463. ノースロップ P-61 ブラック ウィドー 夜間戦闘機 [アメリカ-陸軍]
NORTHROP P-61 Black Widow Night Fighter [US-ARMY]
 

全幅:20.1 m、全長:15.1 m、翼面積:61.6 u、
発動機:P&W.R-2800空冷2重星型18気筒2,00O馬力×2、
総重量:13,450kg、最大速度:590km/h/6,100m、武装:固定20mm×4、旋回12.7mm×4
乗員:3 名
初飛行:1942年5月
 
                                                 Illustrated by KOIKE, Shigeo  , イラスト:小池繁夫氏 2006年カレンダー掲載

 第二次大戦後半に登場したアメリカの本格的夜間戦闘機。 ドイツによるロンドンに対する夜間爆撃の脅威から、専用の夜間戦闘機の必要性を感じていたアメリカ陸軍は、当時大きなプロジェクトを持っていなかったノースロップ社に対して夜間戦闘機の開発を求めた。 ノースロップ社は双胴式の大型機の計画を提出し、これに対して1941年に試作発注され、試作機は1942年5月に初飛行した。 双胴形式のユニークな機体であり、強力な2,000馬力級エンジンを2基搭載した重武装の夜間戦闘機である。
 
 大戦初期に登場したウェストランド・ワールウインドと比較すると、同じ双発戦闘機でも大きな隔たりがある。 英本土防空戦の終わった1940年の秋、レーダー(電波探知機)の開発で世界をリードしていたイギリスはレーダー/マグネトロンに関する情報をアメリカに開示し、航空機に搭載し、夜間に敵機を発見し、攻撃できる、波長の短い(cm波)電波を利用したレーダーAl-X(SCR720)の共同研究に着手した。 
 1941年2月に完成したAl-Xはレドームの中でパラボラ・アンテナが回転して指向角を変化させる。 ドイツのレーダー搭載機ドルニエ217と比べると機首に八木アンテナが見えないところにAl-Xの先進性がある。 一方、日本では八木アンテナの発明者を出しながら、電子機器に大幅な遅れをとり、真に有効な夜間戦闘機を持ち得なかった。(比較として中島「月光」を比較してください。
 
 ノースロップ社で完成した機体は、レーダーと強火力、長時間飛行の燃料に対処するために、総重量13.5トン、2,00O馬力エンジンの双発・双胴の、日本の重爆をも上回るスペックとなった。 乗員の乗る中央ナセルは3段式で、前方がパイロット、2段目がレーダーオペレーター、最頂部は旋回銃塔である。 この銃塔は通常は前方に向けて固定されていて、胴体下腹部の機関砲と同時にバイロットが発射するが、側方・後方の目標に対しては、後部席の第3の乗員が、この銃塔を操作する。 
 
 この巨大な機体の操縦は、離着陸に大翼幅のフラップを使わねばならないために、補助翼は非常に小さい。 そのため横操縦はスポイラーで行うイレギュラーなものだった。(画では右旋回のため右翼のスポイラーが立ち上がっている。その右翼端に補助翼がある)
 
 通常は名称とも絡めて全面黒色に塗られていたが、初期型ではこの画のようにオリーブドラブ色の塗装も使われていた。 生産機数は742機。名称「Black Widow (黒衣の未亡人)」は北米に生息する毒蜘蛛の1種。  1943(昭18)年後半には南太平洋戦線にも登場した。
 
  ノースロップの創業者はジャック・ノースロップ(John "Jack" Knudsen Northrop:1895年 - 1981年)で、ロッキードから独立して、1927年に「ノースロップエアクラフト社」(Northrop Aircraft Corporation)を設立した。 しかし、1929年にユナイテッドエアクラフト(United Aircraft and Transport Corporation)に吸収された。 その親会社がカンサスに移ると、ノースロップはドナルド・ダグラスと協同で「ノースロップ社」(Northrop Corporation)をカルフォルニアに再び設立した。 だが1937年にダグラスと別れて、工場はダグラス(後マクドネル・ダグラス)の工場になってしまった。
しかししかし、ジャック・ノースロップは1939年に再々度「ノースロップ社」(Northrop Corporation)を設立して1944年まで存続した。 しかし、ジャック・ノースロップの没後、1994年にはグラマンと合併して、ノースロップ・グラマンになった。 1940年代にはXP-56 ブラック・バレットのような、いくつかの先進的な無尾翼機の開発をおこなうなど、メジャーではないが個性的な中堅航空機メーカーで、その後のジェット時代では1950年代に開発したF−5が代表作である。
 


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