△ 「背中のイジン」シーン5


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ここから二元舞台になり、ラボと仁志家。
満と花音、入ってくる。

「じゃ、そこに座って。」
花音 「はい。」

満、ロケットをゆっくりと手のひらに包み、目をつぶる。

花音 「あの…どれくらいかかります?」
「うまくいけば、小一時間で終わるよ。」
花音 「あの…本当にお金とかは…」
「いらないよ。そういうの嫌いだし。」
花音 「ありがとうございます。」

ラボ。

森島 「いよいよですね、先生。」舞台写真
おじい 「あぁ、いよいよだ。」
森島 「あの瀬名周作の果たせなかった夢を、我々が果たすんですね。」
おじい 「キミのひいじいさんの夢でもある。」
森島 「はい…なんか、あぁ、駄目だ、もう涙が…」
おじい 「森島君…」
周人 「じいちゃん。」
おじい 「何だ。」
周人 「ホントにこれ、危険じゃないよね?」
おじい 「実の孫を危険な目に遭わすわけなかろう。…失敗しなければ。」
周人 「失敗しなければって…」
おじい 「大丈夫だ。ワシは失敗などせん!…たまにしか。」
周人 「するんじゃん。」
おじい 「森島君。」
森島 「はい。(五万円を見せる)五万円五万円♪」
周人 「五万円五万円♪」

仁志家。満の息が荒くなってくる。

花音 「大丈夫ですか?」舞台写真
「大丈夫。でも、相当シャイだな。キミのひいひいお婆さん…ん?なんだこれ?」
花音 「え?」
「おかしいな?全然違う道が…」
花音 「道?」
「誰か別の人の…うっ」

満、突然苦しみだす。

花音 「ちょっと、大丈夫ですか?みっちゃんさん!みっちゃんさん!」

ラボ。

周人 「そうだ、大事なこと聞き忘れてた。」
おじい 「大事なこと?」
周人 「これさ、何の実験なの?」
おじい 「え?言ってなかったっけ?」
森島 「え?言ってないんですか?」
おじい 「そういや、すぐ金の話になって…」
森島 「言ってないんだ…」
周人 「なんなの?教えてよ。」
おじい 「これはな、瀬名周作が生前進めていた研究でな。人間の魂を科学的に…」
森島 「先生、ちょっと!」
おじい 「何だ?」
森島 「おかしいです。急に反応レベルがアップし始めました。」
おじい 「何?」
周人 「どうしたの?」
おじい 「一体どういう事だ?」

仁志家。満、頭を抱えて苦しんでいる。

花音 「どうしたんですか?」舞台写真
「分からない。こんな事は初めてだ。突然別の人が…」
花音 「別の人?…うっ。」
「どうした?」
花音 「頭が、頭が痛い!」
「花音ちゃん、しっかりして!」

ラボ。

周人 「痛たたたた!頭が痛くなってきたよ、じいちゃん!」
おじい 「周人!中止だ、中止!ヘッドギアを取って部屋から出ろ!」
周人 「わ、分かった。(ヘッドギアを取ろうとするが、なかなか取れない。)あれ?なんだよ、これ。取れないよ!」
おじい 「何?」
森島 「まずいです。レベルがどんどん上がって行きます!測定器がもちません!!」
おじい 「メインスイッチを落とせ!」
森島 「はい!(スイッチを切るが、止まらない。)先生、落ちません!」
おじい 「なんだと?」

仁志家とラボ、交錯。

「花音ちゃん!しっかりして、花音ちゃん!」
おじい 「周人!早く部屋から出ろ!」
周人 「じいちゃん、はずれないよ、これ!」
森島 「まずい!もう限界です!」
おじい 「周人!」

大きな光とともに、爆発音。全員の悲鳴。暗転。
しばらくして、うっすらと煙る中、ゆっくりと明かりが点く。

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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