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リーン リーン・・・
夕方、貴志くんの家の電話が鳴った。
「はい、山本です」お母さんがでると
「もしもし、私、桜井小学校1年1組の担任の小津といいます」
「あ!先生・・・」
電話は貴志君の学校の先生からだった。
「このたびはお手数をおかけいたしました。最初に靴を間違えた時に連絡すれば良かったのですが、もう1年生なんだし、自分で解決できるだろうと、子どもにまかせっきりにしてしまいまして・・・
昨日は誰の靴かわからない靴を履いて帰ってきて・・」貴志君のお母さんはあわてて言い訳をした。
「いえいえ、あの大きい白い靴は去年3年生だった子の靴で今年転校した子のものだったようです。学童に置き靴にしていたみたいで、靴だけ忘れていったみたいです。」
「あぁ、そうだったんですか、靴がなくなってどうやって帰ったんだろうと心配していたんです。良かった。」
お母さんは少し安心した。
「今日、山岸くんと山本くんに話を聞いたのですが、最初はやはり山岸くんが靴箱の上下を間違えて山本くんの靴を履いて帰ったようです。」
「あ、息子もそのように言ってました。」
「それで2回目なんですけど、山本くんが言うには自分が靴をはいて上履きを靴箱にしまおうと思ったら下の段に やまぎしまこと と書いた靴があったので、自分の靴だと持って帰ったそうです。」
「え?まことくんが自分で持って帰ったのですか?」
「そうなんですよ、自分はすでに靴をはいているにもかかわらず・・・」
と担任の先生は笑いながら状況を説明して下さった。
「なんだ、じゃぁ、靴はどちらもまことくんの家にあるんですね。良かったぁ。まことくんの靴も失くしてしまったらどうしようと思っていたんですよ。」
お母さんは一安心して、
「いろいろお手数をおかけしました。ありがとうございました。後で山岸くんの家に電話してみます。」
と先生に言うと
「そうですね、連絡してみてください。まだ1年生なのでよろしくお願いいたします」
と電話は切れた。
と、すぐ、また電話のベルが鳴った。
「はい、山本です」お母さんがでると
「もしもし、山岸ですぅ・・」
申し訳なさそうなまことくんのお母さんの声がした。
たかしくんのお母さんがあわてて
「ごめんなさい、もっと早くに連絡すれば良かったんですが子どもにまかせっきりにしていて・・・」
と言い訳をすると
まことくんのお母さんも
「私もまったく気がつかなくて、今子供にいわれて玄関の靴をみたら同じのが2足あるんです、本当にごめんなさい。」
とすっかり恐縮していた。
「いえいえ、こちらも靴に名前がかいてなくて・・・」
たかしくんのお母さんとまことくんのお母さんはお互い靴のことには気がつかなかったこと、子どもにまかせっきりにしてしまったことなど反省した。
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