですか?」
周作 「本当なんです。」
潤 「え?あなたどなた?」
周作 「周人君の曾祖々父の瀬名周作と申します。初めまして。」
潤 「初めまして…え?瀬名周作って…ホンモノの?」
周作 「はい。」
潤 「それじゃあ…幽霊ってこと?!」
レイ 「きゃ〜〜っ!!」
周作 「いや、あなたが驚くのはどうかな?」
潤、突然倒れる。
レイ 「潤君!」
花音 「潤!」
レイ 「触らないで!」
周作 「しかし…」
レイ 「潤君に触らないでって言ってるの!」
周作 「どうして彼を?」
レイ 「私たちは前世で結ばれなかった恋人同士なの。やっと見つけ出したのよ。絶対離さない!」
周作 「しかしこのままじゃ潤さんは…」
典子 「ねえ、何だって?」
花音 「全然見えないんだけど。」
周作 「つまりその…牡丹灯篭ですよ。」
典子 「牡丹灯篭?」
周作 「知りませんか?怪談話です。亡霊の女が夜な夜な男の家に通って命を…」
花音 「ああ、あの話か…え?…って事は…やっぱりこのままじゃ潤は…」
周作 「レイさん、あなたの気持ちはお察しします。ですがいけません。彼の命を奪っては。」
レイ 「大丈夫よ!潤君、天星会に行って助けてもらいましょう。」
潤 「そうだね、レイちゃん。」
周作 「天星会?」
潤、起き上がって出かけようとする。
花音 「ちょっと待って、どこに行く気?」
レイ 「邪魔をしないで!」
レイが手かざしするとキーンという音が鳴り、3人とも金縛りにあう。
花音 「う…何これ…」
典子 「体が…動かない…」
周作 「金縛り?…」
その隙に潤とレイが部屋を出る。
花音 「あ、ちょっと…潤…」
典子 「どうしたら…いいの…これ…」
周作 「わか…りません…」
外でバイクが発進する音。突然金縛りが解ける。
典子 「おわ!動ける!」
花音 「解けた!」
周作 「きっとレイさんと距離ができたからですよ。」
玄関チャイムが鳴る。
典子 「え?誰?」
外から花村の声がする。
あきほ 「すみません!どなたかいらっしゃいますか?!」
花音 「この声って…」
典子がドアを開けるとあきほが現れる。
典子 「花村さん?」
あきほ 「やっぱりここか。」
周作 「なんで花村さんが?」
あきほ 「仁志先生は?」
典子 「みっちゃんはいないけど。」
あきほ 「この部屋の人は?」
花音 「潤?」
典子 「今、出てったけど。」
あきほ 「今のバイクか…」
下手にサス。満が出て来る。周作だけ声が聞こえる。
満 「周作さん…」
周作 「え?満君?」
典子 「みっちゃん?どこどこ?」
満 「よかった、聞こえるんですね?」
周作 「聞こえますがどうして?」
花音 「聞こえる?何が?」
満 「僕は一時的に意識を飛ばす事ができるんです。」
周作 「意識を?」
花音 「周作さん?」
満 「今僕は天星会に捕らえられ、悪霊に洗脳されかけています…」
周作 「天星会って…」
あきほ 「え?」
満 「みんなに知らせて下さい…警察にも…」
周作 「わかりました、すぐに!」
下手サスと共に満、消える。
花音 「周作さん、どうしたの?」
周作 「今、満君の意識と話しました。」
花音 「意識?」
周作 「満君は潤さんが向かった天星会ってとこに囚われて、悪霊に洗脳されかけてます!」
典子 「ちょっと何それ?!」
あきほ 「遅かったか…」
典子 「助けに行こう!」
花音 「でも天星会って…」
あきほ 「連れて行きます。私の車に乗って下さい。」
周作 「ありがたい。」
典子 「じゃ、私だけウチの前で降ろして。バイクに乗り替えてついてく。」
あきほ 「え?あ、はい。」
周作 「警察にも連絡を。」
あきほ 「わかりました。行きましょう!」
花音 「そうだ、周人にも…」
みんなあきほについて行く。花音スマホをかけながらハケる。
(作:松本じんや/写真:はらでぃ)