そのカフェは渋谷にある他のカフェとは少し違っています。 渋谷駅から程近いビルの地下1階。薄暗い階段を下りたところに、つい先日オープンしたばかりのカフェ「ガボウル」。フロアには、不揃いなテーブルやソファが無造作に置かれ、照明はほの暗い電球と静かに回る小さなミラーボール。ひとたび腰掛けると渋谷の喧騒を忘れてしまうような、不思議な空間だ。 居心地のよさがこのカフェの売り物であるが、そこには、もうひとつチャームポイントがある。それは、渋谷界隈には30軒近くの「アースデイマネーが使えるお店」がある中で、このガボウルは、さらに一歩踏み込んで「アースデイマネーを使うお店」というコンセプトを掲げていることだ。 「地域通貨、『使えるお店』『使うお店』へ」 嵯峨生馬(日本総合研究所)繊維新聞(2003年3月24日) このカフェはアースディマネーという地域通貨が「使える」だけでなく、「使うお店」です。 このレポートでも何回か地域通貨のお話をしましたが(「パンと株 L.E.T.S 」など)、地域通貨には地域通貨は子供のお手伝い券のようなイメージがあります。しかし、今ではこのように地域通貨が使えるカフェも増えています。 例えば、川崎市の登戸のアリエルダイナーは オーガニックライフとは、健康な生活を続けることができること。 アリエルダイナーは、人も地球も健康でいられるよう、できることから始めています。(中略) ただ、健康も大事ですが、おいしいことも大切。あまりかたく考えずに、おいしいものを気軽に召し上がっていただくことで皆様に喜んでいただきたい。 私たちは、そう考えています。(中略) アリエルダイナーでは、ご飲食だけでなく、人と地球にやさしい生活雑貨の販売、有機野菜の朝市、素敵なライブ、DJによるイベント、地域通貨の拠点、各種講座、パネル展示、etc.登戸の情報発信基地として皆様の生活を楽しくサポートしてゆきたいと思っています。 「アリエルダイナーの自己紹介」 アリエルダイナー http://www.arieldiner.com/concept/right.htm ここでは飲食の一割に登戸の地域通貨アーチの他に、リング・レインボークーポン(レインボーリンク)、ナマケなどの地域通貨が使えます。 また、アリエルダイナーと関係しているレインボーリンクではBeGood Cafe等のイベントや旅行会社などでも使えます。 このように地域通貨をカフェなどで使えるのようにするのは、身近ないろいろなお店で使えたら便利というだけでなく、「使うお店」という「地域通貨のこれからを考えた戦略」でもあります。前出の嵯峨生馬さんによると、 しかしながら、アースデイマネーには課題もある。発行されたアースデイマネーは、賛同する参加店で代金の一部として利用できるが、問題は、そこから先、参加店に滞留したままなかなか循環しないことだ。参加店から再びプロジェクト、あるいは、他の参加店へと通貨が循環しなければ、アースデイマネーの流通はいずれ滞り、先細りになるおそれがある。プロジェクト、個人、参加店の間を縦横無尽に循環してこそ、持続可能な地域通貨となるだろう。 地域通貨の価値は、国が担保するのではなく、通貨に参加する一人ひとりが支えていくのが原則であり、それは商店も例外ではない。現状ネックとなっている商店が地域通貨の循環にもっと積極的に参加する枠組み、言い換えれば、店が単に地域通貨を受け取るだけでなく、何らかの形で通貨を使うモデルを示すこと。その可能性を探る場所が、冒頭に紹介したガボウルなのだ。 ガボウルを特徴づけるのは、実はその食材だ。アースデイマネーの支援先のひとつに「都市・農村交流プロジェクト」がラインナップされている。これは、渋谷の参加者が、いろいろな課題を抱える農村地域を訪れ、現地との交流を図るプロジェクトである。無農薬栽培に取り組む農家の草取りの手伝い、長期間手つかずの状態で荒れ果てた遊休耕地を開墾しての農作物の栽培、森林の間伐やゴミの清掃などの活動を、山梨県白州町、長野県白馬村、四賀村等、新潟県上越市等との間で行っている。 こうした交流先では、参加者が提供した地域貢献の作業に対する御礼としてアースデイマネーが発行されているが、同時に、交流先の農家や地域団体は、現地で生産された農作物等をアースデイマネーで支払えるようにしている。そこで、ガボウルでは、各地で収穫が行われる時期には、白州町から米や野菜、白馬村から野沢菜、四賀村から小麦などを食材として仕入れ、その支払いにアースデイマネーを使用しているのだ。 同前 嵯峨生馬(日本総合研究所) 「アースディマネー」の場合は、農村を訪れ農作業したり、渋谷で川の清掃などのいろいろなボランティアサービスをしたりをしたりして地域通貨”r”を貰い、いろいろなイベントやカフェ「ガボウル」や渋谷あたりの30軒近くのお店でこの”r”を使うことができます。 しかし、そればかりかこのように食べ物を作り出す農業やその流通に関わる仕組みを作りだしたり、イベントや旅行などにも使えるようにすることで、人や地域間の交流を活発にするようになって来ています。 この農作業やイベントに参加する人たちの多くは楽しいと言ってます。 普段しないことをお金のためでなくやってみる。 参加している人たちはそこでお金では得られないものを得ているのかもしれません。 昔から「世の中にはお金で買えないものがある」言葉があります。 それに対して「でも、生きて、食べて行くのにはお金が必要」という反論も常にあります。 それはその通り。 だけど、「お金で幸せも買える」とは限りません。 もちろん、地域通貨がカフェで使えるからといって、それで生きていけるわけでも、「お金」がなくなるわけではありません。 でも、こういう地域通貨での楽しさの中からお金で買えない幸せやいろいろなものを見つけていくこともできるかもしれません。 お金で買えない幸せの部分を広げていくのもののひとつが「アースデイマネー」「レインボーリング」のような地域通貨ではないでしょうか。 (付記) 前号で御紹介しましたネット地域通貨システムCCPSはこのような人や地域間での地域通貨の循環を意図したものです。 CCPS http://www.ccsp.jp/ オージャス株式会社(株式会社日本総合研究所 「地域通貨フォーラム」の協力)
知域通貨 叡(ei)は困ったことや知りたいことがあったら教え合う知域通貨です。 知域通貨・叡は 「地域通貨フォーラム」様(株式会社日本総合研究所内)が協力し、オージャス株式会社様が制作・運営しているネット地域通貨システムCCSPを使って地域情報研究所により自主運営されています。 詳細は知域通貨・叡のオフィシャルページをご覧下さい。 知域通貨・叡 http://www.e-tiiki.net/ei/ また、知域通貨・叡ではいろいろな質問にお答えする「Q&Aセクター」を設置しました。 ・地域情報研究所・NAVI http://www.e-tiiki.net/navi/ 地域情報に関することにお答えします。 ・Cyber Lab・「ADVICE」 http://www.ne.jp/asahi/cyber/lab/aindex.htm ICT情報通信技術・コンピューター e-ビジネス・Web関係に関することにお答えします。