静寂のカンボジア〜バンテアイ・スレイ、バンテアイ・クデイ、プレ・ループ、タ・ケウ
 
Banteay Srei/Banteay Kdei/Pre Rup/Ta Kev
 
 
その他のアンコール遺跡
 

 
バンテアイ・スレイ
 


  アンコール・ワットやアンコール・トムから北へ向かうこと1時間あまり。初期アンコール朝の繊細にして華麗な彫刻があなたを待っています。「東洋のモナリザ」ですっかりおなじみですね。  

   
参道
かの有名な遺跡は街道沿いの田んぼの一角にありました。ジャングルではなく、高い塔もなく、拍子抜けするくらいに素朴に。というのも、この場所は王宮や墳墓ではなく寺院、それも王朝の菩提寺だったからです。赤い砂に覆われた参道を歩いていると懐かしい気分になりました。
   

   
寺院全景
ワットやトムなどの広大な遺跡を見慣れた目には「え、こんななの?」と思うほどちっぽけなスレイ。でも大きさじゃありません。宝石だって小さくとも美しいじゃありませんか。今も水が残る環濠に囲まれて佇む寺院は、どこか日本の平安時代の浄土信仰に通じるものを感じさせます。
   

       
 
ナンディン像
境内に入るとまず聖なる牛ナンディンが迎えてくれます。けっこうリアル。腕や脚の折り曲げ方なんか妙に可愛い。ペットにしたくなっちゃいますね。ちょっとデカイけど。
 
中央祠堂
それでも中央祠堂はさすがアンコールというか、シンメトリーな造形美が印象的です。建築資材である赤砂岩が遺跡本来の優美さに一層磨きをかけています。
 
経蔵
寺院内の建物配置もどこか日本に通じるものを感じさせます。外国っぽくないっていうか。でもここって、仏教じゃなくヒンドゥーのお寺なんだよね。
 

       
 
東洋のモナリザ
あまりの美しさにアンドレ・マルローが盗み出そうとまでしたデバター像。現在は保護のため近寄ることができません。入口の両脇の壁に彫られているのがわかるかな。
 
偽窓
アンコール特有の嵌め殺し窓も、ここではさらにその装飾性に磨きがかかっています。建築資材が赤砂岩であることにもよるのでしょうが、うっとりするくらい優美。
 
レリーフを見よ
アンコール遺跡といえばレリーフですが、中でもスレイは特に秀逸。繊細さが違います。これに対抗できるのは柴又帝釈天の木彫りの龍くらい。って知らないか、みんな。
 

 
バンテアイ・クデイ
 


  アンコール小回りコース(現地名「mini tour」、ちなみに大回りコースは「grand tour」)には、さほど規模は大きくないものの独特の味を持つ遺跡が多くあります。バンテアイ・クデイもそんなひとつ。ワットやトムといったメインディッシュを見疲れたときの箸休めにどうぞ。  

       
 
緑に落ちる
クデイの周辺には樹木が生い茂っていました。もともと黒っぽい東門も苔で覆われ、建物と森の区別がつきません。まさにジャングルの中の遺跡という感じです。
 
前庭
門を抜けるとそこにはテラスが。直射日光が射し込み陽だまりをつくっていました。縁側から中庭を見ているようで、どこかほっとさせる空気が流れていました。
 
まだまだ現役
遺跡といえどもクデイは今でも信仰されている現役の寺院です。祠堂の中央には仏像が置かれ、ろうそくの炎や線香の煙が絶えません。ちらりとお坊さんも見かけました。
 

       
 
原色
ほんのわずか、創建当時の朱色が壁に残っていました。ということは、ここも往時は寺院全体が赤く塗られていたのか。全然雰囲気違っただろうな。平安神宮みたいに。
 
木立ノムコウ
東門から真っ直ぐ西へと境内を横切り、振り返ると陽を浴びた祠堂がありました。光の加減で遺跡は全然違った顔を見せてくれます。それもまた楽しみのひとつです。
 
つっかえ棒
とはいえ、長年の風雨に晒された痛みは隠すべくもありません。遺跡は確実に朽ち始めているのです。そこがまた趣きがあるんだけど。つっかえ棒もまたいとをかし。
 

 
プレ・ループ
 


   
雄大
名前は「神の姿」という意味だそうです。クバル・スピエンからの帰り道、やたらに大きな寺院を見つけて思わず足を停めました。アンコール・ワットやバイヨンにも勝るとも劣らない広大な敷地と、天に聳え立つ祠堂。赤い花崗岩造りがどことなくミャンマーのバガンを思わせます。
   

 
タ・ケウ
 


   
夕陽に染まる
「小回りコースの水晶」タ・ケウ。こちらは「クリスタルの古老」という意味なのだそうな。ここを見るならぜひ夕暮れに。整然と壇を重ねられた美しいピラミッド型の造形を西陽が照らす様は、遺跡全体がまるで燃えているかのようです。木立の道を走っていると突然現れるというドラマチックな展開も粋。体力が余っている人は祠堂まで階段を登ってみましょう。きっとアンコールの森が一望のもとに見渡せるはず。登ってないので保証はできませんけど。
   


   

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