『S−Report』  2/13号   地域のパートナーシップ−参加という名の動員  −まちづくりのあらたな展開を求めて−8

 パートナーシップについてですが、パートナーシップといっても国際的なパートナーシップから地域のパートナーシップまで様々な形があります。
  今回は地域のパートナーシップで、次回は国際的なパートナーシップの話にさせて頂きます。

  去る、8月26日、地方自治を考える会の「アゴラさがみはら」より市民活動団体の連携を推進し、その活動をふくらませていくことの必要性について座談会「アゴラざっくばらん広場」への参加の依頼があり、相模原をおとずれた。(中略)
 この企画に呼ばれた時、相模原でも市民活動センターみたいなものを作ろうとする動きがあり、我々の経験についていろいろ問われるのかなと想像していたが、よくよく聞いていると、手段ではなく、ポイントは相模原市と市民の協働の在り方であることが浮きあがってきた。
 つまり、こういうことである。市はスタートとして市民活動の実態をアンケートによる収集を考えている。そのアンケートの作成について市民とともにつくること、そのスタートが肝心であり、市だけで考えたアンケートでは協働のやり方として好ましくない。という議論がこの前提にはあった。市の担当者としてはもう承認を得たアンケート内容は変えることはできないとのスタンスのぶつかりあいがあった。市としては手続き的に淡々と進めるのが普通であると考え、市民はそうじゃない、これからの協働は行政のひいた道をたどるようなやり方ではないというものである。これからは三鷹や、鎌倉、多摩のような手法ではないかという議論となった。 なるほど、よくありがちな議論である。私からは多摩NPOセンターを市民に任せることに対する責任遂行の力を多摩市/多摩市議会でも問われたが、結果としてその運営にまでこぎついている事実があるのだから、行政は勇気をもって一歩ふみだすのもひとつの策ではないか。行政と市民の協働アクションとしてアンケート結果を検討する部分からまず始めてみては。キーマンとなる市民団体を行政は早くみつけ、そこを核に広げていかれては。という内容を概ね発言させていただいた。
 この種の議論は日本全国にごまんとあると思われる。

 「アゴラざっくばらん広場に出席して」多摩NPOセンター代表 天野 興
 「多摩NPOセンター News Letter 創刊号vol.1」 2000/09/01  

  このように、行政(この場合は市)がパートナーシップ(ある種の「協働」)を推進するといいながら、形ばかりのパートナーシップを強制して「市としては手続き的に淡々と進めるのが普通であると考え」ている官僚の「パートナーシップ」や「参加という名の動員」が「日本全国にごまんとある」

 さて、似たような話はどこにでもあるようです。先日、ある地域雑誌の座談会を見学しました。その雑誌は市民が自治と地域を考える市民により長年運営され、すばらしい内容の雑誌です。

 この座談会では「学生さんが語る地元の街」をテーマに地域を担う若者への期待をもって企画されたようです。しかし、期待とは裏腹に最初は学生はあまり集まりませんでした。  しかし、少数でも集まっていた学生は地域で何かしており、それぞれきちんとした意見をもっていました。しかし、質問する大人たちは「普通の学生は地域で何かしないのに、ここにいるような学生は大学がつまらないから、学外でボランティア等の活動してる」というような先入観で話を進めて、つまり「学生の”お手伝い”を期待している」ことが分かり、学生たちは次第に暗くなってきました。
 
  途中、参加予定だった地域のサポートセンターで活動している学生から「参加できないけど、これだけは言っておいてほしい。”今ある地元の商店街は僕たち学生にはいらない。”」というような伝言があり「学生さんが語る地元の街」は成り立たなくなってしまいました。  また、この座談会は大人たちが「地域に関わってくれない学生たちを参加させるにはどうしたらいいか」、「一緒にやっていくにはどうすればいいのかを知りたい」という目的があって、どこかに「学生の”お手伝い”を期待して学生を参加させようという」意図で座談会を企画していたように思えます。  「学生を参加させよう」というのは「参加という名の動員」だと学生たちは鋭く感じていたようです。

 さて、「まちづくりのあらたな展開」の8つめは「地域のパートナーシップ」です。  

  もちろん、この地域のパートナーシップは官僚的な形ばかりのパートナーシップではないのはもちろんです。しかし、地域のパートナーシップといいながら地域の中で大人や「キーマンとなる市民団体」が同じようなことはしてはいないでしょうか。

 どこでも「まちづくりやNGO・NPO・市民活動の人たちは一部の人たちが何かやっている」という風に言われます  だからこそいろいろな人に参加してほしいと思い、頼み込んで普通の人にイベントや勉強会・集会に来て貰うということになります。 

 こうやっているうちに、あまり広がらないこれらの同質的な人が集まっていてやっている活動は(例えば環境団体なら環境に関心のある人たち同志が)自分たちの内輪の考えが通じる人たちだけとパートナーシップを組むことになります。そうすると、頼み込んでイベントや勉強会・集会に来て貰うその他の人たちは「動員」される単なるお客さんになります。

 そしていつのまにか、地域の人のことを忘れてその同質的な人が集まっている「キーマンとなる市民団体」と「手続き的に淡々と進めるのが普通であると考え」ている官僚が組む「キーマンとなる市民団体と官の間のパートナーシップ」が地域のパートナーシップということになってしまい、それに「市民」が「動員される」例はたくさんあります。  
 このような「キーマンとなる市民団体と官の間のパートナーシップ」に陥らないためには多様な活動だけでなく、何も活動などしていない多様な人たちと接しながら「参加という名の動員」を超えて「参加」を紡ぎ出す必要があります。 (上記の天野さんはこのことを「キーマンとなる市民団体を行政は早くみつけ、『そこを核に広げていかれては』」と提案されています。)

 さて、最後にこのことを具体的に言いますと、ある意味で「今ある地元の商店街は僕たち学生にはいらない。」というのが「学生さんが語る地元の街」の結論かもしれません。しかし、その地元商店街では学生さんが来なくなっていることを寂しがったり残念がったりしている人がいることを考えるとこの言葉はアイロニーとしてもひどい言葉です。

  しかし、地域で活動している学生もいると同時に「地元の商店街は僕たちにはいらない」という学生もいることは事実です。
 この現実を認識して、自分たちの固定観念を超えて「地域やNGO・NPO・市民活動の側も学生を単なるお手伝いとしてではなく、インターン・パートーナーとして迎え入れる体制づくりを考えなくてはならないのではないでしょうか。」(2002/12/19号「ともに学ぶ − 新しい民学協働」)
 
  イペントの紹介


 今年もコミュニティネットワークシンポジウムが開かれます。

  「コミュニティネットワークシンポジウム2003」   ----地域社会のためのコミュニティ・ネットワーク----

 日頃から地域コミュニティでご活躍の住民あるいはNPOの方、新規ビジネスをコミュニティ・ネットワークの中で探ろうとしている方、情報ネットワークを活用した地域社会の再生のあり方を模索している行政職員の方、あるいは技術的な視点を持って、コミュニティの運営にご興味をお持ちの皆様が本シンポジウムで有益な情報を得て頂くと共に皆様方の活発な提言と意見を賜ることを期待して、多数のご参加をお願い申し上げます。

  主   催 電子情報通信学会コミュニティネットワーク研究会、Eジャパン協議会

  後   援 (財)マルチメディア振興センター

  日   時 2003年3月3日 10:00 〜 16:15

  場   所 東京オペラシティ24階 

  実行委員長 三木 哲也(CN研究会委員長、電気通信大学教授)

  参   加 下記サイトからお申込みください。(事前申込み制)
         http://www.ejf.gr.jp/kouenkai/cn2003/formcn.html

  費   用 シンポジウム: 無料 懇親会 : 3000円(消費税込) 詳細
  http://www.ejf.gr.jp/kouenkai/cn2003/index.html

・懇親会費の支払いは当日会場受付にてお願いいたします。

・懇親会に参加者には、書籍「eコミュニティが変える日本の未来 ―地域活性化とNPO―」(Eジャパン協議会編 NTT出版発行)を進呈いたします。
・尚、会場の関係により先着150名様に限らせていただきます。
・会員以外の方でもご参加いただけます。

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