『S−Report』  10/23号  さあ、神戸に行こう!!  − みあこ−みなとフィールドスタディーズ−2 


 10月5日よりみあこ−みなとフィールドスタディーズへ出かけました。今回はその報告の第二回目です。

 「さあ、神戸に行こう!!」

 神戸では「Feel KOBE観光キャンペーン」を11月30日まで実施中。7月19日から全国からの集客の振興をめざして「海フェスタKOBE〜海の祭典2003〜」、1000万ドルの夜景ツアー、灘の酒蔵体験、神戸ジャズストリートなどのイベントを行っている。  

 この「Feel KOBE観光キャンペーン」に合わせて他の観光キャンペーンとは異なるKOBE観光特使という制度を発足させた。このKOBE観光特使はよくある観光大使とは違うものだ。観光大使は主に地元出身の有名人・タレントや地元の人を任命し様々なイベント、CM・メディアに出て、観光をアピールするものである。神戸にも「神戸大使」がいる。
 KOBE観光特使の応募資格は、神戸に愛着をもち、神戸の観光をアピールしてくれる人。そのために「神戸への思い、神戸観光PR活動への提案」をテーマに簡単な論文審査が行われた。

 10月6日、神戸市の新神戸オリエンタルホテルで、このKOBE観光特使認定式典が神戸国際観光コンベンション協会などの主催により開かれた。KOBE観光特使認定式典には全国からKOBE観光特使が集まり、神戸市長などから特使認定証、バッチ、名刺の授与を受け、7日は神戸を知るため、神戸港・六甲山・有馬温泉・洋菓子・日本酒など、神戸の魅力を体験できる「神戸再発見の旅」に出た。

 今まで、有名人・タレント・地元以外の人を観光大使にした例に松江観光大使がある。これは、松江に赴任した企業の支店長、支社長などを任命し、企業のネットワークや個人的人脈をフルに利用してもらってPRしようというものである。しかし、観光大使の大半は有名人・タレント・地元の人以外の人を任命している。

 また、よく見られるような観光客へのキャンペーンに平行して、観光情報の提供を行うため、旅行代理店やマスコミ等を招待し、観光説明会等を実施するのが普通である。

 今回のKOBE観光特使はそのどちらとも違う新しい観光キャンペーンの試み。

 任命されたKOBE観光特使には、事務局より最新の観光情報・優待情報を継続的に提供されるばかりでなく、KOBE観光特使の名刺の裏が優待クーポンとなっており、今後この名刺を神戸の各案内所などに持っていくと各種優待が受けられる予定。(後日発表があるとのこと)  有名人・タレント、旅行代理店、マスコミだけでなく、その土地に愛着がある人と観光事業を推し進めることは、これからの観光の1つの方向性を示しているのではないか。

   さあ、神戸に行こう!!

 神戸の観光/神戸国際観光コンベンション協会  http://feel-kobe.jp/index.html   

  続いて、田中恒明氏によるレポートです。

  「神戸魅力体験ツアー 復興のまちめぐり」

 というわけで、式典の翌日、神戸の魅力を知るための体験ツアーに参加した。用意されたいくつかのコースの中から参加したのは、「復興のまちめぐり」。阪神・淡路大地震をマイナスとしてばかり捉えるのではなく、そこに光を当てて新たな観光資源として見直そうという企画である。

  震災後初めての訪問となった神戸であるが、三宮駅周辺の復活なった街並みに震災の傷跡を見ることは今では難しい。いや、震災の傷跡というより震災以前の神戸というべきか。市の中心部は煌びやかに、新しい街に変貌していた。そうした中心部から最初に向かったのは「人と防災未来センター」である。

 「人と防災未来センター」は震災時の様子や防災の学習を行う施設の「防災未来館」と、いのちについて考えることをテーマとした「ひと未来館」からなる。「防災未来館」では震災時の様子を映像で見ることができるシアターや、ジオラマ模型で再現した崩れた街並みの巡り歩き、震災関連資料の展示など阪神・淡路大震災に関わる様々な体験、学習の施設である。中でも、この施設を特徴づけているのは震災の様子を語り継ぐ「語り部ボランティア」の存在であろう。

  実際の体験を生で聞くことの迫力に来館者は打ちのめされてしまう。私たちの担当の語り部の方は、崩れかけたドアが開かなくなったマンションからの脱出、トイレ問題など避難所生活の大変さ、自分たちで炊き出し隊を結成したこと、災害ボランティアとの協働など私たちが目の当たりにしているかのような迫力で話された。「この8年間、家族で震災を話題にすることはなかった。しかし、語り部をやりたいことを息子達に話したら大反対された。息子達は先輩や幼なじみの遺体を自らの手で掘り起こした経験がある。その時の思いを二度と味わいたくない、という理由からだった。でも、 この体験を語り継ぐことの大切さ、その中で得た人のあたたかさやつながりを大切にしたい、という思いから語り部をしています。」と話された言葉の中に、震災はいまだに続いているという実感を新たにして、目頭を押さえる参加者も多かった。

  次に向かったのは、一番被害が大きかったといわれる新長田地区である。靴やサンダルの生産地として知られ、全国一の規模を誇っていた新長田地区であったが、震災により壊滅状態になった。新長田駅周辺は焼け落ちた商店街も再建され、高層マンションも次々に建てられているが、いまだに空地となっているところも多い。

  こうした新長田地区において、ケミカルシューズ産業の復興と靴の街としての活性化を目指して建設されたのが「シューズプラザ」である。中小メーカーによる靴の販売、手造り靴の販売、インキュベーション施設、芸術・文化活動の場の提供など様々な側面を持つ施設となっている。ここで新長田地区の現状や観光への取り組みなどの話をうかがった。

  長田の新たな観光への取り組みは、震災で風景がなくなったという喪失感の中で昔からあったものをもう一度作ってみたいという思いから発している。「身近にあるものの良さを再認識、再発見すること」「それをちょっと掘り起こすこと」「何とかするという商店主達の思いが溶け合って、合金になった」「人とつながっていくことの値打ちを実感した」と神戸長田コンベンション協議会会長。それでは長田の観光とは。魅力を自分で探すこと、ということに尽きる。ただし、そのためのツールは用意されている。その一つが長田名物といわれる「そばめし」や「お好み焼き」、「ぼっかけ」など食べ物の活用である。「ぼっかけ」とは牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだもので、これをそばめしやうどんに入れるなど様々な使い方がされている。新長田地区の飲食店マップと、何店かで使える利用券を渡された私たちは、地図を片手に街中を歩き回る。すると、目的の店や食べ物以外にも様々なものが見えてくる。焼け残った古い商店街で見つけた瓦煎餅、広いアーケードなどなど。確かに巡り歩くことによって、街が見えてくる。

  「自分の目で鉱脈を見つけて欲しい。どこの街にも鉱脈はある。したがってどこでも新しい観光はできる」と会長。そうした街の商店や企業の思いを具体化したのが両者が共同して開発した「ぼっかけカレー」「ぼっかけカレーラーメン」などのレトルトやインスタント食品である。新長田の”新名物”として広めたいと意気込んでいる。

  神戸の街はきれいになりつつある。しかし、人の心や生活には”震災”が重くのしかかっている。そうした中で、自分たちの街を、自分たちを何とかしたいという思いが伝わってくる。そこで重要なのが「人と人のつながり」ということである。観光という視点からすれば、他地域の人とつながることで神戸の街自体が活力を得、また、来訪者も神戸の街の魅力を知る、そんな相互作用が生み出せればと思う。


 

  地域情報研究所の講座・出展予定  

 
 □ 今後の予定について □

 エコプロダクツ2003  

 日時: 12月11日-13日  

 場所:東京ビックサイト
 
内容:今回、地域情報研究所(NGO)ではエコクリニックフェイシス・麻布大学環境政策学科の学生と「エコプロダクツ2003」に参加し、学生、NGOが子供や住民と共に地域、商店街において実施可能な方法で生きたエコプロダクツの活用を行うことを展示、発表します。

  エコプロダクツ2003の当ブース  
  http://xmldb.exism.co.jp/eco2003/search.asp?ID=85r0z
      
 

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