八丈岩山(岡山県)「展望台」付近から八丈岩山(左奥)と三頂山(右奥)を望む

岡山県南部に帰省した折りは天候さえよければ連れと歩きに行く。大晦日から元旦にかけて吹き荒れた冬の嵐も治まって穏やかな晴天となり、いくらか遠出をする気になった。でも考えるのは実家から近い児島半島の山々だ。そのなかでも先端部分にあってまだ登っていない八丈岩山はどうか。金甲山から車道沿いに歩いて山腹を歩いたことはあるが、頂を踏んだことはない。麓近くに建つ国民宿舎桃太郎荘近くの無料駐車場に車を停めれば周回登山もできる。縦横に整備されている散策路をつなげて短めのコース設定もできる。では行ってみようと児島湾を回り込むように車を走らせた。


国民宿舎桃太郎荘近くの無料駐車場に車を停め、飲料でも買おうかと宿に寄ってみると入り口が閉鎖されている。張り紙があり、岡山市役所観光課名で平成18年度に閉館としたと書かれていた。昨日、児島湾奥の締切堤防近くの怒塚山温泉楠石荘が閉館していることを知って、ではこのあたりで日帰り入浴できるのは桃太郎荘かと期待していたのだが、それも叶わなくなってしまった。連れ共々失望をかかえつつ歩き始める。
八丈岩山は桃太郎荘の裏手から直接山頂へのルートが延びているが、それは帰路に辿るとして、今回は市民憩いの森から三頂山を経て八丈岩山に登ることにする。八丈岩山を左手にして小名郷池へと続く車道を上がってすぐの新池峠から左手の散策路に入るのだが、その前に右手に高まるコブの「展望台」に立ち寄ってみる。山頂部は木々が成長してしまっていて、かつては児島湾が一望のもとだっただろうものが、夏ならばおそらく何も展望できないものになってしまっている。しかし足慣らしにはよいもので、再び車道に戻り、峠から散策路に入る。
いまや展望のよくない展望台
いまや展望のよくない展望台。しかし雰囲気はよい。
山腹を巻く平坦で幅広な道でじつに歩きやすい。15分もすると右下に市民憩いの森の施設が見えてくる。そちらには下らず、左手の斜面を上がっていく階段道に入るのが三頂山への近道だ。標識などなく、最初は地図を見誤って行き過ぎ車道に出た。左にしばらく行くうち誤りに気づき、階段道入り口まで引き返した。そのまま車道を行っていたら畑池まで出てしまい、三頂山や八丈岩山を目指すのであれば大回りになるところだ。


一度入りそびれた階段道だが、100mばかりのなかなかの急登で、段の間隔も大きなところが一箇所や二箇所ではなく、連れともども休憩かたがた上がっていく。振り返れば先ほど登った展望台を載せた尾根が木々のまばらな斜面を見せて明るい。ようやく斜度がゆるんで下り坂になり、オリエンテーリングのポストが目にはいると山道の突き当たりとなる。三頂山へは左だ。右手には児島半島稜線部が連なり、ゆるやかな山頂部を取り巻く遊歩道が目立つのは貝殻山だ。その左手奥に金甲山が徐々に顔を出してくる。
光南台スカイラインの車道を越え、再び階段道に入る。またかーと連れはうんざり顔だがここのはそれほどきつくない。大岩の間を縫うように上がっていくと程なく三頂山の頂に着く。大きな岩と松の木が庭園風に配され、そこここに眺めの良い岩のテラスがある明るい山頂で、装備さえあれば湯を沸かしてコーヒーを淹れ大休止したいところだ。貝殻山方面に目をやると、左手奥の金甲山に加え、右手奥には剣山も顔を出し、児島半島の主要山岳揃い踏みの図である。山頂部南端には南を向いて祠が建つ。冬らしく蜜柑が二つお供えされていたところをみると、麓の集落にとってみれば貝殻山や八丈岩山と同じかそれ以上に指呼されることの多い山なのかもしれない。
八丈岩山山頂手前から三頂山を振り返る
八丈岩山山頂手前から三頂山を振り返る
背後は児島湾と岡山市街
隣の八丈岩山へは登り返しになるが、立派な休憩舎を経て行く道のりはたいしたことが無く、10分ほどで木々に囲まれた山頂に着いた。ベンチが3基ほどある小広いものだが眺めはない。しかし眺望はすぐ近くに空間に張り出す二段になった平坦な岩の上で満喫できる。上に乗ると右手の瀬戸内から左手の児島湾口までぐるりと遮るものなく、しかも足下から頭上まで高度感十分に見渡せる。見晴らしの点では金甲山も剣山も貝殻山も、さきほど越えてきた三頂山も悪くないが、八丈岩山は児島半島で随一なのではと思える。人気スポットらしく、先客のご夫婦がいて食事休憩されていた。
八丈岩山から児島湾出口付近の瀬戸内海を見下ろす
八丈岩山から児島湾出口付近の瀬戸内海を見下ろす
山頂からは桃太郎荘にまっすぐ下った。三頂山への登り同様に階段道で急傾斜だが足下は安心だ。半時ほどで元国民宿舎の建物裏に出た。見上げると宿泊部屋の窓にはカーテンがかかり、蒲団部屋には寝具が積み上がっていた。建物はまだまだ使えるように見え、なんともったいないものだと連れと話し合ったが、だからといって何ができるわけでもなかった。

桃太郎荘に下る途中にて
2010/01/02

(2013/1/6追記)
旧桃太郎荘所在地に2012年の大晦日に寄ってみたら、更地になっており、建物は文字通り跡形もなくなっていた。
このときは上述同様に駐車場に車を置いて三頂山経由で八丈岩山山頂まで登った(所要一時間弱)。旧桃太郎荘跡には下らず、三頂山とのあいだの東屋まで戻り、そこから記念植樹の森に出て車道を駐車場まで下った。急傾斜を下らなくて済むので楽だった。日が日だからか訪れる人も少なく、静かな山だった。

回想の目次に戻る ホームページに戻る


Author:i.inoue
All Rights Reserved by i.inoue