『S−Report』  7/10号     市民と芸術の距離を縮め、市民をつなぐ試み −平田オリザとキラリ☆ふじみをめぐる物語


 舞台の上に客席があった。
 802席ある「キラリ☆ふじみ」のメインホールの舞台の上につくられた「舞台上仮設劇場」で劇団青年団の『海よりも長い夜』は上演されました。
 『海よりも長い夜』(1999年初演)は劇団青年団主宰者で劇作家の平田オリザ氏の代表作のひとつで、寮廃止反対運動から市民運動に発展したある集会を巡る人間関係を描き、大きな波紋を呼んだものです。
 とてもよい芝居でしたが、残念ながら今回のテーマは演劇ではなく、今回の舞台は「キラリ☆ふじみ」、そしてこの市民文化会館をめぐる物語です。

 首都圏の典型的なベッドタウン埼玉県富士見市の文化会館「キラリ☆ふじみ」は「豊かな市民文化をはぐくみ創造する生涯学習都市実現のための芸術文化の中心施設」で、ひとづくり、まちづくり、未来づくりをコンセプトに「市民が日常的に文化に関わる」ことを目指して、と言うとどこにでもあるような市民文化会館のように聞こえますが、「キラリ☆ふじみ」に建設から携わった関繁雄館長に話を聞くと、基本構想の検討の段階から市民の意見を丁寧に聞き、反映してきたそうです。現在は、運営の一部を市民のアートボランティア「キラリスト」たちが担い、よくある「文化芸術」の公演ばかりでなく、子供たちや障害を抱えた人たちと行う演劇ワークショップなども行われています。
 これらの試みはアートプロデューサーに就任した平田オリザ氏の力によるところが大きいということで、『海よりも長い夜』を公演中の「キラリ☆ふじみ」で平田氏に話を聞ききました。
 平田氏によると市民の要請でこの職についたので、よくある市長がつれてきたというような文化人プロデューサーではない市民提案型のアートプロデューサーになることができて、「キラリ☆ふじみ」に関わっていくうちに、ここでモデルケースをつくれば全国の公共ホールが変わっていく可能性が提示できるということを考えて始めたそうです。

 「キラリ☆ふじみ」は池袋から25分程度のところの郊外にあり、東京に芝居を見に行ける所に60億円で市が劇場を建てたのですが、市民としてはこの劇場をつくらないということも選択も考えられるわけです。
 しかし、あえて60億もかけてつくったことに対して、平田氏は出来た後からにせよアートプロデューサーの職に就いたことを重くみて、この「キラリ☆ふじみ」をこのように位置づけて活動しています。

「たった25分と思うかもしれないけど池袋まで行けない人がいる。その人たちのための劇場にまずしなくてはならない。要するに公共ホールというのは障害者のひとであったり、若者であったり、高齢者の人であったりという社会的弱者のための場所ではなくてはいけないない。また、これまで劇場に行く習慣の無かった人たちが近所に出来たから行ってみようという人たちのための施設にならなくてはならない。  しかし、今までの日本の公共ホールはそうはなっていない。こういうものを造ると行政は誰に意見を聞くかというと、地元の文化団体と呼ばれるサークルの人たちに意見を聞くわけです。この人たちは中産階級ですから社会的弱者ではない、ほっといても劇場に来る人たちなんです。そこに来られない人、弱者のためにこそ、公共の劇場の意味があるんですね。
 今、取り組んでいるのは障害者の方たちに、障害者の施設は単館では日々の運営で手一杯ですから、ここで芸術に触れたり、参加する機会をもってもらう、あるいは、今年度は一校だけでモデル校として中学校で総合的学習の時間のプログラムを実施して、今後は劇場がまた受け皿になるということも計画しています。
 従来の地域社会というのは完全に壊れてしまった訳ですから、それに代わる「人工的な新しい広場」と呼んでいますが、そういう出会いの広場を人工的につくっていかないがぎりは、今の人たち、特に子供たちは他者と出会う場所がないわけです。こういうことは、学校や福祉施設などではもうできない。学校はもう出会いの場としては機能していませんから。  そこで公共文化施設が果たす役割は大きいと思う。」
  平田氏のインタビューより (長岡)

 あえて、舞台の上に客席を設けて観客とほどよく距離を近づける平田オリザ氏の演劇のように、「キラリ☆ふじみ」で行われているのは市民と芸術の距離を縮め、市民をつなぐ試みではないでしょうか。
 弱者の劇場と地域の出会いの人工的広場としての地域の文化会館と新しいプログラムの組み合わせは、単なる文化振興にとどまらない地域再生のひとつのモデルになる可能性を秘めています。

 … 平田オリザプロフィール …

 1962年生まれ。

 劇作家・演出家・桜美林大学助教授
 青年団主宰・こまばアゴラ劇場支配人

  95年「東京ノート」で第39回岸田國士戯曲賞、97年「月の岬」(松田正隆作、平田オリザ演出)で第5回読売演劇大賞最優秀作品賞・優秀演出家賞、02年「上野動物園再々襲撃」(脚本・構成・演出)で第9回読売演劇大賞優秀作品賞、03年「その河をこえて、五月」(日韓共同作・演出/新国立劇場制作)で第2回朝日舞台芸術賞グランプリを受賞。
 海外でも93年「ソウル市民」をソウル、釜山にて韓国語で上演。
  2000年には「東京ノート」フランス語版(共同演出:フレデリック・フィスバック)をパリ他フランス国内で巡演。 青年団によるオリジナルの「東京ノート」も韓国、北米、フランスほかで上演。

 戯曲以外の著書に、『演劇入門』講談社、『話し言葉の日本語』(井上ひさし氏との対談集)小学館、『芸術立国論』集英社など多数。

  劇団 青年団 http://www.seinendan.org/

  埼玉ではじめようNPOと自治体の協働“はじめの一歩”


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┃      NPOと自治体を考える自主研究会 公開学習会part2       ┃  
┃         埼玉ではじめようNPOと自治体の協働“はじめの一歩”   ┃
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  これからの行政運営や新しい公共サービスのあり方を考えるうえで、 今、「NPOと自治体の協働」が重要なテーマとなっています。 それでは、具体的に「協働」を進めるためには、どんな方法があるのでしょうか? そもそも、どんなことを「協働」と呼ぶのでしょうか? シリーズ第2回目となる今回は、「よりよい協働を進めるしくみ」について、 事例紹介とワークショップをとおして、参加者のみなさんといっしょに考えます 。

 第1部▼事例紹介  よりよい協働を進めるしくみとは?   ──まつやまNPOサポートセンターの事例から

 菊池 修さん(NPO法人えひめNPOセンター代表理事)  宇都宮 英明さん(松山市市民活動政策課主幹) まつやまNPOサポートセンターは、2002年7月、2年間の検討期間を経て愛媛県松山市が設置し、えひめNPOセンターが運営する官設民営のNPO・市民活動支援拠点。全国でも注目されている、徹底した市民・NPO参加の設置プロセスと“NPOと自治体の協働促進”にテーマを絞ったユニークな事業内容について、運営団体・管理担当課の双方からお話をうかがいます。

 第2部▼ワークショップ  “あるある事例”から協働を考えよう!

  よりよい協働を進めるために必要なこと、私たちができることは何でしょうか? 具体的な事例をもとに、グループワークでNPO・自治体双方の課題を探り、よりよい協働を進めるために必要なしくみや手法を考えます。

●日 時:2003年7月26日(土)13:30〜16:30
●会 場:武蔵浦和合同庁舎3階第2会議室  ※JR武蔵野線・埼京線武蔵浦和駅より徒歩1分。
●定 員:60名 ※申込先着順 ●参加費:1,500円 ※当日受付にてお支払いください。
●後 援:埼玉県 ※申請中
●主 催:NPOと自治体を考える自主研究会  
  事務局 特定非営利活動法人さいたまNPOセンター(担当:宮崎)  
  さいたま市浦和区岸町4-25-15 小松ビル301
  TEL:048-835-4311 FAX:048-835-4312  E-mail:smiyazaki@sa-npo.org web:www.sa-npo.org

●申込み:下記のフォームにご記入のうえ、上記宛にE-mail・FAX・郵送のいずれか でお申込みください。お申込みいただいた方のうち、定員に達してご参加いただけな い方のみ、折り返しご連絡いたします。

●お申込みフォーム

NPOと自治体の協働はじめの一歩part2への参加を申込みます。

お名前:
団体名/所属先:
ご住所:

TEL:
FAX: E-mail:
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※申込み先E-mailアドレス:smiyazaki@sa-npo.org
 

  NEC・アースウォッチ教師フェローシップ



  NEC・アースウォッチ教師フェローシップ

 清里のヤマネ  〜 天然記念物のヤマネと、ヤマネの住む森や山の保全方法を提示するための生態調査 〜

 探査地 山梨県北巨摩郡八ヶ岳南麓の清里高原

 主任研究者 湊 秋作 博士(キープ協会やまねミュージアム館長)
 スタッフ 杉山慎二、若林千賀子、佐藤良晴、世知原順子、岩渕真奈美、中山文、湊ちせ

 現地探査日 2003年7月29日−8月1日
 募集人数 10名

  調査の概要

  ヤマネはネズミなどと同じげっし類で、世界一のネボスケといわれ、太古の昔から日本に住んでいる哺乳動物の一つです。日本への固有度が高い生きた化石といわれています。世界には26種類ほどの仲間がヨーロッパ、アフリカ、中央アジア、中国、日本に生息しています。体長約8cm、体重18gぐらい、尾は5cmほどでふさふさした毛が生えており、背中には1本の黒い筋があります。ニホンヤマネは日本特産種で国指定の天然記念物です。

詳細・申込・お問合せ
特定非営利活動法人アースウォッチ・ジャパン
〒102-0075 東京都千代田区三番町24-25 三番町TYプラザ5F
Tel. 03-3511-3364 Fax 03-3511-3364 e-mail: info@earthwatch.jp
URL: http://www.earthwatch.jp/

 

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