△ 「ブリジニツィー」シーン9


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上原、木村、喪服で入って来る。木村も男性用の喪服を着ている。

上原 「いいんですか?男物で。」
木村 「いいのいいの。女性用の喪服じゃ動きづらいでしょ。それにこっちの方がかっこいいし。」
上原 「かっこいいって、喪服ですよ?」
木村 「ズルイよね男性は。結婚式も葬式もネクタイ替えりゃいいだけでしょ。女性は面倒臭いんだから。」
上原 「だいたい、いくら任務の後にお通夜に直行するってったって、今から喪服着るこたないのに。」
木村 「こんなのしょっちゅうよ。早く慣れなさい、ヤミー君。」
上原 「僕は上原ですってば!」

島袋、鈴木、戻って来る。

島袋 「すまんね遅くなって。」

今井、戻って来る。

今井 「お待たせしました。浅川地下壕の資料です。」
島袋 「おぉ、御苦労さん。」

新垣、浜崎、鈴木も戻って来る。

新垣 「ヘリの手配もOKです。立川のを使います。」
浜崎 「特殊急襲部隊もこっちに向かわせた。」舞台写真
今井 「SATが来るんですね!」
鈴木 「SATの事だから…」
上原 「サッと来るねとか言うんでしょ?」
上原以外 「レッドカード!」
上原 「いや、今のは鈴木さんの先手を打とうかと思って…」
木村 「何言ってんの?」
島袋 「時間がないんで進めましょう。」
上原 「あ、ひどっ…」
島袋 「まず、地下壕の資料からいきましょうか。」
今井 「では私が。(スライドで説明)えぇ、浅川地下壕は、第二次大戦中、旧陸軍によって初沢町高乗寺付近の丘陵地に作られました。地下壕は、イ・ロ・ハの3地区に分かれており、いずれも碁盤の目状に坑道が伸びています。が、現在は崩落箇所も多く危険な為、一般人は立ち入り禁止区域になっています。」
浜崎 「中は迷路ってわけか。」
島袋 「出入り口は?」
今井 「いずれの地区も一ケ所ずつですが、鉄格子で塞いだ出入り口は全部で16箇所あります。」
木村 「壊されてる可能性もありありね。」
今井 「残念ですが、かなり危険な為、坑内の調査は殆どされていないのが現状です。」
島袋 「アジトにはもってこいだ。」
新垣 「広さは?」
今井 「長い坑道で約2000メートル。」
上原 「2キロもあるんですか?」
今井 「崩落箇所によっては、それ以上の場所もありえます。」
浜崎 「深さは?」
今井 「現在確認されている最深箇所は、114メートルです。」
木村 「114メートル…。」
浜崎 「ピンと来んな…。」
今井 「『コンバトラーV』2台分です。」
上原以外 「そりゃ深い!!」
上原 「ピンと来るんですかみなさん?!」
今井 「地下壕に関しては以上。」
島袋 「次、犯人の情報いってみようか?」
木村 「はい、まず、トヨカワアキラという人物ですが、該当しそうな人間はまだ見つかっていません。もう一人の元自衛隊のスナイパーという方はあがってきました。飯田亮一29才、男性。」
浜崎 「飯田亮一ってまさか…?」
木村 「以前、強盗事件で警官に射殺された飯田亮次の兄です。」
今井 「弟を殺された恨みで犯罪者になったってやつですね。」
浜崎 「やつは昔俺と、死んだ鈴木の二人で追ってた事がある。」
上原 「鈴木?」
木村 「5年前の事件で亡くなった刑事さんよ。」
上原 「まさか鈴木さんの弟とか?」
鈴木 「違うよ。」
上原 「ですよね。」
鈴木 「本人だよ。」
上原 「本人…え?」
島袋 「鈴木はいい奴だった。ダジャレばっか言ってたけどな。」
上原 「ダジャレって…」
島袋 「私のミスで殉職させてしまった。悔やんでも悔やみ切れんよ。」
浜崎 「あぁ!お前のせいだとも!」
新垣 「浜崎さん!」
上原 「あの…すっ、鈴木さん?」
鈴木 「(ゲゲゲの鬼太郎の歌で)楽しいなっ、楽しいなっ♪」
上原 「ちょっと、いい加減にして下さいよ鈴木さん!そういう冗談も不謹慎ですよ!」
島袋 「上原君?」
上原 「何ですか?」
今井 「さっきから誰としゃべってんの?」
上原 「誰って、鈴木さんですよ。」
木村 「鈴木さんて?」
上原 「だからこの鈴木さんですよ。」
今井 「どの?」
上原 「だからこの…え?」
鈴木 「見えないみたいよ、君にしか。」
上原 「見えないって、だってさっきからずっと…へっ?(鈴木を見つめながら青ざめていく)」
鈴木 「ナイス・シックス・センス!」
上原 「…ハタッッッ…ハタハタッ(振るえ出す上原)」
木村 「ヤミー君?」
上原 「うああああああああああっ!!」
島袋 「何だ?!どうしたヤミアガリ?!」
今井 「まさか、病気が再発したんじゃ?」

みんな一斉に上原から遠ざかる。

鈴木 「冷たいな上原君。(上原に近付く)」
上原 「うわ、来るなあああ〜!!(上原逃げるが、上原からみんなも逃げる)」
今井 「来るなって言いながら、来るなぁ!」
鈴木 「逃げないでよ〜。(また近付く)」
上原 「うわぁ!(と言って浜崎をつかまえ、盾にする)」
浜崎 「うわっ!やめろ!こら離せ!!」
上原 「ナンマンダブ、ナンマンダブ、お願いです!成仏してください!」
浜崎 「じょっ、成仏?!やだよ、離せよ、おいみんな、何とかしろ!」
木村 「嫌です。」
島袋 「バイオ・ハザードかもしれんし。」
浜崎 「バッ、バイオ・ハザード?!」
木村 「(銃を抜き)撃ち殺す。(皆で止める)」
鈴木 「いや、俺も成仏したいよ。したいんだけど、なんか出来ないんだよ。」
上原 「なんか出来ないって、何なんですかそれ?!」
浜崎 「ねっ、離そう?離そうよ。」
鈴木 「多分、やり残した事があるからなんだろうけど。」
上原 「やり残した事って?」舞台写真
浜崎 「まだ、いっぱいやり残してます!」
鈴木 「それがわかんないんだよ。」
上原 「わかんない?」
浜崎 「わかるよ!娘が一人いるんだ。あゆみっつって(懐から写真を出し)ほれ、まだ4ケ月なんだよ。せめて、あゆみが20才になるまでは…いや、嫁に行くまでは…いや、出来れば孫のも…」
鈴木 「驚かして悪かったね。上原君。」
上原 「鈴木さん、どこに?」
浜崎 「だから離してくれ。」
鈴木 「ちょっとその辺、浮遊してくる。」
上原 「浮遊って…」
浜崎 「離してください。」
鈴木 「じゃ、また。(と言って股を叩く)ふゆうのっ、オペラッ、グラスで〜っ♪(歌いながら去る)」
浜崎 「お願いしますぅ〜。(半ベソ。だが、すぐに離される。)助かったぁ〜!」

上原、へたりこむ。

今井 「大丈夫か上原?!」
木村 「(銃をかまえつつ)救急車呼ぼうか?」
上原 「大丈夫です。病気は関係ないんです。ちょっと疲れてて。申し訳ありませんでした。」
浜崎 「ったく、脅かしやがって。寿命が縮んだぜ。」
新垣 「とにかく、以上の情報を元に早速行動を開始しましょう。」
島袋 「そうだな。」
新垣 「私と浜崎さんは、今から本庁側の応援に合流します。」
浜崎 「おい待て。まだ犯人からの連絡が…」
新垣 「それは8係の皆さんにお任せします。」
島袋 「新垣君。」
新垣 「はい?」
島袋 「間に合うかな?お通夜に。」
新垣 「3時間以内に事件解決です。浜崎さん行きましょう。」
浜崎 「ああ。」

新垣、浜崎、部屋を出る。

島袋 「さてと。お二人が出て行かれたので、本題に入りますか。」
今・木 「はい。」
上原 「本題?」
島袋 「上原君。君にもそろそろ、知っておいてもらった方がいいね?」
今井 「いいんですか?」
島袋 「彼は平気だろ。」
今井 「わかりました。」
上原 「何の話です?」
木村 「あなたの尊敬する、新垣さんの話よ。」
上原 「え?」

暗転

(作:松本仁也/写真:広安正敬)

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