フィーダーとコネクター
アマチュア無線では無線機とアンテナに関心がある人は多いですが、意外とフィーダ(給電線)やコネクタに無関心な人が多いものです。フィーダーは無線機とアンテナを結び信号を伝える重要なものです。フィーダーの選択を間違えるとロスが大きくなり、せっかく受信した信号が消えてしまいます。特にVHFやUHFなど周波数が高くなるほどフィーダーロスによる減衰が大きくなります。現在は殆どの場合、給電には同軸ケーブルが使用されますので、ここでは主に同軸ケーブルについて説明します。同軸ケーブルにも太さや材質により多くの種類がありますので、使用するバンドと設置環境を考えて適切なケーブルを使用しましょう。
(1) | (2) | (3) | |
10 | D | - | SFA |
(1)ケーブルの太さで内径をmmで表したもの。3〜12がよく使用される。太くなるほどロスが少なくなる。 (2)特性インピーダンスを表します。Cが75Ωでテレビ受信用などに使用されます。Dが通信用の50Ωでアマチュア無線では通常はDを使用します。 (3)絶縁体の材質などケーブルの構造を表したもの。 2V→FB→SFB→SFAの順にロスが少なくなる |
型 名 | ケーブル 外径 mm |
周波数ごとの減衰量 (dB/10m) | 波長短縮率 (約) |
|||||
30M | 50M | 145M | 430M | 1200M | ||||
PE 充実 タイプ |
3D-2V | 5.3 | 0.77 | 0.99 | 1.71 | 2.99 | 5.2 | 67% |
5D-2V | 7.5 | 0.44 | 0.6 | 1.05 | 1.85 | 3.5 | 67% | |
8D-2V | 11.5 | 0.3 | 0.4 | 0.72 | 1.35 | 2.6 | 67% | |
10D-2V | 13.7 | 0.22 | 0.31 | 0.56 | 1.05 | 2.1 | 67% | |
低損失 タイプ |
3.5DS | 5.7 | 0.49 | 0.64 | 1.1 | 1.93 | 3.34 | 77% |
5D-FB | 7.6 | 0.33 | 0.43 | 0.74 | 1.31 | 2.3 | 80% | |
8D-FB | 11.0 | 0.22 | 0.28 | 0.49 | 0.89 | 1.6 | 80% | |
10D-FB | 13.0 | 0.17 | 0.22 | 0.39 | 0.72 | 1.3 | 79% | |
23D-4F | 31.0 | 0.07 | 0.09 | 0.17 | 0.32 | 0.65 | 92% | |
高発泡 プラス チック |
5D-SFA | 7.6 | 0.28 | 0.36 | 0.60 | 1.10 | 1.85 | 88% |
8D-SFA | 11.1 | 0.18 | 0.24 | 0.40 | 0.74 | 1.30 | 88% | |
10D-SFA | 13.0 | 0.15 | 0.20 | 0.33 | 0.56 | 1.05 | 88% | |
12D-SFA | 15.6 | 0.12 | 0.16 | 0.27 | 0.48 | 0.88 | 88% |
上の表はSWR 1.0(アンテナと完全整合状態)の場合の周波数別の10メートルあたりの減衰量です。20m・30mと長くなるにしたがって上記数値の2倍・3倍・・と減衰量も増えます。よってケーブルはなるべく“太く短く”が理想です。ただ太くなるにしたがって価格も高くなります。同様に材質もFB、SFAと低損失なほど価格が高くなります。それに太くなるにしたがって芯線も太くて硬くなり、加工や取り回しがやりにくくなります。運用場所の物理的環境と運用周波数を考えて最適のケーブルを選択してください。
特にUHFでケーブルが長くなる場合はできるだけ損失の少ないケーブルにしてください。HF帯は減衰が少ないですから、5D2Vなどの安価なケーブルで十分です。
自動車に配線する場合は物理的に太いケーブルは不可能なので3D以下の細いものが使用されます。さらに車内への引き込み部分は2Dとか1.5Dなど極端に細くなっている製品が多いようです。自動車の場合は長さが3〜5m前後と限られていますので、さほど減衰を気にする必要もないと思います。
買うときは余裕をみて、測った数値より2m程度長めに購入するとよいでしょう。ピッタリ購入して足りなくなったという話をよく聞きます。特に太いケーブルはコネクタの接続部分とか曲げる部分は図面通りにはなりませんから。
それからケーブル長は1/2波長の整数倍にするとよくマッチしSWRが下がるという話をよく聞きますが、これはハムの迷信であって全く気にする必要はありません。物理的な取り回しに必要な長さでよいのです。
■同軸ケーブルの寿命
屋外に配線している同軸ケーブルは一般的に3〜5年を目処に交換するのがよいとされています。でも10年以上不具合なく使っている場合もあるようです。一番劣化しやすいのはコネクター部分で、雨水の浸入が最大の原因です。自己融着テープで厳重に防水しておけば比較的長持ちするでしょう。外部被覆は紫外線や太陽熱などで見た目は劣化するようでが、よほどの年月が経たない限り中の導体までは影響しないでしょう。それより傷があれば雨水が浸入しますので、傷の有無を定期的に点検するとようでしょう。またローテーターやクランクアップタワーの可動部分は非常に劣化しやすいです。特に芯線が硬いケーブルは外見は大丈夫でも芯線が断線していることもあります。頻繁に動かす場合は寿命が1年程度ということもあるようです。
いずれにしても定期的に目視による点検とSWR測定で異状の有無を確認してください。SWR測定の注意点は、ケーブルが劣化するとSWR計の値が良くなるということです。SWR値が悪くなるのが劣化の証拠となれば分かり易いのですが、皮肉にもその逆で劣化すると数値が低くなるという点に注意しておいてください。定期的に測定し、何もしないのに徐々にSWR値が低くなってきたら、ケーブルの劣化を疑ってみてください。
■フィーダーの種類と使用方法
既に述べたように、現在はフィーダーといえば殆どの場合で同軸ケーブルを使用します。同軸ケーブルは単にリグからアンテナに高周波電流を伝えるもの(非同調給電線)と思えばよいでしょう。しかし、現在はごく少数派ですが、同軸ケーブル以外にもフィーダーはあります。またフィーダーの使用方法にも違いがあります。市販アンテナを同軸ケーブルで繋ぐ場合は特に必要な知識ではありませんが、ハムとして知っておいて損はありませんので、フィーダーの種類と使用方法について簡単にふれておきます。
●フィーダーの種類
(1)同軸ケーブル
中心導体をポリエチレン等の絶縁体で包んであり、その絶縁体を外部導体(編組線)で包んであります。断面が円形ですので形で判断できます。現在の主流です。構造上耐電圧は下記の二線式より劣ります。通常は非同調給電線として使用します。電気的な働きの平衡・不平衡で分類すると、不平衡フィーダーです。よってアンテナ(平衡回路)に接続するにはバラン(平衡/不平衡整合器)が必要です。市販アンテナには何らかの整合処理が施されていますから、取扱説明書通りに接続すればよいでしょう。
(2)平行二線式フィーダー
文字通り二本の同じ導線が平行になっているフィーダーです。電気的な働きで分類すると平衡フィーダーです。断面の形や見た目の形状から、リボンフィーダー、めがねフィーダー、はしごフィーダーと呼ばれるものがある。
a.テレビ受信用フィーダー
VHFテレビに使用される300Ωの通称“リボンフィーダー”とUHFテレビに使用される200Ωの通称“めがねフィーダー”がある。現在はテレビ受信用も同軸ケーブルが主流だが、いまでも安価で市販されている。インピーダンスが高いので給電線としては使いにくいが、自作アンテナの材料として使用することもできる。
b.オープンワイヤー(はしごフィーダー)
平行する2本のワイヤーの平行距離を一定にするため適度の間隔でスペーサーが取り付けられており、その見た目の形状から通称“はしごフィーダー”とも呼ばれます。ロスが少なく、耐電圧にも優れている。インピーダンスが高いので同調フィーダー(下記参照)として使用されることが多い。昔は主流でしたが、同軸ケーブルが登場してからは殆ど使用されなくなりました。市販品がありませんので自作するのが普通です。現在は同調フィーダーなど特定の目的以外では使用されません。
●フィーダーの使用方法
(1)同調フィーダー
フィーダー長を使用波長の1/4λとか1/2λなど特定長にし、フィーダー上にわざと定在波を乗せ、フィーダーも含めてマッチングをとる給電方法。1本のアンテナを複数の周波数帯で、フィーダーを含めて同調させることができる。はしごフィーダーの時代によく利用された給電方法。高いSWR値の状態で使用するので定在波が立ち、その電流最大点で給電することを電流給電、電圧最大点で給電することを電圧給電という。現在は特定のアンテナか自作や実験であえて研究する人以外はあまり使われない。
(2)非同調フィーダー
アンテナ自体でマッチングをとり、フィーダーはできるだけ進行波のみが伝わるようにする使い方で、フィーダー長は任意(電気的長さの制限が無い)でよい。現在はほとんどこの方法で給電される。同軸ケーブルは非同調フィーダーとして使用することが前提でつくられている。
コネクター
アンテナと無線機はケーブルでつなぎますが、その接続部分のコネクタにはM型とN型があります。ハンディ機にはBNC型があります。いずれも無線機やアンテナのコネクタ端子に合わせればよいわけですが、N型は50Ωに整合された低損失タイプで高価ですからUHF(430MHz)以上の高い周波数で使用されます。HF帯は損失が少ないので安価なM型で十分です。VHF(50MHzと144MHz)も通常はM型でOKです。M型にも50Ω整合型の低損失タイプがありますが非常に高価です。アンテナ切換器などの端子もM型とN型がありますから運用する周波数によって選択しましょう。
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1)本体シェルより接続ナットを外す。 MP-8,MP-10は後部についている止めネジ(左ネジ)を外してから行う 2)接続ナットをケーブルに通し、外部被覆を a の寸法で切り取る。 3)外部導体を b、絶縁体を C の寸法で切り取る。(ここで外部導体(アミ線)にハンダメッキしておくと d 部が付きやすくなる) 4)本体シェルを装着し、d 部をハンダ付けする。 5)接続ナットをもとの位置へ戻す。 参考値(mm) MP- 3 a:25.5 b:17.0 c:15.0 MP- 5 a:25.5 b:17.0 c:15.0 MP- 8 a:25.5 b:17.0 c:15.0 MP-10 a:26.0 b:17.0 c:15.0 |
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1)本体シェルから締付ナットを外し各部品を取り出す。但し、絶縁体、ブッシングは図の順にに本体シェルの中に再び装着する。 2)ケーブルへ締付ナット、ワッシャー、ガスケットの順に通し外部被覆を a の寸法で切り取る。 3)クランプを装着し外部導体をほぐして折り返してそろえ、絶縁体を b の寸法で切り取る。 4)中心コンタクトを中心導体へ装着し、C部をハンダ付けする。 5)(4)でできたケーブルを本体シェルへ挿入し、締付ナットで固定する。 参考値(mm) NP-3 a:13.5 b:6.0 NP- 8 a:9.0 b:5.0 NP-5 a:13.5 b:6.5 NP-10 a:11.0 b:4.0 |
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1)本体シェルから締付ナットを外し各部品を取り出す。 2)ケーブルへ締付ナット、ワッシャー、ガスケットの順に通し外部被覆を a の寸法で切り取る。 3)クランプを装着し外部導体をほぐして折り返してそろえ、絶縁体を b の寸法で切り取る。 4)中心コンタクトを中心導体へ装着し、C部をハンダ付けする。 5)(4)でできたケーブルを本体シェルへ挿入し、締付ナットで固定する。 参考値(mm) BNCP-58U a:7.5 b:3.5 BNCP-3 a:7.5 b:3.5 BNCP-5 a:9.0 b:3.5 |
ハンダごては60〜100Wのものを使いましょう。40W以下のコテだとハンダの溶解に時間がかかり絶縁体が溶けたり変形してショートの原因になります。強力なコテで素早く行うのがコツです。ケーブルの切断には金ノコを使用しましょう。ニッパやペンチで切断すると切り口がつぶれます。外部被覆と絶縁体はカッターナイフで切り取ります。N型とBNC型の外部導体は千枚通しなどで丁寧にほぐす。
コネクターの取付けは難しくありませんので自分でできるようにしておくとよいでしょう。できない場合は有料で取付けてくれるハムショップもあります。割高になりますが両端にコネクター付きの既製品ケーブルもあります。既製品では10、15、20、30mなどが発売されています。モービル用では3〜5m前後が発売されています。
コネクターの屋外部分での接続には自己融着テープを巻きその上からビニールテープを巻きます。ビニールテープは隙間から水が入りますので、必ず最初に自己融着テープを使用してください。
ケーブル(フジクラ) | コネクター (東洋コネクター) | ||||||
型名 | 価格/m | M型 | 価格 | N型 | 価格 | BNC型 | 価格 |
RG58/U | 110 | MP-3 | 300 | NP-58/U | 1100 | BNCP-58/U | 600 |
3D-2V | 110 | ↑ | ↑ | NP-3 | 1100 | BNCP-3 | 600 |
3.5DS | 110 | ↑ | ↑ | NP-3X | 900 | BNCP-3.5DFB | 600 |
5D-2V | 140 | MP-5 | 300 | NP-5 | 1200 | BNCP-5 | 900 |
5D-FB | 210 | ↑ | ↑ | NP-5DFB | 1200 | BNCP-5DFB | 900 |
5D-SFA | 250 | ↑ | ↑ | NP-5DSF | 1200 | - | - |
8D-2V | 300 | MP-8 | 450 | NP-8 | 1300 | - | - |
8D-FB | 410 | ↑ | ↑ | NP-8DFB | 1300 | - | - |
8D-SFA | 470 | MP-8DSF | 450 | NP-8DSF | 1300 | - | - |
10D-2V | 420 | MP-10 | 500 | NP-10 | 1500 | - | - |
10D-FB | 580 | MP-10DFB | 600 | NP-10DFB | 1500 | - | - |
10D-SFA | 620 | MP-10DSF | 1200 | NP-10DSF | 1500 | - | - |
12D-FB | 720 | MP-12DFB | 1800 | NP-12DFB | 1800 | - | - |
12D-SFA | 880 | MP-12DSF | 1800 | NP-12DSF | 1800 | - | - |
価格の単位は円。上記は数年前、秋葉原のハムショップで確認したもので、現在の正確な価格ではありませんので参考程度と思ってください。それぞれの店や地域によって価格は異なります。コネクタなら電子パーツショップ、ケーブルは電線専門店などがハムショップより安い傾向があります。 ケーブルの価格は1m当たりの切り売り単価です。10m単位の巻き売りや1ロール(100m)は単価が安くなります。 コネクタはケーブルに対応する一般的な型式を掲載しました。他にも対応するコネクタがあります。 |
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![]() アンテナ |
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![]() 電波伝搬 |
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