★メール紹介・Q&A 第8回(つづき)

●秋田大町 さん からのメール
 パクリって、どの程度まで許されるんですか?

○和田曜介のコメント
 許されません。当然です。
 新ブランドを創業しようという時に、既成ブランドのコピー商品を作って、どうしようというのですか。問題外です。
 一読して既成作家の名前や既成作品の名前が思い浮かぶような応募原稿は、たいてい下読みさんが捨てますし、たとえ残したとしても普通は編集部が捨ててくれます。
 どうしてもパクってしまったという時には、原稿の最後に「参考文献」としてパクった作品を書いておきましょう。そういう正直な応募原稿に対しては、私はとても心証を良くします。まあ、あくまでも私の場合ですが。
 ただ、どっちにしろパクリ作品なんかで入選しても、決して作家として幸せにはなれません。もしも習作のつもりで書いたパクリ作品が入選してしまったら、知らんぷりをしていても、見る人が見れば、すぐにパクリだとわかりますから、表立って非難されるようなことはなかったとしても、先輩作家や業界人の間では、裏では「恥知らずな奴」と軽蔑されることになります。
 万一、パクリ作品が本当に入選してしまった、というような時には、編集部に事情を説明して善処してもらう必要があります。
 パクった作品が国内の現役作家の作品であれば、発表前の段階でパクリ元の先輩作家に「あなたの作品に影響を受けて作家になりました」と報告し、事前に入選原稿を読んでいただき、できれば受賞パーティーにもお呼びして壇上でコメントをいただく、というように、きちんと礼儀を通してください。雑誌掲載の入選者のコメントにも、きちんと「○○先生の○○という作品から影響を受けました」と明記しましょう。本になる時にも、帯や解説に推薦文を書いていただけたらベストです。
 自分の作品が後輩にパクられるというのは、作家にとっては本当は名誉なことなので、パクらせていただいた先輩作家に「自分の作品を元ネタにして、ここまで面白い作品が書けるとは、大した奴だ」と思っていただけるように、最高の礼儀をつくさなければなりません。
 自分が大きな賞を取って相手が無名でも関係ありません。自分が年上で相手が年下でも関係ありません。相手は大先輩であり自分は新参者なのです。こういう人間関係がきちんとできないような新人は、やがて消えていくことになります。
 念のためお断りしておきますが、こういうふうにすればパクってもいいという話ではありません。あくまでも、デビュー作が他人のパクリというような本来ありえないはずの非常事態が起きてしまった場合の危機回避手段にすぎません。
 こんな話が現実にならないように、新人賞への応募は、堂々と自分自身のオリジナルで勝負してください。


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