『S−Report』  3/27号  新たなネットワーク連携活動  −地域の情報化・行政の情報化の先にあるもの
                    −まちづくりのあらたな展開を求めて−12


 今月、地域の情報化に関しての二つのシンポジウムがありました。

 ひとつは「コミュニティネットワークシンポジウム2003」で、もうひとつは、「第5回電子自治体シンポジウム」です。

  Eジャパン協議会、電子情報通信学会コミュニティネットワーク研究会共催のコミュニティネットワークシンポジウム2003は「地域社会のためのコミュニティ・ネットワーク」をテーマに主に地域の人々・NPOの地域での活動実例が発表されました。  

 平成14年度から、コミュニティ・ネットワークにおけるアプリケーション普及には、「情報・問題意識・文脈の共有」と「活動の場の存在」、それに基づいた「生活者による具体的な問題解決活動」、「政策決定過程への住民参加」、「新しい地域文化の形成」が重要であるとの認識に立ち、研究会活動をコミュニティ・ネットワークの実例に則して議論を深め、コミュニティ・ネットワーク形成と運営に関する問題点を抽出し、その解決策を探ることとしました。
 この度は、コミュニティ活動の中枢でご活躍中の方々を講師にお迎えし、コミュニティ・ネットワークを活かした地域社会の新たな展開の事例をご報告頂き、更にパネルディスカッションで議論を深めたいと考えてシンポジウムを企画しました。
  http://www.ejf.gr.jp/kouenkai/cn2003/

 この中の事例報告とパネルディスカッションでは非常に興味深い事例が報告され、それに基づいて「地域社会の発展に寄与するコミュニティ・ネットワークのあり方について」の活発な討議がなされました。

 パネリストについてはのEジャパン協議会サイトでご覧ください。  
  http://www.ejf.gr.jp/kouenkai/cn2003/shoukai.html

 桐生市においては特定非営利活動法人桐生地域情報ネットワークが市民活動としてまちづくりを行っているばかりでなく、「桐生地域情報化基本計画」を自ら提出し、行政と協働して創り上げました。また、市民自らの手で「新明日への遺産プロジェクト」という地域の歴史文化再発見プロジェクトを行っています。  
 島根県においてはボランティア団体プロジェクト23が情報通信環境の整備によって距離に関係なく社会参加できる環境作りをが出来つつあります。また、障害者パソコン教室などを通して「これまで障害のため自宅待機を余儀なくされていた方々がそのハンディキャップを実質的に乗り越えること」を目指してます。

 このように地域・NPOは自分たちための情報ネットワークではなく、広く地域の情報ネットワークづくりにも既に実績をつくりつつあります。このことは旧来の言葉でいうと「地域の情報化」の活動が広い意味での「行政の情報化」を目指す活動になっています。

 電子自治体フォーラム主催の第5回電子自治体シンポジウムは「市民との創発から生まれる新たな地域経営の動き」をテーマに自治体関係者の地域での活動実例が発表されました。

  「電子自治体」ということばが登場してから3年が経過し、わが国の電子自治体化の動きも大きな転換点に差し掛かっているのではないかと感じております。(中略) これから取り組むべき電子自治体の方向は、「ポスト・インフラ整備」とでも言うべき、行政と市民・事業者が連携し、創発しながら、「新たな地域経営の動き」を創出していくことと考えております。このための方法としては、行政主導もあれば、職員と市民との協働が契機になるものもあるかと思います。
 http://www.sohatsu.ne.jp/symposium/01.html  

  この中のパネルディスカッションでは非常に興味深い事例が報告され、それに基づいて「住民本位の電子自治体を実現するために -地域住民との協働を地域に広げるノウハウとは? -」の活発な討議がなされました。

 パネルディスカッションの一部を日本総研のサイトでストリーミングでご覧いただけます。
 http://www.sohatsu.ne.jp/symposium/report/05.html  

  三鷹市では市民との協働によるSOHO CITYみたか構想により市民の起業をサポートしており、また、札幌市でも市民との協働による公共施設を運営する試みも行われています。また、それにとどまらず横須賀市では自治体改革として電子自治体を捉えて活動しています。
 そして、浜松市では「市民の視点からの電子自治体」を模索しています。この浜松市の「市民の視点」からの電子自治体とは今までの地域の組織の代表の意見のみを反映した「市民の立場」とは異なり、地域の弱者、高齢者、障害者などの多様な当事者の「市民の視点」で電子自治体のシステムを構築していくものです。

 それらが具体化して市民調査事業体「アクション・シニア・タンク」の設立や「はままつ@窓口システム」、「市民の声システム」になっています。  このように自治体は行政内の情報ネットワークではなく、行政主導ではない住民本位の地域情報ネットワークを目指し始めました。このことは旧来の言葉でいうと自治体による「行政の情報化」が広い意味での「地域の情報化」を目指すようになっています。
 二つのシンポジウムでは旧来の言葉でいうと地域・NPOによる「地域の情報化」の活動が広い意味での「行政の情報化」になってきて、自治体による「行政の情報化」が広い意味での「地域の情報化」になってきたようです。

 さて、「まちづくりのあらたな展開」の12は「新たなネットワーク連携活動」です。

 先ほどから旧来の「地域の情報化」や「行政の情報化」という言葉を使ってきましたがこの言葉ではこれからの動きを捉えて、新しいものを生みだすことはできません。

 今まで「地域の情報化」であったものが桐生市のようにまちづくりやコミュニティの活動による「コミュニティ活動の情報化」となり、「行政の情報化」であったものが浜松市のように住民(ユーザー)志向の住民参加型の「自治体行政の情報化」になりつつあります。

 そしてこのほかに重要な活動としてEジャパン協議会の三木哲也電気通信大学教授は「新たなネットワーク連携活動」をあげられています。

 特に、三つめの「新たなネットワーク連携活動」は住民と行政の連携が必要ないわゆる「まちづくり」、あるいは、地域の産業と商店と住民の連携の必要なコミュニティの必要な「まちづくり」、などを成功させるうえできわめて重要なアプローチになるものと思われる。また、このアプローチは地域に閉じることなく全国的な全世界的なネットワーク化による、計り知れない可能性を秘めているといえよう。この可能性は、物でもエネルギーでもない人間の想像力による情報交換や情報共有によって新たな価値が生み出されることを意味している。本書に収めた早稲田商店会の活動事例は、結果的にこのようなアプローチとなっているよい事例である。

 「はじめに」「eコミュニティが変える日本の未来−地域活性化とNPO」三木哲也  

  このレポートでも何回か早稲田商店会の新しい動きについてはお知らせしてきましたが(2/20号「いのちのポータルサイト」等)、多様な活動のうち試行中の「合い言葉ショッピンク−日常的に使う商店街の安否確認システム」を御紹介します。

 このシステムは、商店街が中心のシステムで一人暮らしなどの登録者のパソコン、テレビ利用端末、携帯に毎日その日の合い言葉を送り、登録者がそれを確認して登録した商店街加盟店に出かけて合い言葉をいうと商品が割引になるというシステムです。
 もし、登録者が旅行とか(事前に登録した不在予定)ではなく、何日か「合い言葉」を商店街で言わないと確認したり、あらかじめ登録した登録者の連絡先に連絡するというものです。
 これに対して多くのICT安否確認システムは単に人や街、つまりコミュニティを介さず構想されていて問題です。

「よくある安否確認システム」

・システム→登録者のパソコン、携帯−登録者の返信(自動返信)→システム人が電話で確認→登録者
・システム→登録者のパソコン、携帯−登録者の返信(自動返信)→システム−人が電話で確認→登録者→担当者が訪問

「合い言葉ショッピンク−日常的に使う商店街の安否確認システム」

・システム→登録者のパソコン、携帯−人(登録者)が街、商店街に行って会話する→商店街の「人」が確認する→システム(以下略)

 これも無理矢理ICT情報通信技術で実際の交流を作り出すと言われること部分もあるでしょうが、人が介在するすることで実際のコミュニティの中の交流を図ろうというものです。

 このように「合い言葉ショッピンク」は「コミュニティ活動の情報化」としての「合い言葉」での声かけ活動と、住民参加型の「自治体行政の情報化」としての「安否確認」を含みながら、それを自らの商売と結びつけて「三者皆得」の「新たなネットワーク連携活動」です。

 まちづくりは「地域の情報化」や「行政の情報化」を超えて「新たなネットワーク連携活動」を考える必要があるのではないでしょうか。  
 

 
 
今回取り上げた事例も書かれている本です。

 Eジャパン協議会 「eコミュニティが変える日本の未来−地域活性化とNPO」

  Eジャパン協議会編 

 地域に吹き込む新しい風  IT革命を契機にコミュニティはいま大きな変貌を遂げる。  
  その再生は日本の社会の閉塞状況を確実に打破するであろう。

   発行所: NTT出版   定 価: 本体1400円+税 。

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