2002年1月の映画


OVER SUMMER−爆裂刑警− BULLETS OVER SUMMER
1999年 香港 92分
監督 ウィルソン・イップ
脚本 マット・チョウ/ウィルソン・イップ/チャン・マン
撮影 ラム・ワーチュン
出演 フランシス・ン(ン・ジャンユー/マイク「欲望の街 古惑仔 I」
「ザ・ミッション」)/ルイス・クー(ブライアン)/ミッシェル/ステファニー・ラム/ロー・ラン
メモ 2002.1.31 レンタルビデオ
あらすじ
生真面目で一本気なマイクと女が好きで適当に仕事しているブライアンのふたりは刑事。強盗殺人グループ「ドラゴン」を追っている。たれ込み屋の情報からアパートの一室に目をつけた二人は張り込みを開始する。
感想
刑事物アクション映画と思って借りたんですがそうじゃなかったみたい。凶悪犯を捕まえるため警察官ふたりが張り込みしている内に、いつのまにやら居候している部屋のばーちゃんやクリーニング屋の妊婦や家出少女そして自分たちふたりといった”身の中に足りないモノを抱えている”人間達と疑似家族を作ってしまうという話。おかしくてせつない。
「ザ・ミッション」ではよくわからなかったフランシス・ン(ン・ジャンユー)の魅力がわかった。
おすすめ度★★★★
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殺人者はライフルを持っている! Targets
1968年 米国 91分
監督・製作・脚本 ピーター・ボグダノビッチ初監督作品(「ペーパー・ムーン」「ラスト・ショー」「愛と呼ばれるもの」)
撮影 ラズロ・コバックス
出演 ボリス・カーロフ/ピーター・ボグダノビッチ(サム)/ティム・オケリー/ナンシー・シュー/ジェームス・ブラウン/サンディ・バロン
メモ 2002.1.26 WOWOW録画
あらすじ
怪奇役者として今も人気のあるバイロン・オーロック(ボリス・カーロフ)は突如引退を言い出し周りをあわてさせる。「老醜をさらしたくない」というバイロンにみんなで説得に努めるが功はない。一番気を落としているのは若手監督のサム(ピーター・ボグダノビッチ)。初めて会心の作品が書けたというのに。なんてったってバイロンを主役に考えて作ったというのに。ところがバイロンは「怪奇役者の私にその役は荷が重過ぎる」と言う。
映画界のごたごたとは別にひとつの出来事が起こり始めていた。中流階級に育ったボビーはトチ狂い始め、妻と母と偶然居合わせた配達人を射殺した後、ライフルや拳銃を大量に持って家を出る。人間狩りを始めるために。
テキサス大学ライフル乱射事件やケネディ暗殺に想を得ているとか。
感想
何が嬉しかったって、ドライブインシアターで上映しているボリス・カーロフの映画が 
「古城の亡霊」だった事。「ジャック・ニコルソン、若い!」とひとり盛り上がる。 映画上映を台無しにした犯人に詰め寄るボリス・カーロフが◎。大量無差別殺人という問題作ながら「(みんなが楽しみにしている)映画ちゅうものを、貴様はなんと心得ておるのだ!(おまけにわしの映画を台無しにしおって!)」という怒りが映画ファンには嬉しい。

−おまけ− 映画中のボリス・カーロフが語る怪談話をばおひとつ−
遠い昔の世にも奇妙な物語。
バグダットの商人が召使いを買い物に行かせた。やがて召使いは青い顔をして帰りこう言った。
”ご主人様。市場で女の人に袖を引かれて振り返ると、そこに死に神が立っていて私を脅しつけたのです”
 馬をお貸しください。運命から逃れるためには町を出なくては。サマラまでは死に神も追って来るまい”
そこで商人は馬を貸してやると、召使いはそれに乗り一目散に走り去った。サマラを目指して。

商人は市場に行き、人混みの中に死に神を見つけこう言った。
”なぜ今晩うちの召使いを脅しつけたのだ”
すると
”脅してはいません。ただ驚いた顔をしただけです
 まさかバクダットで会うなんて。 あの人とはサマラで出会う運命なんですから・・・
おすすめ度お気に入り度★★★1/2
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フォロウィング FOLLOWING
ロッテルダム映画祭タイガーアワード賞
1999年 英国 70分 モノクロ
監督・製作・脚本・撮影 クリストファー・ノーラン
音楽 デイヴィッド・ジュルヤン
出演 ジェレミー・セオボルド(ビル)/アレックス・ハウ(コッブ)/ルーシー・ラッセル
メモ 2002.1.19 梅田ガーデンシネマ レイトショー
あらすじ
作家志望のビルはちょっと寂しい。孤独。小説のねたにという言い訳で見知らぬ人の後をつけている。人恋しいのだ。ところがその日尾行していた男から「何故俺をつけているんだ?」と詰問される。ばれていた。とまどうビルにその男コッブは自分の事を話はじめる。
感想
スタッフ全員仕事を持ちながら1年がかりで製作したというまさしく低予算手作り映画。アイデアと見せ方ひとつでお金を山ほどかけなくても、これだけの水準の映画が作れるんだ。しょっぱなから
「誰とどこで話しているの?」
「作家志望なのに、『小説のヒントを得るため人の後をつける』って、、、書きたいものがあるから作家志望なんちゃうん?」
「コッブは何者なのだ?いい人なん?」
「第三の男は誰?」
「そこ誰の家?」
と疑問符がいっぱい。この監督さんは観客の頭を「????」でいっぱいにしたいんだな。

「メメント」のクリストファー・ノーラン初監督作品です。だいぶ違うけれどフィルム・ノワール系たとえばフランス映画の「いぬ」とかを彷彿させる雰囲気がある。ただジャンポール・ベルモントと同じくコッブの得体の知れない所が同じっていうだけなんですけれど。
おすすめ度お気に入り度★★★★
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バンディッツ BANDITS

2001年 米国 124分
監督 バリー・レビンソン(「ダイナー」「レインマン」)
脚本 ハーレイ・ペイトン(「レス・ザン・ゼロ」)
撮影 ダンテ・スピノッティ(「インサイダー」)
出演 ブルース・ウィリス(ジョー)/ビリー・ボブ・ソーントン(テリー)/ケイト・ブランシェット(ケイト)
メモ 2002.1.12 梅田東映パラス
あらすじ
刑務所を脱走したジョーとテリーは正反対のキャラ。ボクシングでファイトしているジョーは頭で考えるよりもまず行動派、神経症強迫観念の持ち主テリーは「体の具合がどうたら」といつもブツブツ言っている頭脳派。それでも気の合うふたりは「メキシコでホテル経営」の夢を実現するため無血銀行強盗“お泊まり強盗”(Sleep Over Bandits)を始める。これが次々成功して名を馳せる。世間様の結構な人気もんになったふたりの前に、突如ひとりのファム・ファタール(運命の女)が現れる。
感想
カツラをかぶった演技ができるってんで出演OKしたんでしょうか? ブルース・ウィリスとビリー・ボブ・ソーントンは。

「銀行の支店長一家との楽しいディナー」なんていうブラックなユーモアは面白いのになんか欲求不満が残る。ふたりの男とひとりの女っていう部分がシリアス過ぎてさめてしまう。中年男ふたりのとぼけたコンビと、それにからむイカレタ女っていう面白い映画になるはずなのにトーンがだんだん下がりひえびえしてくる。「味があるなあ」にまではいたっていない。冗長やし。もったいない

ブルース・ウィリスがやる気なさそに見える。ビリー・ボブ・ソーントンとケイト・ブランシェットのこれでもかという演技に辟易しているのか、気持ちが負けているのか。ブルース・ウィリスは演技派ちゃうけど、コメディタッチもうまいのにな。喧嘩っ早いタフガイ役でも、歌もダンスも出来るんやから歌って踊って不良中年はやんちゃにはじけて欲しかった。おさまっている年ちゃうやろ。
おすすめ度★★★
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ヴィドック vidocq

監督・脚本 ピトフ初監督作品(「デリカテッセン」「おかしなおかしな訪問者」「ディディエ」「エイリアン4」)
脚本 ジャン=クリストフ・グランジェ<(「クリムゾン・リバー」)
美術 ジャン・ラバス(「ロスト・チルドレン」)
キャラクター・デザイン マルク・キャロ(「デリカテッセン」)
衣装 カリーヌ・サルファティ
音楽 ブリュノ・クレ<(「クリムゾン・リバー」)
出演 ジェラール・ドパルデュー(ヴィドック)/ ギヨーム・カネ(エチエンヌ「愛する者よ、列車に乗れ」)/イネス・サストレ(プレア)/ アンドレ・デュソリエ(ロートレンヌ)/ムサ・マースクリ(ニミエ「モンディリアート」)
メモ 2002.1.9 サンケイホール試写会
あらすじ
1830年7月伝説の探偵ヴィドックが死ぬ。謎の怪人鏡仮面と闘ったヴィドックは燃えさかるかまどの中に落ち跡形もなく燃えてしまう。
相棒の死を悼んでいる酔いどれニミエの所にエチエンヌという男が訪ねてきた。大泥棒から警察の密偵となり、そして世界初の私立探偵となったヴィドックの伝記を書くはずだったというのだ。ヴィドックからも許しを得ていたとか。ヴィドックの死の謎を解明して伝記本を書き上げるため、作家エチエンヌは捜査を始める。

ビクトル=ユーゴー「レ・ミゼラブル」のジャン・ヴァルジャンやバルザック「ゴリオ爺さん」のヴォートランのモデルと言われる実在の探偵ヴィドック役がジェラール・ドパルデュー。
感想
評価が難しい。CF出身で「ロスト・チルドレン」「エイリアン4」のビジュアルを手がけたの監督さんの「ハイパー・ゴシック・ミステリ」。(デジタル)影像は下から上から斜めからと視点をくねくね変えてきれいやねんけどお話が単調なせいか、いささか退屈やねん。

そやねんけど、レトロな影像とレトロなストーリーが記憶には残る。「鏡の仮面に●が写っていた」のは面白い。そやから鏡の仮面やったんか。そこと人体発火はいいな。影像は「デリカテッセン」系と思う。でもあれほどむちゃくちゃちゃうし。こじんまりまとまり過ぎているのかもしれない。
おすすめ度★★★
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スパイ・ゲーム spy game

2001年 米国 128分
監督 トニー・スコット(「トップ・ガン」「クリムゾン・タイド」)
脚本 マイケル・フロスト・ベックナー/デビッド・アラタ
撮影 ダン・ミンデル
音楽 ハリー・グレッグソン・ウィリアムス
出演 ブラッド・ピット(トム・ビショップ)/ロバート・レッドフォード(ミュアー)/キャサリン・マコーマック(エリザベス『ブレイブハート』)/スティーブン・ディレイン/ラリー・ブリッグマン
メモ 2001.1.5 難波南街会館
あらすじ
30年勤めたCIAを退職する日の早朝、ネイサン・ミュラー(ロバート・レッドフォード)は香港の旧知から電話を受ける。「お前が押しつけた”ボーイスカウト”が大変だ」というのだ。
感想
四面楚歌の中、たったひとりの戦いというのはよく出来ていた。見応えがある。確かに面白い。
しかし、不満が残る。
ネタバレあります
中国・蘇州で米国・CIAが展開している作戦ってなんやんねん? わからん。あの女の人(エリザベス)を奪還する作戦やったん? なんのため? 例えばあの女の人の両親が英国の大物で恩を売っといた方がいいとか? いっぺん中国に売ったのに? ほんなら東西冷戦の時期にタリバーンを支援しおいて、今テロリスト集団と懲らしめているのと同じやん。
それともブラッド・ピットが作戦を利用して愛しい彼女を助けようとしたん? それやったらブラピもレッドフォードも公私混同やん。大体あの女の人自業自得やねんし。ミュアー(レッドフォード)は全身全霊を30年間祖国に捧げたご褒美が28万2千ドルってのに不満があったのか?。。
なんか割りきれん。だいたい世界最強の軍隊をたった一人の人間が動かせるなんて。。。。おっとろしい。
このご時世、今ひとつすっきりしない映画だった。戦後の東南アジアの独立戦争、東西冷戦、中東紛争などなどに介入している米国の諜報活動のおかげで世界は救われているのか、それともより一層混沌となっているのかとか疑問に思ってしまう。諜報活動というのはあれこれ税金使ってやってますけど、ゲームに過ぎないんですという皮肉な映画? 

ブラッド・ピットが父親の様な感情を抱いているロバート・レッドフォードに誕生日プレゼントを渡すシーン。「どうしてこんな物が(戦火のベイルートで)手に入ったんだ。」と言うのに対し「外食作戦さ(dinner out)」っていうやん。”外食作戦”って、ほら収容所物映画によくいる「今日はパッとお祝いしようぜ」という話になったらどこからともなくお酒やらチーズやら調達してくるヤツ。そういう時、敵の上官やらのサインを偽造したり袖の下渡したり。”外食作戦”は、そういう事を指しているんかな。大物では一度TVで見たっきりのタカ派ジョン・ウェインの映画「グリーン・ベレー」で補給部隊からヘリだったかな?調達してくるヤツいましたよね。最後に北ベトナムゲリラのトラップでやられてしまう人。
おすすめ度★★★
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或る夜の殿様
   キネマ旬報賞1946 邦画 第3位/1946年第1回 毎日映画コンクール日本映画賞作品賞
1946年 日本 113分 東宝
監督 衣笠貞之助(きぬがさていのすけ)
脚本 小國英雄
撮影 河崎喜久三
美術 久保一雄
音楽 鈴木清一
特殊効果 円谷英一(円谷英二)
出演 長谷川一夫(書生)/藤田進(書生節の男)/大河内傳次郎(江本逓信大臣)/山田五十鈴(おみつ)/高峰秀子(妙子)/飯田蝶子(おくま)/吉川満子(里野)/志村喬(北原虎吉)/菅井一郎(菅沼)/清川荘司(波川)/河野秋武(巡査関川)/進藤栄太郎(越後屋喜助)/清水将夫(山崎)/三谷幸子(綾子)
メモ 2001.1.2 BS2録画
あらすじ
<茶目っ気のある”殿様”(長谷川一夫)>

<親に似ぬ越後屋の娘・妙子(高峰秀子・でこちゃん)>

<去っていく馬車を窓からそっと見送るおみつ(山田五十鈴)>

来年には国会も開かれるだろうという明治十九年の頃、箱根の温泉場山泉楼には新政府の江本逓信大臣(大河内傳次郎)が逗留している。そこへ二組の商人達が大臣にお力添えをと鉄道敷設の嘆願にくる。「日光と宇都宮、そして水戸間に鉄道を敷設し、産業を育成する(そして土地を買い占めたわしらが大儲けする)」という案は二組ともまったく同じ。後塵を拝した菅沼・波川組は「越後屋喜助(進藤栄太郎)に資金を頼んだばかりに鉄道案をとられ先を越された」とほぞをかむ。そのふたりに呼ばれて大阪からやってきたあきんど北原虎吉(志村喬)も山泉楼で、越後屋のおかみに体裁の悪い目に会わされていた。若い頃におじの一文菓子屋でままたきをしていたおくまが越後屋の奥方(飯田蝶子)になっているのを見て、「久しぶりやないか」と挨拶に行った所、昔の事でゆすりに来たと思ったのか「お人違いでございましょう」とけんもほろろにあしらわれたのだ。腹の虫がおさまらない3人はなんとか越後屋をこらしめてやりたいと策を練る。ここからコンゲームのはじまり。
山勝(清水将夫)の奥方となにかと張り合って「山勝の鼻をあかしてやろうと、娘の妙子に大名華族のせがれを探すんにやっきになっている」越後屋の前に「どこぞそこらへんの誰でもえーさかい、どこぞの殿様にしたてて芝居をさせるんや。きっと越後屋の事や。頭を下げて引き合わせてくれと頼みにきよる。そしたら百万だらいやみをゆーて恩に着せてぇ」という筋は出来た。が、さてその”殿様”はどこから調達しょーかという問題に宿の女中のおみつ(山田五十鈴)が「ちょうどぴったりの書生さんがいます」と持ちかける。面倒見のいいおみつは、道ばたで途方にくれていた書生(長谷川一夫)にご飯を食べさせていたのだ。
”殿さん”のあてはできたけど、はてさて、どこのお殿さまがよかろかという段で北原(志村喬)はちゃーんと考えてあった。十五代慶喜公の弟君は平家(たいらけ)に養子にいかれたが、幕末のどさくさで十数年前から行方不明になっている。このカイチロオウ様がうってつけじゃなかろかと。だーれも顔しらんし。わっはっはっと会心の笑い声をあげたが実はこれが落とし穴であった。
というのは、越後屋は江本逓信大臣から「幕臣から新政府の大臣になったわしを十五代水戸の殿様は嫌っておられる。わしが押している鉄道敷設計画はお気にいらんじゃろ。ただ、行方不明の弟カイチロウぎみを探し出して鉄道会社の社長にでもご推挙申しあげたら、水戸の殿様も喜んで認めてくださるじゃろ。」と知恵をつけていたのだ。でもって鉄道敷設の利権をからみ、事は三人組の意図よりも大きく大きくなっていくのだった。
感想
”殿さま”長谷川一夫がトランペットで吹いている曲が気になるん。「はいのはいのはい」という歌詞やったかなと頭を搾るがわからん。でもって、両親の家に行ってさぼてんの歌唱力で歌った所、どんな曲かなんとかわかった母親が「らめちゃんたらぎっちょんちょんでパイノパイノパイ」という歌詞を思い出す。ウェブで検索したら出てきました。たぶん
この「東京節」っていう曲みたい。ぜひ聞いてください。アレンジ前はこんな曲です。米国南部の「マーチング・スルー・ジョージア」が原曲だそうです。この軽快な曲と風刺に満ちたナンセンスな歌が映画の全てを語っている。

戦後初の大作。戦争が終わった喜びと「明治維新では失敗した真の民主主義をこんどこそ」という気概あふれる映画です。
おすすめ度★★★★
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