『S−Report』  7/24号    地域通貨という名の知恵                −もう一度地域通貨−4
                        商店街・地域通貨サミットwithピーナッツ  


 地域通貨に参加している人たちは「地域通貨はたのしい」といいます。
 「−まちと商店街の活性化を考える− 商店街・地域通貨サミットwithピーナッツ」が7月16日から19日まで千葉市の松波公民館で開かれました。
 このサミットは特定非営利活動法人千葉まちづくりサポートセンターが開催し、千葉県、千葉市、(財)千葉市産業振興財団、(社)千葉県商工会議所連合会、千葉県商工会連合会の共催を得て開かれ、地域通貨ピーナッツを導入している全国的に有名な千葉市のゆりの木商店街のと交流をはかりながら行われたものです。
 海保眞氏(ゆりの木商店街・同センター運営委員)から地域通貨ピーナッツの効果について、村山和彦氏(みんなのまち・同センター運営委員)からは地域通貨ピーナッツ設計意図について説明があり、会期中には各地の地域通貨実践者の事例報告がりました。このサミットでは実際に近くの旅館でも地域通貨で宿泊が出来てゆりの木商店街の飲食店で地域通貨ピーナッツを使って昼食や夕食をとる利用体験もしました。

 その実例として商店街で日本銀行券と同じように使用できる東京都練馬区ニュー北町商店街の「ガウ」(特活 北町大家族)、空洞化が進んでいた高知市菜園場〈さえんば〉商店街の「エンバサ」(菜園場商店街を含む8商店街、高知県中小企業団体中央会、高知市、高知商工会議所)、加盟店で代金の一部としても使える山梨県甲府市周辺の「元気」(元気交換市場)などの商店街で使える事例が報告されました。
 福祉・サービスの交換に多く使われている群馬県群馬町周辺の「しるく」(特活 じゃんけんぽん)、各種サポートに使える東京都町田市中心市街地周辺のまちだ大福帳「花」(グループ「時間の花」)、助け合いに使える宮城県登米町周辺「ポートン」(座・ハイカラ)、生活クラブの研究会が立ち上げた生活支援のための神奈川県大和市北部「クラ」(クラブママーズ)などの地域活性化・福祉の事例が報告されました。
 また、これからの事例として三条市が発行し運営の一部をNPOに委託している新潟県三条市内 「らて」(新潟県三条市)などもありました。
 これらの地域通貨はとてもすばらしいものばかりですが、重要なことはこれらの地域通貨は生活の中から生み出された創意と工夫によって運営されていることです。地域通貨にもいろいろな理論もあるのですが、今回の発表者たちの地域通貨の事例はそれを軽く超えていました。

 16日、都内で開かれた金融経済教育を考えるつどいで福井俊彦日銀総裁が地域通貨について経済活性化の一助としてとして歓迎する姿勢を示し、財務省が地域通貨の普及が税収減につながるのではないかという質問に答えて、総裁は長期的には地域通貨によって経済活性化が図られて税収は増えるという趣旨の発言をしました。  また、総務省は民間が運営する地域通貨への財政支援などのも含めた「新しい経済活動を伴う地域経済の活性化に関する研究会」を千葉商科大学加藤寛学長を座長に、堂本暁子千葉県知事らをメンバーとして設置を予定しており、早ければ来年度にもモデル事業の実用実験を行うようです。
 これまで、財務省は地域通貨に対して通貨制度の混乱を理由に慎重な姿勢を示してきたのですが、総務省ばかりでなく、日本銀行券を発行する日銀総裁までも地域通貨に積極的な姿勢を示すようになると方針転換を考えざるを得なくなってくるでしょう。

 商店街と地域通貨をテーマとすると、とかく経済活性化のために地域通貨をどう使うかという議論に陥りやすいのですが、このサミットではこのように地域活性化・福祉と経済活性化の両立を実践している報告がなされ、参加者からも活発な議論がありました。そして、このサミットの結論のひとつは、「地域活性化・福祉と経済活性化は両輪のであり、短期的な経済活性化だけを目指したものはうまくいかない」ということでした。
 政府の地域通貨への対応はこの経済活性化の為だけの活用を目的としているようですが、このような考え違いのまま地域通貨を政府が導入を奨励してもうまくいかないでしょう。  また、経済の専門家や政府の経済官僚から言わせると「創意と工夫による地域通貨などはせいぜい活性化にしか役立たない」ということになるかもしれません。しかし、この経済の専門家の理論や経済官僚の政策の誤りが今の経済の低迷を招いている原因のひとつであることは明らかです。言い換えれば、現状は「経済の専門家の理論や経済官僚の政策などは役に立たないどころか、生活を悪化させているに過ぎない」のです。(6/19号「二つの新しい政策形成システム  −ニュー パブリック マネジメントを超えて」 )  

 さて、「商店街・地域通貨サミットwithピーナッツ」の実例もサミット自体もすばらしいものでしたが、重要なことは参加者が地域通貨は楽しいと話していることです。もちろん、人々のつながりをつくり、助け合いをしたり、経済を活性化させる地域通貨を運営するのは楽なことではありませんが、その苦労も含めて楽しいと発表者のみなさんは楽しいと言っていました。
 そして、その言葉には生活の中から生み出された創意と工夫による地域通貨という名の知恵があります。この地域通貨という名の知恵は地域通貨運営のノウハウという意味の知恵だけでなく、楽しく生きていくための知恵という経済の専門家の理論や経済官僚の政策では決して生み出せないものです。

  地域情報研究所の講座・出展予定  

 
□ 今後の予定について □

 第21回開発教育全国研究集会で自主ラウンドテーブルを開催予定です。 但し、全国研究集会自体の参加は締め切られました。

 「平和を築く学び〜世界の「現実」と開発教育」 第21回 開発教育全国研究集会  自主ラウンドテーブル

 「持続可能な地域開発におけるICTリテラシィー」
     eエンパワーメント −Beyond Digital Divide Vol1

  日時: 8月2日16:30-17:20

  場所: 立教大学池袋キャンパス

  内容:

  ここでは、持続可能な地域開発における情報をめぐる問題(デジタルデバイド等)を克服するための努力や試みを知り、これに参加できる能力と態度、特に、ICTリテラシィーの検討を行う。特に、国内外の現場が持つ経験をいかしながら「平和を築く学び」も含めて持続可能な地域開発におけるICTリテラシーを検討する。 具体的な事例を提示し、これに今年開かれた国連「世界情報社会サミット(WSIS)」の地域会合、国連地域開発センターe-ワークショップ「持続可能な地域開発におけるICT の活用戦略」の成果も加味し、参加者のもつ豊かな経験や知識によって持続可能な地域開発におけるICTリテラシーを検討したい。  このことにより、「地域開発」の進行により社会的格差や地域の不均衡を被り、さらにICTの進展によりデジタルデバイドをも被る可能性ある多くの人々がeエンパワーメントできる可能性について論議できればと考える。

  第21回 開発教育全国研究集会 概要

  ―平和を築く学び 〜世界の「現実」と開発教育〜 

○ 日 程: 2003年8月2日(土)・3(日) (8月1日にプレ・イベントがあります)
○ 場 所: 立教大学池袋キャンパス  (東京都豊島区/JR池袋駅から徒歩7分)
○ 主 催:(特活)開発教育協会(DEAR)         
〒169−0051 新宿区西早稲田2ー3ー18ー73 TEL: 03-3207-8085 FAX: 03-3207-8486
  http://www.dear.or.jp/zenken21.htm http://www.dear.or.jp


  地域におけるNPO・ボランティア活動の実践から考えよう


 下記の講座は第1回目は終了しておりますが、2回目からの参加が可能です。

  〜地域におけるNPO・ボランティア活動の実践から考えよう〜    

  NPO・ボランティアグループのボランティア活動者のエンパワメ ント(力の回復)をめざす連続4回講座です。     *全回出席をお願いしています


  第1回 セルフワークショップとシェアリング    〜現状の課題を共有します  
   日時:7月27日(日)13:00〜17:00

  第2回:記録のとり方・会議のファシリテート   〜グループの話し合いを円滑にします
   日時:9月23日(火・祝)13:00〜17:00

  第3回:ボランティアのリクルート 又は 情報の扱い方(予定)  
   日時:12月中   *参加者の皆様と調整

 第4回:他団体との協働やネットワーキング   
    日時:平成16年2〜3月 *参加者の皆様と調整

講師(全回):鮎川葉子さん(シーズ=市民活動を支える市民の会)
  プロフィール:  1995年よりシーズの活動にボランティアとして参加。同年より 東京ボランティア市民活動センターのボランティアコーディネーター 研修体系検討委員としてかかわり、基礎研修講師としてコーディネー ター論、相談技法などを担当する。2000年11月よりシーズの スタッフとなる。 1992年よりAIDS問題に関する市民組織「HIVと人権・情報 センター」に参加、197年、AIDSの啓発、問題理解を中心とした 民間団体「エイズを伝えるネットワークTENCAI」を設立。

会場:阿佐ヶ谷地域区民センター(杉並区阿佐谷南1−47−17)   
 JR阿佐ヶ谷駅から徒歩3分

対象:NPO・ボランティアグループ又は個人のボランティア活動者で、活動の成長を目指す方(全回出席できる方)

定員:35人 参加費:3000円(全回あわせて/初回に頂戴します)

お申込み:
氏名・団体(所属)←あればで結構です・住所・電話番号・ファクス番号・電子メールアドレス・本講座で学びたいことをお書きの上、下記までファクスまたは電話違メールでお申込み下さい。   

  杉並NPO・ボランティア活動推進センター 担当:疋田  

   ファクス 03−5306−6597   電子メール ldr06261@nifty.ne.jp   

  お問合せは 電話 03−5306−3939 まで。    

 ☆多様な思いを持ったボランティアの一人ひとりの力が発揮され、社会 を変えていく力について考えるリーダーシップ連続講座です。コミュニ ケーション方法・意思決定など必要な技術を学び実践に結び付けていき ます。各回の間における自らの実践活動を重視し、次回に振り返りを行 います。自分や自分たちの団体にあったリーダーシップについて考えてみませんか。

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