for Oct. 5, 1996


  1. Burrito Deluxe
    The Flying Burrito Brothers
    (A&M)
    Burrito Deluxe
    (1970)
    
    

    The Gilded Palace Of Sin (1969)
     グラム・パーソンズとクリス・ヒルマンのカントリー・ロックに向かう情熱がごきげんなファースト。
    
    

    The Flying Burrito Brothers (1971)
     パーソンズ脱退後、リック・ロバーツを迎えてのサード・アルバム。
    
    

    Out Of Blue (1996)
     今年、イギリスで編纂されたCD2枚組ベスト。ブリトーズの熱心なフォロワーとしても知られる元ロング・ライダーズのシド・グリフィンが選曲・監修しているので、内容は濃い濃い。なんと、ファーストとセカンドからは全曲収録という荒ワザも披露だ。
    
    

    Sweetheart Of The Rodeo
    The Byrds (Columbia) 1968

     参考出品です(笑)。グラム・パーソンズはザ・バーズにほんの半年の間加入していたのだけれど、そのときに制作された傑作。これが初のカントリー・ロック・アルバムだろう。ここで意気投合したパーソンズとクリス・ヒルマンは、バーズを脱退してフライング・ブリトー・ブラザーズを結成することになる。
     先月はバターフィールド・ブルース・バンド一色。でもって、近ごろはめっきりフライング・ブリトー・ブラザーズです。

     つーか、グラム・パーソンズなのかな。グラム・パーソンズの味がしっくりきてる今日このごろって感じ。もちろん、昔も好きだったけど、その後、ある時期……んー、だいたい80年代のころとか、パーソンズのインナーな肌触りってのが、なんだかしっくりこなくて。ちょっとうっとうしくて。たぶん時代の空気感の問題だったんだろう。それが、近ごろはまた妙にしっくりくるようになった。面白いね、時代の流れってのは。

     ぼくはカントリー・ロックってのが基本的には大好き。以前、ここに書いたポコとか、クラレンス・ホワイト加入後のバーズとか、70年代初盤、ぼくが高校生のころ、来日公演に通い詰めたニッティ・グリッティ・ダート・バンドとか、初期のイーグルスとか。

     そんな中で、フライング・ブリトー・ブラザーズ(当時はフライング・バリット・ブラザーズって言ってたけど(笑))はちょっと異彩を放っている。繰り返しになるけど、ほら、彼らはちょっとインナーだから。ぼくの場合、基本的にはバカ・ポップ好きなもんで、正直言うと、ポコとかニッティ・グリッティのほうが、特に高校時代とかは好きだった。フライング・ブリトー・ブラザーズで言えば、3枚目のアルバム、グラム・パーソンズが抜けて、リック・ロバーツが加入してポップさを増した『The Flying Burrito Bros.』(71年)とかのほうがとっつきやすかった。実際、ぼくが初めて買った彼らのアルバムは、このサード・アルバムだったし。

     でも、そんなおばかなぼくも、聞き続けているうちに、大学生ぐらいになってから、だんだんグラム・パーソンズの持ち味にハマってきた。でもって、いつの間にやら69年のファースト・アルバム『黄金の城(The Gilded Palace Of Sin)』とか、ここにあげた70年の『Burrito Deluxe』がむちゃくちゃよく聞こえだしたんだよなぁ。あー、懐かしい。確か75年ごろ、幻の名盤再発ブームみたいなときに国内盤がリイシューされたんだっけか。そのころ手に入れて、えんえん愛聴してきました。

     けど、先述したように、一時、80年代ぐらいにすっかり聞かなくなっちゃって。それが、いつごろからか、またここ2〜3年、妙にグラム・パーソンズ的な肌触りが気になり始めた。同じような気分を抱いている人、実はけっこう多いんじゃないかな。

     彼らはカントリー・ロックの先駆者としてポップ・ヒストリーに名を残しているわけだけど。いわゆるカントリー・ロック一般の、なんとも底抜けに陽気なイメージとは裏腹な、グラム・パーソンズならではのインナーな手触りってやつがポイント。サーフィン&ホットロッドの先駆者ながら、どこか内省的な志向を持ち、それゆえに唯一時代を超えて生き残ることができたブライアン・ウィルソン/ビーチ・ボーイズの在り方と、どこか共通するものがあるような気がするのはぼくだけでしょうかね。
    
    
    
  2. New World Order
    Curtis Mayfield
    (Warner)

     何も言うことなし。感動に打ち震えるばかりです。やっぱりいい声だよなぁ。詳しくはこちらを。
    
    
    
  3. The Paul Butterfield Blues Band
    The Butterfield Blues Band
    (Elektra)

     フライング・ブリトーズにトップの座を奪われたとはいえ、いまだにぼくの仕事場のCDプレーヤーでは、こいつらの音楽がよく鳴ってます。

     スペースシャワーで一緒に仕事しているDJの“きたふゆ”が「あー、あたしもバターフィールド・ブルース・バンド好きだけどぉ、なんかどの曲も同じに聞こえなぁい?」とかヌカしてたので、しかってやりました(笑)。

     詳しくは、前回のトップ5を。
    
    
    
  4. Jason Falkner Presents Author Unknown
    Jason Falkner
    (Elektra)

     最初にCD買ったときは、どこの何者だかさえさっぱりわからなかったのに、買ってみたら、ブレンダン・ベンソンの知り合いだったり、元ジェリーフィッシュだったり。いろんなことが判明して。やー、楽しい楽しい。

     これも詳しくはレビュー・ページのほうを見てください。……ったって、そんなに詳しいこともわからずに書いているんですけどぉ(笑)。
    
    
    
  5. In The Vicinity Of The Heart
    Shenandoah
    (Liberty)

     いきなりコンテンポラリー・カントリーなんですけど。

     これ、実はですね、例のビーチ・ボーイズのカントリー・アルバムのことを扱ったビルボード誌の記事があって。その中でカール・ウィルソンがこんなことを言っているわけですよ。

    Carl Wilson, who has been coming to Nashville to co-write since 1985, says he has long been a country music fan. "I called Brian the minute I first heard Vince [Gill],"he says. "He's just unbelievable. And when we first heard 'Somewhere In The Vicinity Of The Heart', we just played it over and over."

     と、ここまで言われちゃ、ファンとしては黙ってられません。ぼくは文脈から言って、てっきりヴィンス・ギルの曲かと思って、コンテンポラリー・カントリー・ファンとしてもぶいぶい言ってるノージからヴィンス・ギルのベスト盤を借りたりして聞きまくってみたんだけど。「Somewhere In The Vicinity Of The Heart」なんて曲はないわけですよ。

    Shenandoah  なので、さらにノージに相談したりして、これがシェナンドーなるカントリー・グループがアリソン・クラウスって女性カントリー・シンガーとデュエットして一昨年くらいに大ヒットさせた曲だってことをつきとめたわけです。やー、深いね、カントリーの世界は。

     でもって、CD屋さんに飛んでいってこのアルバムを購入したんだけど。曲調は、最近のカントリーに多い、AORっぽいミディアム・スロウ。で、なんとソングライターはビル・ラバウンティでしたよ。ノージが常々主張していることではありますが、かつての70〜80年代AORの人脈ってのは、今やほとんどナッシュヴィルに向かっちゃってるんだなぁ、と。再確認した次第です。