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放送大学 教養学部
社会と産業コース

メッシュデータによる都市領域画定(mdbUA)の試み
都市の趨勢分析


人口の推移にもとづく分析


 「全国版mdbUA2010」の設定によって,日本全国で118の都市地域が区分できた.この都市地域区分にもとづいて,次に日本の都市が全体としてどのような状況にあるかを確認してみたい.
 都市の趨勢を確認する指標には,様々なものがありうるが,もっともシンプルなものが,人口量である.一般に人口が継続的に増加している都市は成長し,活力を維持しているのにたいして,人口が減少している都市は衰退傾向にあると判断される.必ずしもそうではないかもしれないが,とりあえずの状況を把握する上では,有効な方法であろう.
 そこで,ここでもまず人口の推移にもとづいて,日本全国の都市の趨勢について,分析してみたい.

人口推移の3つのパタン


 全国版mdbUA2010は,世界測地系によって設定しているため,人口の推移を確認するためには,同じ世界測地系のデータを使用する必要がある.現在,1990年以前のデータは日本測地系しか利用できないので,とりあえず世界測地系のデータで比較できる1995年,2000年,2005年,2010年の4時点でのデータを用いた.2010年段階で設定された都市地域メッシュにおける人口量を,それぞれの時点まで遡って集計した結果を比較した.その結果,それぞれの都市地域において,次のような推移のパタンが確認できた.
 言うまでもないことであるが,4時点での人口の推移は,以下の3つのパタンに分けることができる.
1.一貫増加型
2.一貫減少型
3.その他型
 一貫増加型は4時点において,一貫して人口が増加している都市地域である.一貫減少型は,これとは逆に一貫して人口が減少している都市である.その他型は4時点で人口が増加したり,減少したりする場合の含まれているものである.
 結果として,一貫増加型の都市は52,一貫減少型の都市は32,その他型は34という分布であった.全体としては,半数近くの都市は人口が一貫して増加しており,残りの半分は増減の見られる都市と一貫して減少の見られる都市に分けられるということである.半数以上の都市は一貫して減少はしていないので,全体として日本の都市は衰退傾向にあるとまでは言えないが,およそ3分の1の都市は一貫して人口が減少しているということになる.
 そうすると,問題はそれらの増減がどの程度のものであるかということと,それらの都市がどのように分布しているかということである.それらを分析するために,まず次のような手順と係数を用いて,それぞれの都市を特徴づけることにした.

分析の手順と係数の設定


 各都市の人口推移(1995~2010年までの4時点)に関して,2010年の数値を基準にして,次のような手順で分析を行った.
 最初に各年度の人口を2010年の人口で割り,結果を年代順に表記する.たとえば,函館の場合,人口推移は1995年から順に179,611,168,043,159,350,149,482となるので,比率は1.20,1.12,1.07,1.00となる.
 次に,4時点の比率が1995年<2000年<2005年<2010年であれば,「一貫増加型」とし,逆に1995年>2000年>2005年>2010年であれば,「一貫減少型」,そのどちらにもあてはまらないものを「その他型」とした.
 続いて,比率の散らばり具合の分布を確認すると,正規分布していると考えられたため,比率の最大値と最小値の差を各都市それぞれで求めて,全体の平均と標準偏差を計算し,各都市の4時点での比率の最大値と最小値の差の標準得点を算出した.これにより,標準得点が正の値であれば全国都市の中で比較的人口の増減が大きい部類に入り,負であれば小さい部類に入ると判断できることになった.
 このような手続きをへて,最終的に次のような区分を行った.(1)一貫増加型・変化大,(2)一貫増加型・変化小,(3)一貫減少型・変化大,(4)一貫減少型・変化小,(5)その他.
 この5つの区分ごとに色分けして,それを地図上に表示することで,全国の都市の状況をみていくことにした.

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