2001年1月のミステリ

ペルソナ探偵 PERSONA DEECTIVE

12000年作 黒田研一著 講談社NOVELS 250頁
あらすじ
4話からの構成。作家をめざす人達のチャットルーム<星の海>で結ばれたグループの会長はカストル、メンバーはポルックス、アンタレス、スピカ、カペラ、ベガとそれぞれ星の名前がつけられており3ヶ月に一度同人誌を発行しながら一年間仲良く活動を続けていた。第一話は女子高生スピカが遭遇した事件。第二話は大学生アンタレスの事件。第三話はカペラの事件。そして最終話は初めてのオフ会で一同が顔を合わせます。そこで解った事実とは? (若竹七海さんの「ぼくのミステリな日常」を思い出す。なんとなく)
感想
1,2,3の話は面白かった。特に第2話がよかった。
が、最終章・・・・。えぃっ、ネタバレ覚悟で言おう。   さぼてんにはアンタレスが第2話と同一人物とは思えない。
この本は、本格推理小説とはいえその推理を詰めていく上で、ジグソーパズルの数片には人物の性格が大きく物を言っている話だとさぼてんは思う。と言うわけで人物に違和感があるとその”論理的帰結”が信じられないのよね。ほんまにこれで「論理的」なわけ?
人間は”感情の動物”だからこれでいいのか? 結局動機は嫉妬なの? 最終章が「あっと驚かす結末」のためだけだとしたら・・・・残念だ。
  とはいえ、作者の努力はえらいと思う。トリックは第一話が簡単な作りで好感を持ちます。
おすすめ度:★★★
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猫の手 CAT'S PAW 手先として利用する

1937年作 ロジャー・スカーレット著 村上和久訳 新樹社 293頁
あらすじ
マーティン・グリーノウは大富豪。一代で財をなし今はボストンの広大な敷地を出ることはほとんどない隠遁者で変わり者だった。彼の楽しみのひとつは四人の甥と姪ひとりを気の向くまま操る事だった。甥姪達はお金は与えてられていたが自分で稼ぐことは許されず生殺し状態。たったひとり叔父に反旗を翻したアンを除いた4人は叔父の75才の誕生日を祝うために屋敷に集う。そこでは叔父の爆弾宣言がまちかまえていた。マーティン・グリーノウは犬神家の一族の犬神佐兵衛と同じく人の心をもて遊ぶばけものなの。
感想
「猫の手」という題名から、猫のルーシーの”手”を借りたトリックかと思ってました(笑)。日本のことわざではなく英語圏のことわざだったんですね(当たり前か)。動機が納得できる正攻法でオーソドックな探偵小説であり、登場人物の性格付けも違和感なく書き込まれている。
<エラリークイーンのライヴァルたち>シリーズのCなのですが、さぼてんはクイーンよりずっと退屈せずに楽しめましたよ。第一部は偏屈な老人とそれを取り巻く人々の人間模様。そして事件が起こる。第二部はモーラン部長刑事の捜査と尋問。第三部はケイン警部の謎解きという構成もいい。
おすすめ度:★★★★
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顔のない男

2000年 北森 鴻著  
あらすじ
《空木(うつき)精作》41才は死んだ。公園の工事現場で殺されたのだ。捜査員達は定石通り空木の身辺を洗うが何もでてこない。何もないのだ。空木は父親の遺産で暮らし働かず近所ともつきあわず友達も無く20年近く暮らしてきたらしい。
感想
時間軸があやふやしていてなかなか面白い趣向なんです。ただ、最後がこうじゃなかったら・・・ですけど。いままでがんばって築かれていたトランプの山がへなへなと腰がくだけた様だった。
りっぱな謎と「なんだかなあ」の解答というミステリ。
おすすめ度:★★1/2
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あやし〜怪〜

宮部みゆき著 2000年
あらすじ
江戸ふしぎ噺、奇談小説集
 「居眠り心中」
 「影牢」  best1 死んだ人間と生きている人間のどちらが恐ろしいか
 「布団部屋」
 「梅の雨降る」
 「安達家の鬼」
 「女の首」 best2 感のいい子供とかぼちゃの神様のお話
 「時雨鬼」
 「灰神楽」
 「蜆塚」  best3 お江戸版ノスフェラトゥ
感想
行灯のあかりでつくられる薄暗がりが怖い。障子の向こう側にも部屋の隅にも物の怪がいるように感じられざわっとそそけだつように怖い。奉公人には藪入りしか休みがなかった話など江戸の風物にも惹かれる。
「自分の分をわきまえる」ってえ可能性を断ち切られるようなちょっと寂しい言葉は、現代の民主的で平等に見える世の中ではもはや誰も口には出しませんが、生きる知恵のような言葉ですね(書いていて我ながら”説教くさ”と感じる)。
おすすめ度:★★★★
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コフィン・ダンサー THE COFFIN DANCER

ジェフリー・ディーヴァー著 1998年 文芸春秋 池田真紀子訳 450頁
あらすじ
武器密輸商人との容疑がかけられているフィリップ・ハンセンが証拠隠滅した様な行動を目撃した証人3人の内ひとりが殺される。FBIとニューヨーク市警は虎の子の残り2人の証人を守ろうとリンカーン・ライムに助けを求める。狙っているのは腕の入れ墨から”コフィン・ダンサー”と呼ばれる殺し屋だった。ライムはダンサーに大きな貸しがあった。
「ボーン・コレクター」に続くリンカーン・ライム物第2弾。
感想
善も悪もプロ中のプロばかりがでてきてエネルギッシュな展開です。猟奇物というわけで「セブン」の二番煎じみたいな映画しかできなかった「ボーン・コレクター」より映画に向いていると思う。「極大射程」のようなスナイパーやら爆弾やら飛行機やら続々でてきて派手だから。しかし問題は肝心要の人物をどの俳優さんするかね。有名俳優だったら赤丸つけているみたいに「あんたが怪しい」って一発でわかるし。その点「スリーピー・ホロウ」は微妙な俳優さんを使って旨かった。にくい監督さんだ(笑)。
おすすめ度:★★★★
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