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2003年秋の新作映画メモ
『トゥームレイダー2』 『ティアーズ・オブ・ザ・サン』

『ファム・ファタール』 『フレディVSジェイソン』

『閉ざされた森』 『SWAT』 『バリスティック』

『インファナル・アフェア』 『キル・ビル』 『マッチスティックメン』

『マトリックス・レボリューションズ』 『アイデンティティー』

『リーグ・オブ・レジェンド』 『シャンハイ・ナイト』


『トゥームレイダー2』

 監督:ヤン・デ・ボン
 出演:アンジェリーナ・ジョリー

 大ヒットしたアクションゲームの映画化、続編登場。

 イタリア近海で、海底から遺跡が発見された。世界中のトゥームレイダーが新たな秘宝を夢想し色めき立つ中、いちはやくララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)が発掘作業に入る。だが、遺跡に侵入した彼女を、謎の武装集団が襲った。遺跡の中に隠された秘宝、それは伝説の「パンドラの箱」の在り処をしめす手がかりであった。

 前作『トゥームレイダー』が、話はまあまあ面白かったんですが、サイモン・ウエスト監督の目まぐるしすぎなカット割りでアクションがめちゃくちゃになってしまったのが痛かったのに対し、今作は監督代わってヤン・デ・ボン。さすがに地味に見せてくれます。ただ、元のゲームからしてそうなのでしょうが、主人公ララ・クロフトのアクション面におけるキャラクター性がイマイチ見えてこない。格闘技は何をベースにしているのか、何の武器が得意なのか、ハイテクと肉体の使い分けは、など、細かく描写すればよりキャラが立つであろうに、残念。そういう意味では仲間である執事とハッカーも、ドラマに絡んでこないため、スタイルの確立に役立っていない。

 前作で「泣き」の演技が嘘臭かった、と書きましたが、今作ではそれほどでもなし。これはアンジェリーナ・ジョリーの演技面の進歩と言うよりは、ストーリー面の無理のなさのせいか。ファザコンよりも、そりゃあ男女の絡みの方が説得力がありますわいな、彼女の場合。

 アメリカではこけたそうですが、まあさして面白くもない映画。僕は前作よりは買いますが。

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『ティアーズ・オブ・ザ・サン』

 監督:アントワン・フュークワー
 出演:ブルース・ウィリス モニカ・ベルッチ コール・ハウザー

 元は『ダイ・ハード4』のシナリオだった?作品。

 内戦の続く国に留まるボランティアの医師を、人道的見地から米国軍兵士が救いに行く。ただし医師だけを助け、現地の人間はほったらかし……。しかし医師の懇願を受けた米軍特殊部隊は、難民たちをも国外に脱出させるべく、過酷な逃避行に身を投じるのであった……。いや、なかなか面白そうな話ではありますわね。嘘っぽい匂いはしますが、危機的シチュエーションの盛り上げと、人物描写の説得力さえあれば、傑作になるでしょう。ところが……。

 自分だけでなく難民も同時に救い出せ、と主張するモニカ・ベルッチ医師の説得に応じたふりをする、特殊部隊長ブルース・ウィリス。病院代わりの教会から歩ける避難民を連れ出したのはいいが、迎えに来たヘリは一機だけ。約束が違うと暴れるベルッチを放り込んでテイク・オフ! しかし後にして来た教会の上空を通過した時、教会に残された難民が現地の武装集団に皆殺しにされているのに気付く……「ヘリを戻せ!」。どうもここらへんの展開が曖昧で、隊長のキャラクターも中途半端。最初は任務優先のような顔をしていたのに、突然ヒューマニズムに目覚めるのはなぜか。女医にほだされたならそれでいいんですが、そういう描写もないしな。ブルース・ウィリスがなんか考え込んでるような演技してるだけ。

 とにかく行く先々で非戦闘員を殺して回っている悪逆非道の現地ゲリラの追跡をかわし、ジャングルの中を国境目指して逃避行。あまりに正確な追跡を受けるので、難民の中にスパイがいることに気付きます。そしてスパイの標的として、ゲリラに現地の政権を追われた王子がいることにも……。ここらへんでかなり興醒めしましたね。助けても一銭の得にもならん裸同然の難民を命令に背いてまで必死こいて助けるから面白いので、現政権を倒して正当な継承者を立てる大義名分やら、それにともなうアメリカの国益やら持ち出されても、その純粋性が失われるだけなんですよ。案の定、国境にたどりついても命令違反にはおとがめなし、ご丁寧に絨毯爆撃でゲリラを吹っ飛ばして助けてくれる米軍……。巨乳を揺らしてブルース・ウィリス隊長をたたえる女医。ばかばかしい、ええとこ取りご都合主義の似非ヒューマニズムもいい加減にしろ。

 ハンス・ジマーのいつもとちょっと違う、題材にマッチしたアフリカアフリカしたスコアは素晴らしい。が、それだけの映画でした。

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『ファム・ファタール』

 監督:ブライアン・デ・パルマ
 出演:アントニオ・バンデラス レベッカ・ローミン・ステイモス

 巨匠デ・パルマ、原点回帰?

 『スネーク・アイズ』『ミッション・トゥ・マーズ』と立て続けに大失敗をかましてくれたデ・パルマ先生。最新作は犯罪ものということで、タイトルどおり悪女が主役。X−MENシリーズのミスティークの素顔をようやく拝めるということもあり(いやまあX−MEN2には素顔もちらっと出てたし『ローラーボール』にも出てたはずだけどね)、観る前はまあ多少は楽しみでした。『ファントム・オブ・パラダイス』とかは好きだしなあ。

 しかし蓋を開けてみれば、中身グダグダ。長回しやカット割りなどデ・パルマ節は炸裂しまくりますが、強引な偶然だらけのストーリー展開と禁断のオチの前に愕然。とりあえずたまにはお風呂で眠ってみるのもいいかな……という教訓が手に入りましたが。途中伏線らしきものが提示されるも、後のストーリーには一向に絡まずそのままスルー、かと思いきや意外な形で決着。これ普通ならいいことだと思うんですがラストらへんの展開がデ・パルマにしか出来ない(というか恥ずかしくて誰もやらない)ことをしてるだけに、素直に驚けない。全てが空回り。

 なんか次回作はジェイムズ・エルロイの『ブラック・ダリア』映画化だそうなんですが(しかもマーク・ウォールバーグとジョシュ・ハートネット主演で!)勘弁してくれ、と。おまえはもう一生『ファム・ファタール』撮っとけ、と。

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『フレディVSジェイソン』

 監督:ロニー・ユー
 出演:ロバート・イングランド

 世界中が待望した?夢の対決が実現!

 こういった「対決路線」というのは、裏を返せば本シリーズのマンネリ化が原因。この作品を観る前に、私も本シリーズを当然チェック。しかし時間の都合もあり、結局現時点での鑑賞作は『13日の金曜日』『1』『2』『9』『ジェイソンX『エルム街の悪夢』が一作目だけ、というなんとも中途半端なていたらく。直前に観た『13日の金曜日2』『エルム街の悪夢』は陳腐で恐怖感の感じられない、よく言えば素朴な味わいのある作品でした。ただ、後者はフレディというキャラクターを知らずに観ればそれなりに楽しめたかな?

 さてさて、対決スタート。映画の冒頭は、ジェイソンの目覚めとエルム街を舞台にした最初の殺し。お馴染みセックスに興じる男女をベッドごとまっ二つに! しかしエルム街ですから、殺しが起きても「あいつだ……」「フレディだ……」という事になってしまい、ジェイソン立ち場なし。だが、それこそが自らを忘れ去ったエルム街の住人に、自分の存在を思い起こさせようとするフレディの陰謀だったのだ……。

 エルム街の住人も世代が代わり、若者はデフォルトでフレディを知らない者が大半。過去の惨劇をひた隠しにする大人たちから、フレディ実在の証拠をつかもうとします。ここらの大筋の展開が実は『エルム街の悪夢』第一作の完全なリメイク! あまりにオーソドックスかつ丁寧に状況を描写して行く展開、これを容認するかどうかでこの映画の評価は大きく分かれるでしょう。ジェイソンXのようなシリーズの常識を超えたものを期待すると、いささか肩透かしを食います。ですが、フレディというキャラクターを尊重しつつ無理なくストーリーを作って行くなら、やはりこの方式は正しいと言わざるをえない。夢の中で力を取り戻したフレディは、待望の若者惨殺に乗り出しますが、いざ殺そうとした寸前にジェイソンが横取り!

 お怒りになったフレディ先生は、自分が目覚めさせたのも棚に上げて、ジェイソン抹殺に乗り出す。ここらへん、話に絡む人間のキャラクターも出てくるのですが、全てフレディ視点で通したとしても成立しそうな内容。要は主役はフレディ・クルーガーなのです。ついに正面からの激突の時を迎え、まずはフレディはジェイソンの夢の中に侵入。夢の中でもジェイソンは不死身ですが、自らのホームグラウンドでフレディが負けるはずがない。物理的攻撃(夢の中なのに物理的と言うのも変ですが)が効かないのならと、ジェイソンの幼少時代のトラウマを弄くりだし、水が怖いという弱点を突いて幼児にまで退行させ追い詰める。醜い顔を嘲笑われた過去に、観てるこっちもジェイソンへの同情の気持ちがわいてでた頃を見計らい、フレディ先生の夢の中でのやりたい放題は頂点に!

 しかし人間の策にはまったフレディは、ついに現実世界に引きずりだされてしまいます。ここから反撃を開始するジェイソン。しかし、過去の作品では脆さを露呈していたはずの現実フレディが、なぜか生身でも強い! 監督ロニー・ユーが香港の人だからか、カンフーテイストを交えた恐るべき身体のキレで大鉈を躱し、鉄の爪による連続攻撃でジェイソンを追い込む! ジェイソンを精神的にも肉体的にもここまで追い詰める、恐るべきテクニック。だが、ついにジェイソンも底力を発揮。体力差でフレディを追い詰め、クリスタルレイクの桟橋で鉈の連撃を見舞う! さしものアーネスト・ホーストの超絶テクニックも、ボブ・サップの野獣のごときパワーについに圧倒され始めた!

 ……ま、戦いの決着は実際に本編を観てもらうとして、後半の妥協なきガチンコバトルは映画史に残りますね。フレディの恐るべき強さが十二分に発揮された今作、ジェイソン派にはちょっと物足りない? でも必見です!

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『閉ざされた森』

 監督:ジョン・マクティアナン
 出演:ジョン・トラボルタ コニー・ニールセン サミュエル・L・ジャクソン ハリー・コニックJr.

 期待のミステリ映画。

 国内のミステリファンなら辛うじて知ってるだろう貫井徳郎なんかが推薦してたりして、私的に注目度の高かった今作。森の中で訓練中だった部隊が、数人を残して行方不明に……。尋問に対して口を閉ざす生存者達。彼等の間に、いったい何が起こったのか? 

 と、まあ道具立てと舞台設定は実に魅力的で興味をそそります。生存者達を尋問する二人の下士官。やがてポツリポツリと口にされ始めた事件のあらまし……だが、二人の生存者が語った内容は、まったく矛盾したものであった……。この語りの部分は映像で処理されてますが、「一人称の語り」の映像化である以上、眉に唾付けて見ねばならんのは必定。観てるこちらは、一つの矛盾も見逃すまいと、かなり真面目に映像に没頭。

 が、後半のドンデン返しの連発がこちらの努力をあっさりぶち壊してくれます。小説でも一人称ものにはありがちですが、語り役が見間違い起こしたり嘘付いてたのが原因でした、と言われて推理の前提条件がそもそも違っていたことにされると、かなり報われない気分になるんですな。ドンデン返しにつながる伏線は張ってないわけじゃないんですが、さすがに最後の方になってくると、筋が通ってんのか通ってないのかわからなくなってくるし、状況が二転三転し続けると各々の「転」のインパクトが薄くなるのは明白。

 あとまあ『パルプ・フィクション』を観てる人には、なんとなくオチの見当もつくんじゃないですかね。いやなんとなくね……。

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『SWAT』

 監督:クラーク・ジョンソン
 出演:コリン・ファレル サミュエル・L・ジャクソン オリヴィエ・マルティネス ミシェル・ロドリゲス

 おやっ、またサミュエル・L・ジャクソンが出てますよ。この人、ほんとに出演作が多いですね。意外と知性派だったり、侠気があったり、悪役だったり、あるいは味方組織のボスだったり、役柄も色々。なんとなく出てれば映画に箔が付くような感じはしますが、あまり出過ぎてもどうかなあ……。

 さてこの映画、予告編で紹介されたあらすじが、逮捕された麻薬王が、自分を助け出した者に賞金を出そう、とテレビで声明を出し、大金に浮かされた民衆が、護送中のSWAT部隊を襲う……というもの。昨年のスズメバチをちょっと思い出させる内容。当然、仲間内の裏切りなんかも予想させるわけで、期待感は充分。

 が、この熱い物語展開が、なかなかスタートしない。主人公コリン・ファレルが一般部署からSWATに転任し、頭角を現わすまでの「SWATチームの日常」が延々と描かれ、物語の発端となる麻薬王がいつになっても出て来ない。サミュエル隊長率いるチームに出撃命令が下るのは、なんと映画の半分を過ぎてから! 別に前半がつまらないわけではないのですが、ちと構成に難ありでは……うーん。

 正しき「SWAT」の日常がわかるリスペクト映画。そりゃタイトルがそのものなんだから、いいんですがね。

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『バリスティック』

 監督:カオス
 出演:ルーシー・リュー アントニオ・バンデラス レイ・パーク

 残念ながら、ちょっと寝ちゃったんだよなあ、この映画。仕事が忙しいのがいかんのですよ。カス映画ならともかく、オレも堕落したものです。

 正体不明の最強殺し屋にさらわれた大富豪の子供、子供を助け出そうとする女、上司の命令で子供を助け出そうとするバンデラス、途中寝たからよくわからんけど、子供とその母親というのは、死んだと思ってたバンデラスの妻と子。殺し屋を追ってたバンデラスはその事に気付くと、大富豪と彼の研究する兵器を抹殺しようとする殺し屋と手を組み、悪と対決する! だいたいこんな話ですが、ひたすらキラーマシーンかと思ってた殺し屋が実はいい奴だった……というのはまるで少年漫画並の脚本ですな。しかし途中寝たわりに、たった二人で敵の特殊部隊と対決するクライマックスは無意味にスタイリッシュで結構熱いです。

 殺し屋役はチャーリーズ・エンジェルで一人正統派の武術を修めた女、ルーシー・リュー。さすがに動く動く。あまり美人と思わんだけに、無表情な殺し屋役がはまる。でもってラストはレイ・パークと素手で一騎打ち! チャリエンVSダース・モールの夢対決、レイは小柄な人だと思ってたが、向き合ってみるとルーシーの細さが際立つ。しつこいようだが途中寝たので、あれこれ書くのもあれなんですが、まあまあ楽しめた一本でした。

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『インファナル・アフェア』

 監督:アンドリュー・ラウ
 出演:トニー・レオン アンディ・ラウ アンソニー・ウォン エリック・ツァン

 香港映画と言えば、早撮り、強引な展開、カンフーというイメージを持たれがちですが、何もそういう作品ばかりではない。いや、確かにそういう作品がほとんどなんですけど、年にわずか数本のみ、優れた脚本と演出、最高の演技陣が集い、素晴らしい作品を繰り出して来ます。なぜか同じ監督、あるいは同じ役者たちが、他ではびびるぐらいバカな映画を撮ってたりしますけど……。

 トニー・レオンなんか、近頃はHEROで大きく株を上げました。しかしオレの感覚ではいつまでたっても『ゴージャス』のオカマのイメージがつきまとう。他にも『ブエノスアイレス』なんかのイメージで観る人も多いでしょうし、いやあ香港野郎ってほんとに映画選び、役選びが節操ないですね。アンディ・ラウは割とかっこいい役で通してる方でしょうが、昔のチンピラっぽい感じはやはり忘れられない。と言いつつも、両雄さすがの演技力、これで香港映画を初めて観ました、なんて人は手もなく騙されること請け合いの、超格好良さ。今も昔もカッコイイ役ばっかりやってます、と言われてもつい信じてしまいます。

 今作のお話は、警察学校に入って警官になった男アンディ・ラウ(実はヤクザ)と、ヤクザの盃を受けてボスの手下になった男トニー・レオン(実は刑事)という対照的な運命を辿った二人が、数奇なる出会いの末、対決するというもの。ややこしい設定なんですが、両者自身のキャラクターと、二人を操る刑事およびヤクザのそれぞれのボスがうまく絡み、ストーリーを味わい深くしている。両陣営の思惑が複雑に絡み合い、結果として予想もつかない結末へと進んで行く展開の妙味、素晴らしいかぎりです。闇そのものとでも言うべき黒社会に落ちて行きながらも、己自身の正義へを求めるジョニー・トーの作品とは対照的に、誰よりも光を希求しながらも運命に翻弄され闇へと落ちて行く姿。それらは燦然と輝く太陽に照らされたロケーションなど、演出面でも強く表現されています。

 すでに香港ではパート2、パート3も公開されています。日本上陸が待ち遠しい!

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『キル・ビル vol.1』

 監督:クエンティン・タランティーノ
 出演:ユマ・サーマン ルーシー・リュー 栗山千明 マイケル・マドセン ダリル・ハンナ デヴィッド・キャラダイン

 『ジャッキー・ブラウン』以来、久々の監督作品。あれは面白くなかったですね。なぜって主役の存在感が薄い。主人公であるパム・グリアに対してタラ氏の思い入れが強すぎたのか、ひたすら持ち上げようとしているにも関わらず、ただいるだけのキャラになってました。己がパム・グリアのカリスマ性を知るが故に、ただそれを画面に写し取れば観客の共感も得られるであろうという、思い込みに近いものがそこにあったのでしょうか。

 そして今回の主人公は、ある意味タラがそれ以上に思い入れを抱いているであろうユマ・サーマン。それが敬愛するブルース・リーのトラック・スーツを身にまとい、リスペクトしてやまないカンフー映画とチャンバラ映画、ヤクザ映画ばりに大暴れ……。まさに夢の結晶、だがそれゆえにリュック・べッソンにとっての『フィフス・エレメント』のような作品になってしまうんではないかという危惧が、大いにあったわけです。

 巨匠の夢が花開く時……それは幾多のファンに失望と諦観を抱かせる、悪夢の瞬間……! されどタランティーノの夢を下支えしたのは、ユエン・ウーピンの確かなアクション・コーディネートであり、千葉真一の何年経ってもまるで変わらない服部半蔵であり、かつての巨匠の作り上げた彼等自身の夢そのものであったのです。

 何も考えず、ただ浸りたい、血腥い死闘、脳が割れるような日本語、観終わった後ついつい「ヤッチマイナー!」と叫びたくなるような。ええ、僕は叫びたくなりました。もうこれはオススメとかなんとか抜き、観たい奴は観て観たくない奴は観なきゃいい、観て面白けりゃそれでいい、面白くなくてもただそれだけ、そんな作品です。

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『マッチスティックメン』

 監督:リドリー・スコット
 出演:ニコラス・ケイジ アリソン・ローマン サム・ロックウェル

 ブラックホーク・ダウン以来ということで、リドリー監督、比較的短いスパンでの次作。

 大殺戮映画である前作に比べて、割合軽妙な詐欺師物ということで、いささかインパクトには欠けます。「潔癖性の詐欺師」という主人公の設定も、あざとくて好きになれない。突如現れた娘との交流が話のメインになるが、娘に心を開く過程と潔癖性から解放される過程がわざと混同されて描かれ、単なるイメージの羅列になってしまうからです。

 余裕で20歳超えとるのに14歳の少女役のアリソン・ローマン(実はこれが伏線なのだが)。さほど芸達者ぶりを見せるでもないサム・ロックウェル(これも伏線なんですけど)。画面上に提示され「ない」情報を押さえて行けばまあなんとなくオチはわかります。演出も役者も悪くないしつまらんこともないんですが、まあ凡作です。

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『マトリックス・レボリューションズ』

 監督:アンディ&ラリー・ウォシャウスキー
 出演:キアヌ・リーヴス キャリー・アン・モス ローレンス・フィッシュバーン ヒューゴ・ウィービング モニカ・ベルッチ

 オタク新世紀の代表的映画、完結です。

 前作から半年のインターバルで公開されました、完結編。作中での時間経過は当然一秒後で、なーんの説明もなしにいきなりスタート! とにかく謎てんこもりにして終わった前作から、果たしてどれだけの急展開が用意されているのか……? しかしどうも観ててもすっきりしない。冒頭の囚われのネオや、予言者オラクルの変化など、個々のシーンが大筋の中の一つではなく、単に別の設定の説明のためにだけ用意されているのが原因か。点が線にならないので、とにかく盛り上がりに欠ける。

 ファイトシーンも結局前作から続けて撮ってるわけだから、そう大きな進歩があるわけではなし。いや、前作でちょっぴり出し惜しみしといてくれたらねえ。「セラフ」が「エージェント・スミス」に対して「おまえは倒したはずだ」と言うシーンがありまして、強力な戦闘プログラムであるセラフ(ジェット・リー作品にも多く出演したベテラン、コリン・チョウ)がスミスの分身と闘うシーンを入れてれば、そこらへんの物足りなさも少しは解消されたかも? クライマックスはネオVSスミスの一騎打ち。なんで一万人ぐらいいるのに一人で闘うんだろ……。某漫画のごとく空中で闘うのはそれほど面白味を感じませんで、やはり畳敷き?の部屋でカンフーするシーンの方が何倍も僕の胸を打つ。ああ……一作目は良かったなあ……。

 調和を目標とした妙に大人ぶったストーリーはなんかやな感じで、オチのつけ方も嫌いです。あの世界は今後どうなるのだろう……丸投げやんか。まあいいですが。

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『アイデンティテイー』

 監督:ジェームズ・マンゴールド
 出演:ジョン・キューザック レイ・リオッタ ジェイク・ビジー

 「新本格」ミステリ映画!

 『閉ざされた森』のアホ臭いドンデン返しの連続には閉口しましたが、今作のそれは、回数も抑え気味でなかなかいい感じ。いわゆる「嵐の山荘」ネタなんですが、仕掛けの吹っ飛び方はちょっと半端じゃない。中盤を過ぎるとなんとなく見当がつきましたが、正直自分でも半信半疑。まさかなあ……と思ってたらほんとにそうだった。観てる間というのは、当然あれこれと犯人や展開、トリックを想像しながら観てます。『閉ざされた森』と違い三人称の映像ですから、当然画面から必要な情報はすべて読み取れることになっているはず。でもって中盤の死体消失。明らかに物理的に無理な展開に、これまた当然、物理トリックは否定されるわけで……。

 国産のミステリ読んでたら、バネ仕掛けで死体が飛んで行って塔の上に刺さった、という話がありまして、そういうのが「バカミス」と呼ばれてたりしました。個人的に、物理的に解決がされる時点で、いい意味で「バカ」なものは感じない。馬鹿馬鹿しいだけで。今作のような発想こそ、「バカミス」と言えそうな気がするんですがね。

 中盤で大ネタは割れましたが、最後に一応どんでん返しもあり。これも消去法で一応筋が通っている。状況が限定に限定されているだけあって、消去法がもっとも機能する内容なわけで、これは予測して然るべき? けっこう「フェア」なミステリ映画でした。

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『リーグ・オブ・レジェンド』

 監督:スティーブ・ノリントン
 出演:ショーン・コネリー スチュアート・タウンゼント

 伝説の怪人集結! またコミックの映画化。

 老いを知らぬ男、吸血鬼、二重人格者、透明人間……数々の名作フィクションで活躍した伝説の紳士淑女が、大英帝国壊滅をたくらむ悪の組織と対決! とまあ、お話は面白そうだったのですが、出来上がった映画はどうも中途半端。いやね、悪くはないんですが、ビジュアル志向ではないし、描写もどこかしらディティールが甘いし、脚本もまあ予想通り。アクションも取り立ててスタイリッシュというわけではないし……。ショーン・コネリーは、いくつになっても老骨に鞭打ってる感じがしないのはさすがですが。

 中身もないし、まあまあ軽いノリで観られる映画ではありましょうか。ちなみにこれが、今は亡き南街会館で観た最後の映画となりました。合掌。

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『シャンハイ・ナイト』

 監督:デヴィッド・ドブキン
 出演:ジャッキー・チェン オーエン・ウィルソン ドニー・イェン

 ジャッキーin西部……が、なぜかロンドンへ。

 前作『シャンハイヌーン』はつまらなかったのですが、今作はジャッキーのアクションの量も増え、大仕掛けも連発。そこそこ楽しめる内容になってました。ファンとしては悪役で登場のドニー・イェンに注目。この人もさすがにぼつぼつオッサンになってきた感がありますが、ジャッキーとの対決シーンでは技の切れが異様。動き自体よりも、ピタッと止まった瞬間が網膜に焼き付く。そしてNGシーンでも、ジャッキーが落っこちてるのにピタッと無表情で止まったまま微動だにしない。助けろよ! だがこれはジャッキーも常々唱える「カットまで続けろ」との教えに従った結果だから、無問題なのである。

 相棒役のオーウェン・ウィルソンをあまり買ってないのですが、今回は割と悪くない感じ。続編ゆえにキャラクターの余計な説明が省かれているからでしょうか。とりあえず義理で(誰との)観たら、まずまずでした。

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