2006年秋、レンタカーを駆ってアメリカ南西部をドライブした。
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TAMAYO の 旅行記 ③

【11日目】 New Nexicoに入るとメサが現れた。まだ岩だらけでなく木々が、とことどころ繁っているが、そろそろ高地の気候になって行く。今日はどのあたりで泊まるかまだ決めていないけど、やっぱりニューメキシコの気候は乾いていて気持ちがいい。 サンタフェとサンタローザの間にLas Vegasという街がある。あの不夜城のベガスとはなんのかかわりもない。小さないい街らしい。行きたかったけれど、時間がないのであきらめてAlbuquerqueまでRoute66でゆっくり行くことにした。途中フォルクスワーゲンのカブトムシが、5台土に刺さっていた。ルート66沿いにはキャデラックランチといってキャデラックが10台ほど刺さっている有名な場所があるようだけれど、そこにはいかなかった。このワーゲンランチは全く情報もなかったので偶然出会ってびっくりした。行きはアルバカーキーの住宅街に泊まったので、オールドタウンへ行ってみた。Route66沿いのオールドタウンは、活気があって古い店も軒なみ営業している。アルバカーキーの人たちはこの街を残そうとしているのだなあと思った。教会に何故かRoute66のエンブレムが付いている。古い劇場のチケット売り場には、ジョーンバエズのコンサートのポスターが貼ってあったり、ごく普通のバーガーショップの店先に大きなジュークボックスが現役で使われていた。アメリカを使い捨て文化だと日本人は言うけれど、日本の方がずっと使い捨てだと、今までの旅で思い知らされた。私たちが歩いてきたのは、アメリカでも西南部の田舎町だからなのかも知れないが、かなり古いものを大事に修理して使っている。文化的にも60年代というのはアメリカ人にとっては、特別な時代だったのだろうか?いろんな街の、そこここに60年代の足跡を感じさせるものが残っていた。その時代に若かった人たちが今、それなりの年齢になって、それなりに力も持って、自分たちの青春を覗こうとしているのだろうか?アルバカーキーの街は相変らず夕日がまぶしい。でも来た時よりよりも気温はもう5℃くらい下がっているようで、木陰に入ると肌寒いくらいだ。来週は多分、急に秋になるのだろう。オールドタウンのちょうど真ん中あたりに、おいしそうなピザ屋さんがあったので、ミートピザ18インチ(これが一番小さい)を注文した。出てきたピザを見てびっくり、小型のタライ位の大きさだ。「うぁ!!」と二人で顔を見合わせて笑っていたら、店の男の子が、バギーバッグを持ってきてくれた。おいしいピザだったが、私は一切れで充分だった。後になって、36インチのGパンを、ペタリとおいたウエストサイズが18インチだよねとYASUHIROと大笑いだった。今日はこのオールドタウンに泊まろうと思って、また街をぶらぶら歩いていたら、白人の男性に道を聞かれた。私が聞きたいくらいなのに・・・・・街の小さな広場は、ホームレスのたまり場になっているようで、みんな食べ物を持ち寄って、楽しそうにおしゃべりしていた。木漏れ陽が、彼らの肩にまだらにキラキラとこぼれてのどかな風景だった。アルバカーキーはいきなり日が沈む。この前来た時もそうだった。高地で高いビルがないので、地平に隠れるまで夕日が輝いているからなのだ。まだ陽は高い、けれど夕暮れだ。そんな時間が3時間も続く。だから、明るいけれどモーテルにチェックインしようとオフィスへ行ったら、いやに宿泊費が高い。普通の倍くらいだ。聞けば、明朝バルーンフェスティバルがあるそうだ。そういえば、ビジターセンターで、気球のパンフレットの写真を何度も見かけたが、気にもしていなかった。仕方ないので隣町まで行くことにした。ナインマイルヒルズへいく途中に、リオグランデ川が流れていた。このあたりはまだ川幅が狭く、美しい川だった。US40号を西へ向かう途中、急に空が暗くなってきた。夕暮れと巨大な黒雲が一緒になってやってきたようだ。大きな雨粒が、フロントグラスにポツポツとあたり始めたと思ったら、いきなりあたりが真っ白になるほどの雨が降り出した。稲妻が空を走る。前をいく車が、まるで滝のむこうを走っているようにしかみえない。昨日YASUHIROが、テレビの天気予報を見ながら、「サンダーて雷やて!」「そしたらサンダーストームは、雷と嵐か?」なんていっていた。「サンダーストーム、サンダーストーム」なんてしきりにいってるのを聞いた。そのサンダーストームだ。昼間気がつかなかった避雷針があちこちに立っていて、「サンダーよこっちにおいで」と赤い光をキラキラさせ、雷を呼んでいる。荒野の用心棒だ。車の前方少し先に、小さな光が3個交差しながらうろちょろ動いている。なんだなんだと思って近づいてみると、バイクが3台ずぶぬれでツーリングだ。 「バイクは大変やな〜」とYASUHIROは相変らず落ち着いている。どっちにしても雨宿りするところもないし、と道路沿いのモーテルの看板を探していると、あったあの《6》の安っぽい文字が、Grantsは何もない田舎町だ。モーテル6にチェックインし。雨は小やみになっていた。How Much? 40$54¢ 地獄に仏にしては安い。

【12日目】朝はもう秋だった。US40でフラッグスタッフへ向かう。ARIZONAに入ると、また赤い岩だらけの大地が広がっている。ただ、その岩だらけの異様な風景を見るだけで何度も感動してしまう。奥穂高、紀州の川、宮古島の海、みんな美しいと思ったけれど、この赤い大地のように、人を寄せつけない威厳を感じたことはなかった。アメリカに来てからは、ずっと通り過ぎる風景に感動していた。特にニューメキシコやアリゾナのインディアンリザベーションの風景が好きだ。草も木も育たない。ただひたすら太古の昔から、隆起と侵食を繰り返している岩だらけの自然の姿は本当にすごい。これから先は余裕があるので、出来るだけルート66を走ることにした。途中「ツインアロー」というガソリンスタンドの横に大きな弓矢が2本刺さった場所があった。昨日のワーゲンといい今日の弓矢といい、何なのかと思ってしまうけれど本当に笑っちゃう。こういうのを昔キッチュといっていた気がする。その近くには、TwoGunsという名の街がある。まさか巨大な拳銃が2本刺さってるなんてことはないと思うけれど、一応ルート66沿いの名所にはなっている。そこまでは行かなかった。 Frag Staffに着くすこし前に、Walnat Canyonがあった。ここは深い森の中に、鋭く切り込んだ谷があり、谷の下までは見えなかったが低い木が生えていた。色々な動物が生息しているらしい。谷の途中に岩を掘ったインディアンの居住跡を見学出来るようになっていたけれど、昨日の嵐の後で風が強く、鉄柵につかまっていても飛ばされそうだったので見にいかなかった。森の中を少し走って、またRoute66にでた。金曜日の夕方になるとキャンピングカーをよく見かける。キャンピングカーの原形は幌馬車なのだろうか?アメリカ人のキャンピングカー好きもうなずける。この前フラッグスタッフに来た時は真っ暗になって、へんなモーテルに泊まってしまったので、まだ明るいうちから、この前通った道からオールドタウンに向かって、早めにモーテル6にチェックイン。その後アムトラックの駅へ行ってみた。アムトラックの駅のある街に泊まるのは初めてだった。今日の汽車はもう来ないと駅員がいった。1日一本もなさそうだ。時々雨が降ってきて、なんとも言えない旅情を誘うような風情のある駅だった。街はいかにも昔のアメリカの田舎町という感じだが、何となく寂れていて活気がなく、ちょっと怪しげな女性がうろうろしている一角もあった。

【13日目】朝は寒い。Tシャツ、セーター、パーカー、フリースありったけの服をきて、再びグランドキャニオンへ向かう。昨日の雨のせいかメサの色がいっそう鮮やかな紅色をしている。砂漠の低いところに少し水が溜まっているところもあった。89号は一度通った道なので安心していたが左側に見覚えのない鉄の橋が見えてきて、64号に乗り換えるところを通り過ぎて、Pageに向かっていることに気がついた。1時間程戻って、Cameronの先で64号に入った。グランドキャニオンの入り口でもう一度通行料金を払い、デザートヴューに着いたのはもう10時半か11時になっていた。午前中の光線で見ると、この前夕方に来た時ほどきれいだとは思わなかった。キャニオンは初冬の気温になっていた。わざわざ日の出や日の入りのキャニオンを見に来る訳がわかった。太陽を見るのではなく、その時間のキャニオンの影の深さが美しいのだ。グランドキャニオンは時間によって全く違う顔を見せるところだ。64号のカーブの道は美しい。89号に出る途中に、インディアンが屋台の土産物屋を広げているところに車を置いて、ずっと下の方のごろごろ道を降りて行くと、キャニオンの尻尾みたいな小さな谷があって、これもコロラド川が近くに見えて面白かった。土産物屋で乳白色の熊の型と黒い輪の型をした石を買った。店のナバホのおばさんが、何処から来たのか?と聞くので、ジャパンというと知らなかった、もしかして発音が悪くて通じなかったのか?もう1ヶ所こんな場所に寄ってから、89号にのって北へ向かった。右側160号にわかれてモニュメントバレーへ向かう道を見ると懐かしい。BiterからKaibab Trailに入るこのトレイルの風景は美しい。多分サウスリムの谷を越えて、向こう側に見えたのがこのあたりかも知れない。カイバブトレイルに来て本当によかったと、YASUHIROと一緒にわいわい喜んで、ノースリムのビジターセンターへ行った。ビジターセンターのある建物は2階から上がロッジになっていたが、空室はなかった。Kanabuまで行けば、モーテルが15軒位あるといって、電話番号の書いてある紙をくれた。そろそろ日暮れに近かったので、急いでノースリムからカナブへ向かった。ビジターセンターの辺りは背の高い林だったので暗かったが、降りるにしたがって夕暮れの山並みがひらけてきた。今までの赤い岩だらけの景色ではなく、深い色の森が繁る山が重なり、緩やかにひろがっている。凄烈な風景だった。カナブへは1時間ちょっとで着いた。薄明かりの残る街は白い瀟洒な建物が、ゆったりとした淡い灯をともして、道の両側に並んでいる上品な街だ。モーテルも上品な感じのものばかりだった。フォーシーズンズというモーテルにチェックインした。2階の部屋から見下ろすと、広い前庭にハート型のプールがあり、澄み切った空に白い月が浮かんでいた。何もな居待ちだが、澄んだ空気と、静かなゆったりとした時間が流れていた。

【14日目】 Kanabはユタ州に入っている。Las Vegasへ向かうなら、ZIONの中を通る道を抜けてみようと、109号のシーニックロードにのった。途中岩山に穴を開けドアをつけて住居にしているようなところがあったり、今までと全く違う感じの道を走って行くと、だんだん山がせまってきた。何だか日本の山深い道を走っているような感じだ。やがてゲートがあり、番小屋の建っているところにくると、車はそこで止まって料金を払っている、20$。YASUHIROが車を降りて、ラスベガスへの道を聞くと、ここを通るか、カナブへ戻って389号で行くしかないというので20$払った。カイバブトレイルはアリゾナだからただで、こちらのトレイルはユタだから20$なのか?でもゲートを入ると急に山がせまってきて、ここの地層は水の流れた跡のような紋様だ。山の色はレモンイエロー、そして木々は金色に紅葉している。水の流れのようにゆるやかな紋様を描いている山が、道路のすぐ脇から立ち上がっている。金色の落ち葉が道路に降り注いでくる。アメリカの風景には驚かされっぱなしだ。レモンイエローの山肌なんて見たこともなかった。やがて電気の全くついてないトンネルに入る。曲がり角だけ外の光が入るようにトンネルをぶち抜いてある。あとは車のライトだけでそろそろと走る。結構長いトンネルだ。トンネルをぬけると、はるか下の方までゆるやかにカーブした道路が見えた。これを下りるとビジターセンターがあった。ザイオンはこのトレイルの北に、広いナショナルパークがあって、そこは車では入れない。マウンテンバイクや徒歩で入って行くようだ。 ほんのちょっとザイオンをかすめただけだが、清涼感のある美しい場所だ。ビジターセンターからUS15に出るまでのトレイルは、観光牧場や洒落たロッジのある別荘地だ。日曜日なのでたくさんの家族連れを見かけた。US15でちょっとだけアリゾナ州をのすみを横切り、Nevadaに入る。途端にまたひどい砂漠地帯だ。今度こそ観光にもならない、ただの堅そうな岩山と石ころだらけの乾いた土地が続いている。その砂漠に、高い送電線の鉄塔がそびえ立ち、すごい量の高圧電流がどこかへ送られる。ラスベガスに近づくとフリーウェイを走る車が急にせわしなくなってきた。たいして大きくない街でも、いやにがさつな感じがする。フリーウェイを下りて街の中心に入ると、渋滞にまき込まれた。メインストリートの両側の歩道は、人の波であふれている。自由の女神やエッフェル塔、アラブの城など、安っぽいレプリカが並んでいて、新宿とディズニーランドを一緒にしたような街だ。メインストリートはV字型にわかれていて何だか分かりにくいし、街外れまで来るのに、他の街より分かりにくかった。街外れには市営住宅のようなアパートがかたまっていて、黒人のお兄さんが出入りしていた。その近くのモーテル・エガシーにチェックイン。オフィスにはオカマの人。「あなたのパスポートも見せてちょうだい」なんてかわいい声で言ってにっこり微笑んだが、ヒゲがういていた。荷物を下ろして、すぐに街へ出かけた。駐車場は無料だが、カジノを通らないと外に出られないようになっている。何処に行くにもカジノを通らなければならない。カジノも直線で300メーターはありそうだ。ホテルの1階は全部カジノだ。歩道は街路灯がなくても、ネオンの光で充分明るい。路地は案外暗い。夜に歩道橋の上から、下を通る広い道路が砂漠の方まで続いているのを見て、初めて新宿ではないなと思った。ホテルの噴水ショーはきれいだった。真っ黒な潜水服を着た男が二人、ひそやかに噴水池に潜って行った。と思ったら、アンディ・ ウィリアムスのスタンダードに合わせて水のダンスが始まった。あちらこちらのビルに取り付けてあるモニターでは、いろんなショーやミュージカル、ボクシング、ロデオなどの様子が、時々観光客を呼んでいる。散光であふれかえった街の中に、砂漠の中で何処でも見かけた送電線の鉄塔が立っているのがなにか滑稽に見える。9時頃モーテルに戻る途中、モーテルのあるイーストラスベガスもまた、夜になるとカジノの街だった。モーテルのバスはガスで何故かお湯が出なかった。部屋を変えてもらっても、またでなかったので今日はあきらめた。

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