『S−Report』  6/19号  二つの新しい政策形成システム  −ニュー パブリック マネジメントを超えて


 政策形成システムに関しての二つのシンポジウムがありました。
 今月6・7日にRIETI政策シンポジウム「21世紀の政策形成〜政策のプロには何が求められるか〜」"Professional Approaches to Policy Making - Beyond New Public Management"(独立行政法人経済産業研究所)が開かれました。

 90年代における主要先進国の行政改革のテーマは、効率的で小さな政府を目指すために、いかにNPM(New Public Management)的な行政管理手法を導入するかであったといえます。
 他方、90年代を通じて、政策形成を巡る環境は複雑化しました。政策形成に求められるスピードと専門性が飛躍的に拡大し、政策は、「市場」の信頼に耐えうるものでなければならなくなり、政策形成における国民国家の役割が相対化しました。
 こうした事態を踏まえて、各国の行政の現場においても、90年代を通じて行われた行政管理への民間的手法の導入というアプローチを超えて、新たな環境の下で政策形成を行うための手法やそれを支える行政官等の能力のあり方、さらにその行政内外での育成が課題となっています。
 我が国においても、現在検討が行われている公務員制度改革において、New Public Management的なアプローチの採用が検討されているとともに、公務員の人事政策において能力評価を基礎とすることが検討されています。 下記のサイトに詳細があります。
 http://www.rieti.go.jp/jp/events/03060601/info.html

 このRIETI政策シンポジウムは経済産業省の自身の新しい政策立案のための「政策形成プロフェショナルシリーズプロジェクト」の一環として実施されました。
 主に、政策プロフェショナルとしての官僚の制度・コンピテンシー(能力)・教育制度が語られました。特に、官僚の政策に関するコンピテンシー(能力)や公共政策大学院のあり方などこれからの政策プロフェショナルとしての官僚のあり方に関わる重要な論議がありました。

 5月23日には「NPOの政策提案力を考える円卓会議」(通称アリスセンター 特定非営利活動法人まちづくり情報センターかながわ)が開かれました。
 アリスセンターでは、2003年4月からトヨタ財団市民社会プロジェクト助成を受け、せんだい・みやぎNPOセンター、市民活動センター神戸と共同で、「NPOの政策提案力の開発と、NPOの参画を保障する自治体の政策形成システムの提案」プロジェクト(NPOアドボカシープロジェクト)を進めています。

 去る5月23日には、神奈川県内・近県で、NPOの政策提案支援を行っている民間支援組織関係者や、政策提案を実践しているNPO関係者が集まり、NPOが政策提案をどのように進めていくかについて討議する円卓会議を行いました。この円卓会議のオブザーバー参加をらびっとにゅうずで募ったところ、数日で全国から定員を超える多数のお申し込みがあり、当日は立ち見も出る中で熱のこもった議論が展開されました。
 http://www.jca.apc.org/alice/top/topics.html#6.5.2  

  この円卓会議は「NPOの政策提案力の開発と、NPOの参画を保障する自治体の政策形成システムの提案」プロジェクトの一環として実施されました。
 主に、市民やNPOが政策提案力を持つためにはどうすればいいのか、特に、市民シンクタンクについてや、市民やNPOの参画を保障する自治体の政策形成システムとはどのようなものかが論議されました。

 先のRIETI政策シンポジウムでコロンビア大学政治学部ジェラルド・カーティス教授が日本における政策環境の急激な変化と新しい政策形成について提起していました。
 この政策環境の急激な変化の原因は主に二つあり、
 ひとつめは前世紀後半、自民党単独政権である55年体制の崩壊に伴い、いろいろな組み合わせの連立政権が誕生し、従来型の官僚提案−単独与党修正型の政策形成の手法が終わったということです。
 ふたつめは、よく言われる「失われた10年」の政策の失敗により官僚提案の政策形成の有効性が国民から疑問視されているということです。  そして、これらの政策環境の急激な変化に対して、

 まず、旧来の官僚提案−単独与党修正型の政策形成の手法の何が壊れ、どのように有効性を失ったのかを明らかにし、そのためには何をしたらいのかを検討することであるということです。

 このように、政策環境の急激な変化に官僚と市民それぞれ立場から、新しい政策形成のあり方が提示されています。  まず、経済産業省の新プロジェクト「政策形成プロフェショナルシリーズプロジェクト」は官僚の側からこのようなプロジェクトを計画していてます。

 プロジェクトX 政策ケースを蓄積し、「政策ガイドブック」として蓄積する。
  課長・課長補佐クラスを執筆責任者として実施する。

 プロジェクトY 政策形成評価を客観化する。
  研究者、公共政策大学院(特に東大法学部・経済学部が協力で設置の公共政策大学院)などの外部の力も導入する。

 プロジェクトZ 政策形成ケースを用いた教育方法を高度化する。

 「政策形成プロフェショナルシリーズ」をもとに「シュミレーション・ケース」に再編集して活用する。

 「政策形成プロフェショナルシリーズプロジェクト−その現状と今後の展開」 経済産業省

 アリスセンターの「NPOの政策提案力の開発と、NPOの参画を保障する自治体の政策形成システムの提案」プロジェクトは市民の側からこれらの調査・検討・提案をしています。

  1)地域課題に対するNPOの「政策提案力」を高めるためのNPO及びNPO支援組織の技能の開発
  (自治体の政策形成に関わるNPOの政策提案力に焦点をしぼります。)
 2)NPOの参画を保障する自治体の政策形成システムの提案
   (自治体の政策形成におけるNPOの参画するシステムに焦点をしぼって検討します。)

 「NPOの政策提案力の開発と、NPOの参画を保障する自治体の政策形成システムの提案」

 特定非営利活動法人まちづくり情報センターかながわ(通称 アリスセンター) 

 このように、今、官僚と市民それぞれ立場から新しい政策形成のあり方が提示されています。
 旧来の官僚提案−単独与党修正型の政策形成に対して、

 官僚は、自分たちで新らたに政策形成プロフェショナルとして政策能力や政策環境を整え、研究者、公共政策大学院などと協力して新しい政策形成システムを構築することを目指しています。

 市民は、市民の政策提案力を開発し、市民シンクタンクを創り上げ、市民参画を保障する政府・自治体の新しい政策形成システムを構築することを目指しています。

 そして、従来型の官僚提案−単独与党修正型の政策形成や「失われた10年」の政策の失敗を乗り越えて新しい政策形成システムが必要とされてます。

 両方に共通して言えることは、単なるニュー パブリック マネジメントを超えて、新しい手法が必要とされているということです。(6/5号「アウトソーシングという名の下請 −参加型のニュー パブリック マネジメント」)                             
 そして、こられの新しい政策形成システムは「特定の利益のためにどこか遠くで作られた政策」を超えた新しい政策を生み出す必要があります。
 (1/23号「新しい政策環境の整備−特定の利益のためにどこか遠くで作られた政策の彼方に」)


 政策空間


  『政策空間』Vol.3発行のお知らせ! この度、ニュースレター『政策空間』第3号が完成いたしましたので、ご連絡させていただきます。PDF版およびWord版を下記のアドレスからダウンロードできるようにしましたので、ご高覧ください(ホームページはまだ工事中ですが、正式にオープンした際にはご連絡いたします)。

http://www.policyspace.com/vol3.pdf (PDF版。容量は少ないが、画像がやや不鮮明。) http://www.policyspace.com/vol3.doc (Word版。容量は多いが、画像が比較的鮮明。)

******************** 今回初めてご案内する方へ ***************************
『政策空間』は、政策分析、提言、批評、コラム、エッセー、情報など、政策に関す るさまざまな論点や視点を提供するニュースレターです。民間・政治・行政などさま ざまな分野から多彩な執筆者が参加しています。特定の党派・イデオロギーや主張に 偏らない、創造的な空間を目指しています。政策課題が複雑多様化するなかで、活発 な政策論議が行われる一助になればと思います。 *************************************************************************

『政策空間』編集長 佐々木孝明 追記:バックナンバーをご希望の方はご連絡ください。
(詳しくは上記URLで『政策空間』をお読み下さい。)。    

  地域情報研究所の講座・出展予定



 □ 今後の予定について □

  おぎくぼ塾 2003  7月9日 18:00 講座  阿佐ヶ谷地域区民センター

  「まちづくりの動向−自転車と学生」 (地域情報研究所)  

  現在の過度の自動車中心社会は中心市街地の衰退を引き起こすばかりでなく、現在の地球環境のもとでは環境の著しい悪化の要因のひとつでもあります。  地域の歩行者と自転車優先の地域づくりをすすめるのは、人と自然の共生のためでもありますが、これから住民の高齢化や障害を持つ方々との共生を考えると歩行者と自転車優先の街づくりはこれからのまちづくりには欠かせないものです  また、最近傾向として、まちづくり・地域づくり、NPO・NGOや市民活動で大学や学生との「地域での協力」も数多く行われていますが、それをさらに進めて学生の自主的な活動を尊重し、地域やNPO・市民活動の側も学生を単なるお手伝いとしてではなく、インターン・パートーナーとして迎え入れる体制づくりを考えなくてはならないのではないでしょうか。  
 

  東京ポケット アートイベントVol.1



第2回「池袋モンパルナス学 アトリエ村を歩く」

【日時】6/29(日)13:00〜16:30(予定)
【場所】豊島区西池袋周辺 アトリエ村散策   
【講師】尾崎眞人(美術史家)   
【集合】豊島区郷土資料館集合(豊島区勤労福祉会館7F)
    http://www.idm-ne.com/contens/map_tosima.htm
    池袋駅(JR・東武・西武・地下鉄)より10分程度  
【費用】500円(資料代として)    
【定員】先着30名で締め切らせて頂きます。   
【主催】池袋モンパルナスの会      
【申込・問合】       
1.氏名,2.所属,3.連絡先住所(所属か自宅か明記),4.電話番号,5.FAX番号, 6.E-mailアドレス,7.懇親会の参加予定を明記して下記までご連絡下さい。
  池袋モンパルナスの会事務局(株)三慧内 
  TEL 03-3987-4650 FAX 03-3987-4659      e-mail ske@sankei-inc.co.jp

【内容】 昭和の始めから敗戦頃まで、池袋周辺にいくつもの「アトリエ村」があった事をご存知でしょうか。美術を志す人たちのために多くの貸しアトリエが建ち並び、「村」を形成しました。
 まだ名もない若い画家や彫刻家、その他様々な芸術家が住みつき、夜な夜な池袋駅周辺の飲み屋に繰り出しました。そこをパリのモンパルナスにならって、「池袋モンパルナス」と呼ばれました。  街を活性化し、街を育てるために参加型で体験するアート画期的な講座の第2回として「池袋モンパルナス学 アトリエ村を歩く」が開かれます。気軽に参加してください。


  東京ポケットシンポジウム



 東京ポケットシンポジウム

  2003年6月20日(金)18:00〜21:00

 舟渡区民センター・レクリェーションホール

第1部  「ようこそ!東京ポケットへ」  18:00〜19:00
パネラー: KURI(東京ポケット代表) 三上修志郎(東京ポケット 参加アーティスト) 近藤ヒデノリ(東京ポケット 参加アーティスト) コーディネーター: 松平紗永子(東京ポケット キュレーション・スタッフ) 私たちが展開しようとしている「東京ポケット」とは、一体何か。
企画内容・コンセプト、アーティストを紹介するとともに、今回の「東京ポケットin 板橋」について、企画制作した立場からプレゼンテーションします。

第2部  「東京ポケットの挑戦」  19:10〜21:00
パネラー: KURI(東京ポケット代表) 三上修志郎(東京ポケット 参加アーティスト) 近藤ヒデノリ(東京ポケット 参加アーティスト) 本橋 勝氏(NPO 板橋まちづくりセンター) 上村麻子氏(ブランクハンティング・キュレーター) 伊藤 敦氏(コマンドN・メンバー) コーディネーター: 松平紗永子(東京ポケット キュレーション・スタッフ)

「東京ポケット」の第一回イベントである今回の企画について、第2部ではまちづくりやアートイベントなどの専門家の方を交えて批評・分析を行い、このようなアートイベントの可能性を探るとともに、「東京ポケット」のこれからについて考えます。

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