『S−Report』  7/3号     地域で自分のやりたいことを実現するために −コミュニティとアートの場合


 先日、豊島区池袋の創形美術学校で地域情報研究所でお話をさせて頂きました。
 創形美術学校は美術の作家育成を目的として1969年に創設され、現在は絵画造形と版画専攻のファインアート科やグラフィックデザインとイラストレーション専攻のビジュアルデザイン科を擁し、美術系学校の卒業生を対象とした研究科を開設しています。

  この程、この創形美術学校では自主活動として藤山貴司校長が学生と共に『こども美術フィールド・ワーク研究会』を発足させました。

 この会は昨年より始めた近隣、地域の小学校へのアートサポーターの活動を踏まえてより発展的に活動のワクを広げようと考えて発足したものです。社会と美術・個と他者・地域と国際化さまざまなコンテンツが融解しある意味では、より自由に又は深い混乱を生んでいる状況に今日があると思います。
 美術を学び表現者としてどう生きて行くのか。時代の空気の先端にさらされているこどもという存在を通して、美術がそして個人が何が出来るのか又、こどもという世界でどんな事が起きてどんな状況にあるのか。さまざまな現場に出向いて行きそこで何を見つ生み出せるのか。まさに、社会をフィールドにしてどんな関わりが出来るのかそれぞれの体験を共通の知的資源として共有することで社会に開かれた表現者として生きていく知恵を研究、実践する事を大きな目標とした会です。
 具体的にはアートサポーターとしての活動、絵画造形教室へのポランティア体験、子供美術に関わっている方との出会い、など月1回ぐらいのペースでできればと考えています。
 『こども美術フィールド・ワーク研究会』創形美術学校

 さて、今回はこども美術フィールド・ワーク研究会の今後の参考になればと『地域で自分のやりたいことを実現するために−コミュニティとアート』についてお話ししました。この前半はコミュニティとアートをテーマにした基礎的なことを、後半は具体的な実例をお話ししました。
 まず、『コミュニティとアートについて』をテーマに仮に『地域の子供たちのための美術展』を行う場合についてお話しました。
 最初に、Aさんは『地域の子供たちのための美術展』を行うために役所にお願いに行き、いろいろ苦労した末に補助金を貰うことができたが、次の年に財政悪化で打ちきられてしまったという例を御紹介しました。 
 次に、Bさんは同じ趣旨で会社にお願いに行っていろいろな会社で予算がないと断られて続けて、やっと見つけたスポンサーも企業の宣伝を露骨に出してきて、『地域の子供たちのための美術展』が違ったものになってしまったということをお話ししました。
 そして、Cさんは自分たちがボランティアで『地域の子供たちのための美術展』を行い、それを続けることができましたが、いつも費用や地域の人々理解をえるのが難しいということを感じています。
 最後に、Dさんは『地域の子供たちのための美術展』のためにこれらをすべてやってみました。

 さて、ここでお話したのは、地域で自分のやりたいことを実現するために必要なことについてです。
 『地域の子供たちのための美術展』のためにどのやり方をとるにせよ、マネジメントとコミュニティ・ビジネスということが必要になります。
 マネジメントというのは『利益を上げるための効率的な仕事』のことばかりでなくではなく、『きちんとものごとを運営するやり方』だと言うことを説明しました。
 一般に、ビジネスは『利益を上げるための事業』のことですが、『コミュニティ・ビジネス』は『地域で地域のために継続的にものごとを行うための方法』であるということをお話をしました。

 次に、アートプロジェクトの実例としてアートユニバシアードと東京ポケット計画を取り上げました。(このお話はいずれ)  そして、アートとコミュニティビジネスの事例として秋葉屋ドットコムのアートグッズ商品化計画を取り上げ、次のようなお話をしました。

「電気の街『秋葉原』をイメージした秋葉原独自の商品を創り出していくこと、街にある不要となった電気部品をリサイクルして活用すること、学生達の若い感性で商品を開発していくことを目標として、アートギャラリー経営者などが中心となり『秋葉屋ドットコム』が生まれました。活動にあたっては、千代田区まちづくりサポート事業の助成金を獲得することで、この取り組みの財政的基盤を得ました。
 美術系の学生約30人が参加し、配線基盤を使ったバッグ、コードやヒューズを使ったベルトなど学生から70点もの作品提案がなされ、この活動は新聞などメディアでも取り上げられました。その中から数点、改良を重ねて実際に商品化する計画が現在進められています。

 この活動を通じて、学生にとっては製品化・商品化を実際に行うことの難しさ(コスト、安全性、ニーズなどビジネスとしての要素)を学ぶとともに、自分達でやりとげたあるいは新聞などで取り上げられるなど社会的評価を得られたことで自信を持つことが出来ました。その結果として、就職にも有利に働いたり、新しいことに取り組む学生も出てきました。

 しかし、『秋葉原』=『リサイクル』と結びついては困るという商店街の人もいます。このコミュニティビジネスの継続性という観点からは地域の人とどう折り合いをつけて、商品化を進めるかが課題となっています。 この事例からは次のことが言えるかと思います。
 コミュニティビジネスあるいはその前提となる地域活動への支援(資金面なども含めて)はいろいろあること、実際に社会や地域に入るといろいろなことが見えてくること、学生の新しい感性や専門性が色々な場面で必要とされていること、それに関わる人たちにとって大きな自信につながること、社会や地域に対してアピールしていくこと、こうした点を考慮して地域活動なりその先にあるコミュニティビジネスにつなげていって欲しいと思います。」(田中恒明)

 今回は、『地域の子供たちのための美術展』を例として、どこかのお金をあてにするのではなく自分たちで計画を立てそのプログラムを維持する費用を捻出し実行するということが大事だということを申し上げました。また、自分のやりたいことが地域の人々のためにもなるもので、このような姿勢があれば行政や企業も協力してくれる可能性が高くなるいうことをお話しました。
 そして、そのためにマネジメントとコミュニティ・ビジネスがある程度必要であるということもお伝えしたつもりです。

 これは、アーチストを目指す若者たちにお話したことですが、これはアートに限らず地域で地域の人々のためにもなり、自分のやりたいことを実現するためには必要なことではないでしょうか

  地域情報研究所の講座・出展予定


 □ 今後の予定について □

  おぎくぼ塾 2003  7月9日 18:00 講座  阿佐ヶ谷地域区民センター

  「まちづくりの動向−自転車と学生」 (地域情報研究所)  

  現在の過度の自動車中心社会は中心市街地の衰退を引き起こすばかりでなく、現在の地球環境のもとでは環境の著しい悪化の要因のひとつでもあります。  地域の歩行者と自転車優先の地域づくりをすすめるのは、人と自然の共生のためでもありますが、これから住民の高齢化や障害を持つ方々との共生を考えると歩行者と自転車優先の街づくりはこれからのまちづくりには欠かせないものです  また、最近傾向として、まちづくり・地域づくり、NPO・NGOや市民活動で大学や学生との「地域での協力」も数多く行われていますが、それをさらに進めて学生の自主的な活動を尊重し、地域やNPO・市民活動の側も学生を単なるお手伝いとしてではなく、インターン・パートーナーとして迎え入れる体制づくりを考えなくてはならないのではないでしょうか。  
 

  公益法人改革オンブズマン


 6月27日の閣議で「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」が決定した。
 内容は、今後、新たに非営利法人制度を創設し、2004年末までを目途に内閣官房を中心に基本的枠組みの具体化と税制上の措置を検討、05年度末までに法整備を目指すというもの。
 内閣官房行政改革推進事務局  http://www.gyoukaku.go.jp/news/h15/news0627.html

 これに対して「公開シンポジウム−公益法人改革とNPO」(主催 明治大学経営学部、共同企画 公益法人改革オンブズマン)が千代田区の明治大学で28日に開催された。

 既に、6月10日に「公益法人改革に関する行革大綱への市民勧告」を政府、与党などに申し入れている公益法人改革オンブズマンでは、30日に今回の閣議決定に対する声明文を出した。

 「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」(平成15年6月27日、閣議決定)に対する声明
 
 公益法人改革オンブズマン(PDF形式)  http://www.houjin-ombudsman.org/seimei.pdf  

  各地でシンポジウムなどを行ってきた公益法人改革オンブズマンでは、今後も市民、公益法人、NGO・NPOなどと一緒になって幅広いキャンペーンを続けるとのこと。

  公益法人改革オンブズマン  http://www.houjin-ombudsman.org/

 「公益法人改革に関する行革大綱への市民勧告」(PDF形式)
 http://www.houjin-ombudsman.org/civil.pdf

 『NPO・公益法人改革の罠─市民社会(シビルソサエティ)への提言』株式会社第一書林
   http://www.npo-sc.org/book/wana
 

   グリーンマップ


 グリーンマップ創始者のウエンディ・ブラウアーが1年ぶりに来日します。 下記のとおり、公開プログラムが開催されますので、ご案内いたします。 グリーンマップにつきましては、下記ホームページをご覧下さい。

 グリーンマップ・ジャパン: http://greenmap.jp  
 グリーンマップ・システム: http://www.greenmap.org

★「鎌倉と世界のグリーンマップ」

 ”歴史と文化の鎌倉を描こう、グリーンマップで世界を歩こう” <展示会>

 日時 7月5日(土)6日(日) 午前10時〜午後5時
 会場 かまくら春秋ギャラリー(鎌倉駅東口から徒歩7分) 鎌倉市小町2−14−7  入場無料

 ・若宮大路のグリーンマップ
 ・世界のグリーンマップと日本各地のグリーンマップ
 ・アイコンツリー&オリジナルアイコン

 <シンポジウム>

 日時 7月6日(日) 午後3時〜4時半
 会場 由比ガ浜公会堂 (鎌倉駅西口から徒歩10分)   
  鎌倉市由比ガ浜2−7−16 tel: 0467-22-1662   
  http://greenmap.jp/temp/yuigahama-kokaido.gif
 参加費 500円(資料代含む)  
 

  まちのカルシウム工房


 まちのカルシウム工房さんから「まちのカルシウム工房」サイトを開設のお知らせです。

   まちのカルシウム工房 http://www4.famille.ne.jp/~honebuto/
 

  社会情報学とは何か 



 社会情報学とは何か −デジタルメディアと公共性−

 <主催:東工大JCプロジェクト実行委員会>

 混迷する社会。錯綜する情報。益々多元化するメディアの中で生きる我々には、指針となる地図が必要です。社会情報学はまさにこの地図となるべく構想された新たな学問です。第一線の講師陣とともに、社会情報学の理論と実践を学び、現代情報社会を読み解いていきましょう。

 7/12  1 デジタルメディアと公共性学習院大教授(元東工大助教授)遠藤  薫
        2 マスメディアと公共性早大教授  伊藤 守

 7/26  3 インターネットと地域社会東洋大教授 小林宏一
        4 電子自治体の構築聖徳大助教授 五藤 寿樹
 8/9    5 不確実性のもとでの集団意思決定群馬大教授  富山 慶典
        6 電子民主主義の未来同志社大教授 新川 達郎

  *この講座は、東工大社会理工学研究科価値システム専攻の教員が、企画・プロデュースするものです。

  日  時  2003年7月12日〜8月9日  (全3回) 毎週土曜日 13:00〜16:00
  参加費  (税込) 会員・一般とも  9,000円(入会金不要)
  場  所  東京工業大学 大岡山キャンパス内 西9号館707号室

  お申し込み先 新宿住友ビル4階 朝日カルチャーセンター
  電話予約・振り込みなどの問い合わせは 03−3344−1945


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