『S−Report』  4/3号  公益法人改革  絶滅か! NPO法人?−公益法人改革・緊急討論集会に参加して


 自然保護や環境保全活動をはじめ、草の根市民活動の受け皿として近年注目をあびているNPO法人。NPO法人主催の自然保護活動に参加した読者も多いはず。そのNPO法人が、政府の公益法人改革によって、誕生から5年で絶滅の危機に瀕している。改革は、NPO法人以外の公益法人にも、自然保護サポーターの一人一人にも大きな影響を及ぼす。
 天下り・不祥事の温床と批判のあり公益法人の改革に取組むことが、昨年度末閣議決定された。これを受け、内閣官房行政改革推進事務局は、中間法人、社団・財団等公益法人、NPO法人を、準則主義で設立できる新たな非営利法人に一本化する。他方、政府税制調査会非営利法人課税作業部会は、新たな非営利法人を原則課税とする方針である。原則課税となると、法人の全所得、すなわち会費や寄付にまで課税される。さらに、法人設立に300万円の基金設置の義務づけも検討している。政府は、本年3月末をめどに改革大綱の閣議決定を目指している。

 この動きを止めるために、3月2日東京千代田区の主婦会館に於いて、「公益法人改革・緊急討論集会」(主催:公益法人改革オンブズマン設立準備会・NPOサポートセンター)が開催された。告知から2週間足らずであったにも関わらず、67名もの市民が集結した。  羽仁カンタ(A SEED JAPAN理事)の司会のもと、6人のパネラーから改革の問題点が指摘された。浜辺哲也(公益法人改革オンブズマン設立準備会)は、公益法人改革の動向・論点を整理するとともに、「官による民のチェック」に代えて「市民の相互チェック」の対案=「公益法人改革オンブズマン」の設立を提示した。

  菅原敏夫(NPOサポートセンター副理事長)は、政府の改革における目的(=天下り・不祥事等の防止)と手段(公益法人の一本化・原則課税)の不整合を鋭く指摘した。税法が専門の石村耕治(白鴎大学教授)は、原則課税はNPO法人だけでなく全公益法人の問題であること、たとえ今回NPO法人が非課税となっても、中間法人・財団等への課税を実績に、将来NPO法人はもちろん学校法人や社会福祉法人等への課税も検討されること、そして改革が実施されるとNPO法人は、任意団体に先祖帰りするか、有限会社にならざるをえないとの見通しを示した。中村陽一(立教大学教授)は、個人と社会を繋ぐ中間組織を通じた市民活動に水を差す改革だと指摘した。田中弥生(慶應義塾大学)は、市民の相互チェックの先例として、フィリピンのNGOによるNGOの免税認証機関であるPhilippine Council for NGO Certification(PCNC)を紹介した。

 責められるべきは、市民活動でもNPO法人でもない。「公益を害する法人」「官尊民卑」思想こそ絶滅すべきである。尾瀬保存期成同盟からNACS-Jへ至る歴史は、公益とは何か、公益を守るのは誰かを示している。近年のNPO法人の活動は、官に依存しないで市民社会を担う自信に溢れている。「公益法人改革オンブズマン」構想は自律的NPOギルド結成への志向であり、PCNCは自主的な倫理綱領に基づくNPOギルドの現実性を示している。公益は市民が創出できる。

 NPO界の燃える闘魂・山岸秀雄(NPOサポートセンター理事長)は、「3月末の閣議決定で闘いは終わるわけではない。将来のNPO法改正まで行くならば、最高と最悪の状況を想定しつつ、敵を見据えて闘いを挑み続けなければならない。」と檄を飛ばす。市民活動の未来は、市民一人一人にかかっている。

  追記:3月10日、自由民主党行政推進本部の申入れを受けて、公益法人改革は一時頓挫したかに見える。しかし、申入れはNPO法人の他の公益法人からの分断を意図している。まだまだ闘いは続く。(敬称略)

[執筆者プロフィール]

 村山史世 麻布大学 環境政策学科 専任講師(法学・市民環境活動論)

 環境フィールドスタディ・NPOインターンシップ等を通じて学生と協働して環境活動を勉強中。市民活動を通した個人の自律を援助する中間団体として、NPOを積極的に評価する。


  公益法人改革・緊急討論集会のその後 

 
 3月11日(火)

  新聞でも「予定されていた政府税調非営利法人課税WG第5回が与党の申し入れを受けて延期。石原大臣がNPOの除外を容認。」などの記事でました。 でも、「良かった一安心」ではありません。

  3月16日(日)

  朝のNHKニュースで「政府は公益法人の抜本改革についての当初の方針を見直し、NPOを法人税の課税対象としない方向で検討に入りましたが、公益法人側が反発しており、今月中の改革の大綱の取りまとめに向けた調整は手間取ることも予想されます。」と報道されました。

  3月17日(月)

 公益法人制度改革について緊急報告集会が開催されました。

 日   時 3月17日(月)18:30〜20:20
 場   所 アルカディア市ヶ谷(旧私学会館)
 主   催 (財)さわやか福祉財団  

  事務局団体  シーズ=市民活動を支える制度をつくる会
           日本NPOセンター       
           NPOサポートセンター       
           NPO事業サポートセンター
 
 http://www.sawayakazaidan.or.jp/doc/news/2003/index.html#20030314


今後も公益法人改革オンブズマンのサイトにご注目ください。

 http://www.houjin-ombudsman.org/    

 シンポジウムの情報 


  シンポジウム「21世紀におけるものづくりのシステムデザイン」

  1 主催   日本学術会議人工物設計・生産研究連絡委員会設計工学専門委員会、
         日本学術会議人工物設計・生産研究連絡委員会創成加工工学専門委員会

  2 共催    略

  3 日時    平成15年5月6日(火)13:00〜17:00

  4 場所    日本学術会議講堂

  5 次第

  13:00-13:10 開会挨拶:畑村洋太郎(創成加工工学専門委員会委員長)
  13:10-14:00 畑村洋太郎(工学院大学教授、畑村創造工学研究所所長) 「失敗に学ぶ設計の知識化」
  14:00-14:50 荒井栄司(大阪大学教授) 「21世紀のデザインヴィジョン提言」

  14:50-15:10 休憩

  15:10-16:00 松島克守(東京大学教授) 「日本製造業再生のビジネスモデル」
  16:00-16:50 中尾政之(東京大学教授) 「金型産業から見た日本の製造業の将来」
  16:50-17:00 閉会挨拶:荒井栄司(設計工学専門委員会委員長)

  申込方法:

 シンポジウム名、氏名、勤務先、住所、電話番号、ファックス番号、電子メールアドレスをご記入の上,4月23日(水)までに、下記宛ファックスまたは電子メールにてお申し込みください 。
  申込み・問合せ先:

  慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授 創成加工工学専門委員会・幹事青山藤詞郎
  電話:045−566−1721 ファックス:045−563−2472 電子メール:aoyama@sd.keio.ac.

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