『S−Report』  2/20号      いのちのポータルサイト      −まちづくりのあらたな展開を求めて−9
                        −願い超えて、想いを持って、それをかたちにする

 「今はもう、50秒後に地震がくるということが分かるようになったそうです。もし、今、ここで50秒後に地震が来るとしたら、あなたはどうしますか。」
 これは「東京いのちのポータルサイト展」での企画者の早稲田商店街の藤村望洋さんの問いかけです。

  「東京いのちのポータルサイト展」は2月15日(土)〜27日(木) までNPO法人東京いのちのポータルサイト(申請中)とNPO法人地域交流センターが内閣府等の後援を得て、展示ばかりでなく12の連続パネル討論を「官民学のキーパーソン50余名が結集し徹底討論・パネルをインターネット・ライブ中継」しています。

  95年の阪神淡路大震災から9年目
 私たちは今、二つの大地震(東海と首都圏直下)の脅威にさらされている
 阪神淡路の死者6500人の9割は、発災後30分以内に死亡した
 その瞬間、自分と家族、近隣しか頼れない
 まちの力と最新コミュニケーション技術を結集して、地域の防災能力を高め迫り来る首都大地震を迎え撃つ・・・  破局回避へ、時間との闘いが始まった
   http://www.tokyo-portal.info/gallery.html

 この「東京いのちのポータルサイト展」は昨年行われた「安全・安心まちづくりワークショップ」( 安全・安心まちづくりワークショップ実行委員会)で討議された問題を振り返り、新たにもっと広く問題を提起して「大地震を迎え撃つ!」ための準備をものです。

  「安全・安心まちづくり」ワークショップ」では、阪神淡路大震災やいろいろな事故の教訓をもとに商店会・町内会から内閣府、各中央官庁までが同じ立場でワークショップを行うというものでした。
  例えば、ここでは各種通信放送関係者が安否確認や通信システムなどの震災対策の技術の検討を行ったり、地域の安全についてガーディアンエンジェルスと商店会・町内会が討議するという画期的なことが行われました。

  「安全・安心まちづくりワークショップ」 http://www.anshin-ws.net/
 
 特に、阪神淡路大震災のとき小学生だった神戸市舞子高校防災学科の女子高生たちがこれからの防災教育について自分たちのことから語ったことは意義のあることで、将来に希望がもてるものでした。(しかし、出席者の一人である文部科学省の人は防災学科が神戸市の高校にあることすら知らなかった!)
  しかし、神戸では10年近くなろうとするのにまだ、都市計画が終わらず自分の土地に帰れない人も多くいます。このことを参加者の一人で建築家でもある神戸真野地区の人が会場でこう言い放ちました。
 「私も建築家の端くれですが、建築家は都市計画だとかなんとかごちゃごちゃ言っているんじゃない!建築屋なら地震で壊れない家を造れ!それができないなら、壊れない部屋を造れ!!」

 この切実な願いを受け止めた「東京いのちのポータルサイト展」は「安全・安心まちづくりワークショップ」の成果を踏まえてさらに進めたものです。  

 たとえば、地震で「壊れない部屋がつくれないなら」と天蓋付きの防災ベットも出展されています。(それじゃぁ「まんがみたいだと」このことを笑えますか?)  

 また、連続パネル討論のひとつ「防災技術最前線 安否確認や通信システム=最新のICT防災」では「安全・安心まちづくりワークショップ」で提示された「安否確認や通信システムなど、震災対策の技術は、日頃から使えるシステムになっているか?」ということが真剣に語られました。
  また、その中でも森田政江さん(早稲田商店会(有)智縁)や熊野健志さん(富士通)、若林裕幸 (松下電器産業)などは前回よりさらに進んだ発表をされました。  さらに、冒頭の50秒前(発生場所によっては50秒から0秒)に地震発生が分かるナウキャストシステムの説明がリアルタイム震災情報協議会の宮本英治さんよりあり、これを受けて佐藤靖之さん(産業人文学研究所)が、通信・放送融合による災害時に備えるためのメディアを総動員して、ユビキタスネットワークをつかうプラットフォーム(社会的仕組み)について提案されました。  

 参考 『S−Report』  

  通信・放送融合     −2001/8/30号 「テレビの運命−通信・放送融合」
  ユビキタスネットワーク−2002年連載 「ユビキタスネットワークの世界へ」 1〜9  

 さて、「まちづくりのあらたな展開」の9つめは「安全・安心」です。

 今までのまちづくりは都市計画を中心に進めてきたので、地域性を捨象し、生活感覚に乏しかったです。そして、なによりも「安全・安心」もまったく考えられていませんでした。

 また、「安全・安心」は行政がやるべきこととしか捉えないような傾向がありましたが、阪神淡路大震災で分かったように大震災では「行政も被災者」で無力であり、社会のすべてが協力でなくては対応できないことは明らかになりました。
 また、先ほどの50秒前に地震発生が分かるナウキャストシステムの情報を行政がどう一般に知らせていくのかもまだまだですし、行政だけではできないことも明らかです。
 ですから、「安全・安心」はまちづくりにとってもっとも重要なテーマのひとつではないでしょうか。

 さて、「いのちのポータルサイト」とは単なる通信インフラ相互利用やメディアの協力ではなく、いのちを守るための協働ためのポータルサイト(さまざまな情報の出入り口となるシステムやホームページ)です。
 それは技術ではなく、想いをつなげて行くシステムです。

 このことを今回の「防災技術最前線」の中で災害情報提供する株式会社レスキューナウ・ドット・ネットの市川啓一さんはこう言ってます。
 「もし、今震災や災害が起こったら私は自分たちの資材の他に今日お集まりの方々から機材をお借りしてすぐ現地に行きます。そして、現地から皆さんの通信インフラやシステムもお借りして被災地の情報を多くの人に多様なメディアでお伝えします。その時はよろしく御願いします。」  

 まちづくりもまたこのように震災の悲痛な「願い超えて、想いを持って、それをかたちにする使命」を持っているとおもいます。
 最後に冒頭の問いかけに対する早稲田商店街の藤村望洋さん自身の回答でこのレボートを終わりたいと思います。

 死なないために
 いまから、自分たちで、できること
 大地震を迎え撃つ!
 地域・民間主導の防災ネットワーク


  賛同募集


 「思いやり」に課税? 公益法人改革オンブズマン設立 公益法人改革
   NPO法人にも大きな影響 原則課税&300万円の基金設置

 公益法人改革の動きが急です。これはNPO法人にも大きな影響を及ぼします。公益 法人、中間法人とNPO法人を一本化して、新たに「非営利法人」が設けられます。そして、非営利法人は原則課税という方針が、一般市民やNPO法人に原案の詳細も示さ れないまま、まもなく決められようとしています。しかも、NPO法人を作るためにも 300万円の基金が必要になり、NPOを設立するのが非常に難しくなります。
 今週金曜日(21日)に政府税調の非営利法人課税ワーキンググループが開かれ、議論の骨格が固まってしまいそうです。改革の問題点を解説した下記の文章の事例をお読みいただけば、皆様の団体にも大きな影響を及ぼす“改革”であることをお分かり いただけると思います。
 こうした切実な問題は、一部の関係者の議論で結論を出すべきではなく、幅広い市 民やNPO法人の意見を反映して十分に検討すべきだと、私たちは考えます。そのため に、市民の立場から税調や行革本部に対して建設的な対案を提示していく「公益法人 改革オンブズマン」の設立を幅広く呼びかけていきます。

 公益法人改革は、早ければ3月半ばにも閣議決定されようとしています。公益法人改革に異議を申し立て、市民の側から対案を緊急に示すため公益法人改革オンブズマ ンを設立することにご賛同いただきますようお願いいたします。
 賛同される方は、このメール末尾の欄にご記入のうえ、ombudsman@jcan.netにご返送ください。

 公益法人改革オンブズマン設立準備会
  田中秀一郎
  安在尚人
  前北美弥子
  奥田穣太郎
  緒方大輔
  浜辺哲也

  公益法人改革への対案提示
 思いやりという「人間らしさ」、そこから税金を取るという改革案?の成立が迫っています。 「公益法人改革」は、一見、発展性のある改革案に見えます。身近なボランティア団 体を含む、NPO法人、そして公益法人。これらの団体の設立の条件であった行政の許 可や認証を、これからは、ある一定の法の規則を守れば、行政の許可や認証なしでも 設立できるようになるというのです。
 しかし、そこには行政と税金のからくりが潜んでいます。 先に述べた公益法人、NPO法人、そして学会、同好会などが当てはまる中間法人の3 つを「非営利法人」として一本にまとめ、法人化への入り口を大きくします。そのかわり、そこに含まれる団体すべてに税金をかけようという仕組みが改革案?に盛り込 まれているのです。

 つまり、行政の関与が「事前チェック」から「しっかり課税」に切り替わる改革案 ?なのです。  ここで、この改革案?によって予想される3つの問題事例を紹介します。

 一つ目。戦争によって、多くの命が失われます。怪我をした子供や孤児のため、寄 付金を緊急に集めて、支援しようとしています。その寄付金が、税金の対象になりま す。

 二つ目。一人で生活しているお年寄りや、体が不自由な方の介護をして、その方か ら僅かな謝礼金をもらう有償ボランティア。そのうちの6割が車椅子や介護に必要な 物に使う活動費になりますが、それも税金の対象になります。

 三つ目。地雷除去ロボットの開発を進め、たくさんの人にこの開発の大切さを伝え ようと考えている任意団体。法人化するにあたって、唯一の収入である会費が税金の 対象になるということで内部の意見が割れ、法人化を見送ることになりそうです。

 一定の要件を満たし、社会貢献性があるとされた団体は非課税という案があるよう です。しかし、社会貢献性の範囲が狭く解釈されたり行政や税務署が社会貢献性を判 断するなら、実態は既存の公益法人と変わらなくなります。また、非営利法人の設立には300万円の基金設置が必要という案もあるようです。 どう思われますか? このような改革案?が通れば非営利活動自体が縮小することは 目に見えて明らかです。特に、NPO法人の縮小は免れません。

 今、政府が進めようとしていることは、課税という目先の利益の確保と、それによって生じるNPO活動の縮小であり、それは回りまわって、結局、行政が税金でしなけれ ばならない仕事を増やす結果になってしまうのです。

 私達がしなければならないこと。それは、世界の人々を救う目的のお金を、行政が 課税という名目で取り上げるという、おかしな矛盾をなくすこと。そのためにはこれ を読んでくださっている皆さん全員の力が必要です。

 私達は、「公益法人改革」において、NPO法人を「特定非営利活動法人」として原則非課税にすることが当然であると考え、公益法人改革に異議を申し立て、対案を示 そうとする者です。

  これから1ヵ月間の公益法人改革の動きを徹底的に監視して、閣議決定でNPO法が 変な方向に歪められないようにしましょう!むしろ、市民の側から対案を積極的に提示していきましょう! そして閣議決定の後も、NPO法人やNPO税制が損なわれないよう、現実に制度改 正が実現するまで公益法人改革をオンブズマンするのです。 公益法人改革が行政や税務署に仕切られない形で実現するには、NPO法人が税逃れ や営利目的、行政癒着にならないよう、市民が監視役となる必要があります。 それが新しいNPO法人をチェックする市民によるNPOオンブズマン。 公益法人改革オンブズマンは、やがて市民によるNPOオンブズマンへと進むのです。

  この趣旨に賛同される方、急いで手と声を上げてください。残された時間は後1ヵ 月。 活気に満ちた市民社会を選ぶか、沈滞した行政支配の社会を選ぶか、この国の浮沈を 握るのは、アナタなのです!

◆想定される問題事例1◆
  私は、東京都に拠点を持つ国際協力NPOの法人・アサイラムの会員です。中東で始 まった戦争によって生まれた孤児や怪我人を支援するため、私たちは現地に支援団を 送る準備を開始しました。インターネットの普及もあり、支援金が瞬く間に数千万円 に達する額が集まりました。  ところが、戦争悪化のため、現地入りができず、寄付金と共に、支援団も次年に繰 り越すことが決定。その手続きをしていると税務署からこんな通告を受けました。改 革案の施行により、対価性のない収入であっても課税はする。
 パブリック・サポートテストが緩和されたことで認定NPO法人となり、活動の範囲 が広がると思ったとたん課税とは、行政は一体どういうつもりなのか…。

◆想定される問題事例2◆
  介護保険の行き届かない、炊事、入浴、そして話し相手になったりと、助け合い活動 を続ける友愛ネット。介護するお年寄りから若干の謝礼金をもらい、さらによりよい 介護のため、その6割を友愛ネットがまとめて管理をしています。いわゆる有償ボラ ンティアです。 以前から、会員の中でケアハウスの設置を求める声が多くあったため、設置予定日に 向けて見通しを立てていました。利用者もそれを望んでいました。 しかし、その2日後、税務署からハガキが来ました。その内容は、原則課税なので、 剰余金の3分の1を支払ってください、というもの。税金の無駄は他にたくさんある というのに・・・。

◆想定される問題事例3◆
  けん君の家の両親は共働き。まだ、1歳と2ヶ月のけん君を、お母さんは、近くの NPO法人スクスクに預けて仕事に出かけます。働くお母さん支援のため、保母さんよ りずっと低い値段であずかってくれるし、子育てを経験している信頼できるおばちゃ んなので、お母さんも、けん君も安心です。 そんな中、税務署が、この活動は法人税法の収益事業に当たるから税金を払えと言っ てきました。同じ保育事業を営む社会福祉法人なさけの会は非課税というのに、おか しいじゃないかと税務署との押し問答が続きました。 なさけの会にはどうやらOBの理事がいるらしいとの噂。絶対負けられません。  
  ところが、公益法人改革で、NPO法人が原則課税になることが決まると、スクスクも 課税の対象となることが避けられなくなりました。これによって、活動が縮小するこ とは間違いありません。けん君のお母さんにこのことを話すと、とても残念そうでし た。こんなところから税金を取り、行政は一体なにを守ろうとしているのでしょう?

◆想定される問題事4◆
  上田教授は災害救助ロボットや、地雷除去ロボットなど人の役に立つロボットの研究 をしてきました。長年続けた甲斐があり、各分野の学会員とのネットワークも広がっ てきました。そんな時、年に1度行うシンポジウムで、さらに活動を広げるために、 法人化し、企業にも情報提供してもらったらどうかという案がでました。 上田教授はそれに応じ「NPO法人ピース・ロボ」設立のため動き出しました。 公益法人改革の実施が決まったのが、その3日後でした。唯一の収入である会費は課 税の対象とされ、さらに、社会貢献性の判断は課税庁の独断。不当な行政の介入に戸 惑った学会員が法人化に反対しました。上田教授は、いい方法も模索していますが、 目処すら立っていません。

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公益法人改革オンブズマン設立に賛同します。

(団体で賛同される方)
  団体名
  担当者氏名
  TEL
  e-mail

(個人で賛同される方)
  氏名
  所属(差し支えなければ)
  TEL
  e-mail

◆返信先:公益法人改革オンブズマン設立準備会(ombudsman@jcan.net)

  どうぞ、よろしくお願い致します

  田中秀一郎さんより


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