『S−Report』  6/2号  ナマコの眼でみて現場を歩く 鶴見良行の切り開いた道 


 5月28日、さいたま市のシーノ大宮で、鶴見良行文庫開設記念シンポジウム「アジアと日本と、市民社会のゆくえ」(主催:埼玉大学共生社会研究センター、鶴見良行文庫委員会)が開かれた。

 1994年に亡くなった鶴見良行氏は、市民の立場で『バナナと日本人』『ナマコの眼』などの著作を発表し、多くの市民や研究者、フェアトレード活動などに影響を与え、アジアを日本と結びつける新しい「アジア学」を切り開いた。  埼玉大学共生社会研究センターは「NGO・NPO活動をはじめとする様々な資料=「人びとの記録」を所蔵し、これらを一般公開して」おり、今年6月に、鶴見良行文庫を開設する。鶴見良行文庫には、同氏が遺した膨大な数の蔵書・写真・ノート・カードが収められるとのこと。  このシンポジウムは、その鶴見良行文庫開設の一環であり、鶴見氏の足跡から「アジアと日本と、市民社会のゆくえ」を考えるものである。

 まず、講演として哲学者・鶴見俊輔氏による「鶴見良行の切り開いた道」、作家・池澤夏樹氏による「歩くナマコ――鶴見良行の仕事と希望」が行われた。鶴見俊輔氏は、いとこである良行氏の歩んだ道を語りながら、国家を背負わない立場から現場を歩いて切り開いた業績やその意味を述べ、池澤夏樹氏は良行氏への共感を持って国家存在が薄い地域からみた国家過剰の日本について語った。

 パネル討論では村井吉敬氏(上智大学教員)の司会により、内海愛子氏(恵泉女学園大学教員)、熊岡路矢氏(日本国際ボランティアセンター代表)、中村尚司氏(龍谷大学教員)、宮内泰介氏(北海道大学教員)、吉岡忍氏(作家)など鶴見氏ゆかりの人々によって、「アジアと日本と、市民社会のゆくえ」が論じられた。  アジアと日本の関係について、日本の海外派兵や歴史認識などの問題、スマトラ沖地震・津波被害への日本の市民活動の内容など、それぞれから意見が出された。この中で、国家を背負わず活動する日本の市民・NGOの活動が、アジアの市民と新しい形でつながっていることなどが論じられた。

 また、鶴見氏の調査・研究の手法について多くのことが取り上げられた。徹底して現場を歩くこと、その前に徹底的にその地域を調べること、また、徹底的にその結果を振り返ること。「ナマコの眼でみて現場を歩く」ことは意義ある方法だと語られた。  討論全体では「ナマコ的な」という言葉がキーワードとなり、イデオロギーにとらわれない生活者としての市民(“ナマコ的市民”)が、アジアの市民と新しい連携(“ナマコ的連帯”)を図るということも議論された。そしてパネル討論の最後に、このような論議を専門家・研究者や市民運動家だけでなく広めるには、鶴見良行氏が言ってきたように“誰にでも分かる”ことが重要であると述べられた。

 かつて、鶴見良行氏より小説の構想を何度かお聞きしたことがあった。それは、氏がフィリピンのレナト・コンスタンティーノの本をいろいろと翻訳していた時期で、まだ『バナナと日本人』の執筆に取り掛かる前であったと思うが、アジアからみた日本の「歴史小説」の構想だった。

 その後、誰にでも分かることを目指した『バナナと日本人』などの素晴らしい研究書を発表されたのだが、小説は刊行されていない。“誰にでも分かる”ということの実現のかたちの一つには小説という表現もよいのだろう。 いつか「鶴見良行文庫」を訪れて、”良行さん”の小説の草稿があるかどうか確かめてみたい。

  関係イベント


■さがみはら環境まつり 〜みんなでつながろう 環境情報(エコネット)の輪〜  

市民、事業者、大学、行政が集い、楽しみながら「環境」を感じ、学び、行動するきっかけにするためのお祭りです。平成18年4月開所予定の(仮称)環境情報センターへの夢も語り合います。

◆日時  6月5日(日曜日)正午〜午後5時

◆会場  麻布大学(JR横浜線矢部駅北口徒歩4分)8号館及びその周辺 内容

 1.ホールプログラム「(仮称)環境情報センターへ贈る“メッセージ”」  平成18年度開所予定の「(仮称)環境情報センター」について、どんなセンターにしたいか、どのように活用したいか、センターを通じて何をしたいかに焦点を当て、相模原地域における環境のまちづくりの構想を参加者と一緒に創り上げます。

<1>午後1時〜1時15分  (仮称)環境情報センター設置の意義・趣旨説明(市環境対策課)
<2>午後1時15分〜1時45分  環境パートナーシップ施設の先進的事例の紹介(地球環境パートナーシッププラザ) <3>午後1時45分〜2時55分  (仮称)環境情報センター設置の活用方法についての意見募集・意見交換

分科会1 「市民分科会」 : 自然環境観察員,NPO,ボランティア団体,一般市民等 コーディネーター : 斉藤奈美(さがみはらリサイクル連絡会) →生涯学習としての活用方法,各団体との連携方法

分科会2 「事業者分科会」 : 相模原の環境をよくする会等 コーディネーター : 大掛猪津夫(NPOかながわ環境カウンセラー協議会相模原支部) →企業の環境学習プログラムとの連携、CSRとしてセンター支援

分科会3 「大学分科会」 : 麻布大学教職員・大学生,他大学教員・学生等 コーディネーター : 村山史世(麻布大学) →大学の研究成果・大学生の取組・地域連携方策研究との関連等

分科会4 「子ども分科会」 : 小学生,中学生,高校生等 コーディネーター : 金澤公輔(東京ガス環境エネルギー館) →児童生徒の希望する環境学習

分科会5 「教員分科会」 : 小・中・高等学校の教員 コーディネーター : 岡本弥彦(麻布大学) →学校教育としての活用方法,学校との連携・交流

<4>午後4時5分〜5時  シンポジウム「(仮称」環境情報センターの活用方法」

 5分科会からの報告・要望・提言等を基にした意見交換・研究協議 コーディネーター : 川村研治 パネラー : 斉藤奈美、大掛猪津夫、村山史世、金澤公輔、岡本弥彦

2.ブースプログラム「環境の達人たちが贈る極上メニュー」

◆時間 正午〜5時 ◆会場 8号館教室・屋外  「1.ホールプログラム」と平行して適宜実施します。  
地域で環境保全等に取り組む団体などが提案する体験型・参加型の環境学習ブースや展示ブースを出展します。  リサイクル材を使った工作体験や、低公害自動車の展示、環境配慮製品の配布など、子どもから大人まで楽しめるものなど。

3.特別講演 「環境コミュニティビジネスとCSR」

◆時間  午後3時5分〜4時 ◆会場  百周年記念ホール ◆講師  須藤誠(経済産業省関東経済局 産業部 コミュニティビジネス・NPO活動推進室) 4.特別出展 NPOソフトエネルギープロジェクト  太陽光発電や風力発電の実験、ソーラークッカーを使ったエコクッキング、ソーラーカーの試乗など。 その他 愛・地球博連携企画「EXPOエコマネー」  「さがみはら環境まつり」の会場で企画に参加したり、ブースを見たりするごとにポイントがもらえます。ポイントを貯めると、「さがみはら環境まつり」会場で記念グッズと交換できたり、愛・地球博会場でエコグッズと交換したりすることができます。 ※希望者は直接会場へ。 ※駐車場はありません。車での来場はご遠慮ください。

 お問い合わせ   さがみはら環境まつり実行委員会事務局(環境対策課内)
   電話 042-769-8240    Eメール kankyoutaisaku@city.sagamihara.kanagawa.jp



■ 参加と協働を考えるサロン おでかけサロン IN 川口      
    「総合ボランティア・市民活動センターと協働」     

 協働→参加のまちづくり市民研究会(旧NPOと自治体を考える自主研究会)の「協働でまちをつくるのだ!」では川口ボランティアサポートステーションを取りあげさせて頂きましたが、その後の協働の状況をそれぞれの立場からお聞きするとともに、新しい川口の総合ボランティアセンターの試みについてお聞きし、広く意見の交換をしたいと思います。

●日時:平成17年6月8日(水)午後7時00分〜8時30分

●場所:川口ボランティアサポートステーション  
   〒332-0015 埼玉県川口市川口3−1−1(川口駅下車徒歩2分)

●ゲストスピーカー 
    川口ボランティアサポートステーション  鷲巣所長
    NPO ユニバーサルデザイン・ステップ 小澤代表、小田副代表

●参加費:500円(資料代)
●「参加と協働を考えるサロン」の申し込みは 協働→参加のまちづくり市民研究会(http://machiken.org)まで E-mail:in-fo@machiken.orgまでお申し込みください。 当日参加も大歓迎 

●サロンの内容

1.川口ボランティアサポートステーションと各団体との協働・協力
   川口ボランティアサポートステーション 鷲巣所長(20分程度) 
2.NPOユニバーサルデザイン・ステップと川口ボランティアサポートステ ーションとの協働・協力
    NPOユニバーサルデザイン・ステップ小澤代表、小田副代表(20分程度)
3.川口における総合ボランテイアセンターについて   川口ボランティアサポートステーション(20分程度) 

4.質疑・討論

*サロンの後は恒例のオフサイトミーティングを予定しています。
*お時間にゆとりのある方は是非、こちらの方もご参加ください。
*ゲストを囲んで、協働談義に花を咲かせましょう。(ワイ2ガヤ2)

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